企業・大学の多様性研修は敵意を増幅し、偏見を助長する-調査
By Valerie Richardson – The Washington Times – Friday, December 20, 2024
「多様性、平等、包括性(DEI)」研修を実施している企業や大学は、要注意だ。人々を人種差別主義者や抑圧者だと非難することが、対人関係の調和につながるとは限らないことが分かったからだ。
ソーシャルメディア上のイデオロギーに基づく発言を調査する非営利団体「ネットワーク拡散研究所(NCRI)」の調査から、企業や教育現場でのDEI研修の教材によく見られる表現方法や考え方は、敵意を減らすよりも、増大させることが判明した。
「すべてのグループで、(研修によって)偏見が減るどころか、敵対的な帰属バイアスを引き起こし、実際には存在しない偏見に満ちた敵意を増幅させ、この想像上の偏見に対してより厳しい反応が見られた」
「敵意を引き出す研修:DEI教育はどのように敵対的帰属バイアスを生み出すのか」と題されたこの調査報告は、「これまで考えられていたよりもはるかに広い範囲に害を及ぼしている可能性がある」とし、データに基づいたさらなる調査の必要性を訴えている。調査は、ラトガース大学社会認知研究所と共同で行われた。
調査では、人種、社会的階層、イスラム恐怖症の三つの多様性に関連した課題に関する実験が行われた。人種に関する調査は、ラトガース大学の学部生423人を二つのグループに分けて行われた。
一つのグループは、著名なDEI専門家で作家のイブラム・X・ケンディ、ロビン・ディアンジェロ両氏の著作から抜粋したエッセイを、もう一方のグループは米国のトウモロコシ生産に関するエッセイを読むよう求められた。
その後、人種的に中立なストーリーを示される。「2024年秋、ある学生が東海岸のエリート大学に出願した。その学生は入学審査官の面接を受けた。最終的に、その学生の出願は却下された」
DEIエッセイを読んだグループは、出願者は有色人種、不合格は人種に基づく、面接官は偏見を持ち、粗暴である、出願者が無自覚の差別を受けた、不合格は不当と結論づける傾向が強かった。
また、面接官が謝罪し、停職または解雇されるべきであり、大学はDEIに関して調査を行うべきであり、学生は面接官に抗議すべきであるという意見に同意する傾向が強かった。
報告は「重要なことは、介入によって有色人種に対する温かい感情や冷たい感情に測定可能な変化は見られなかったことである。この著名なDEI学者による教材は、異人種間の態度を積極的に向上させることができなかったばかりか、根拠のない疑いを引き起こし、厳しい態度を助長した」と指摘している。
米国の80億ドル規模の多様性産業に対する反発は既に表れており、それは、人種理解を促進するという名目で、あらゆるところで実施されているプログラムがさらに分裂を激化させているという懸念が一因となっている。
イスラエル人、ユダヤ系米国人をイスラエル・パレスチナ紛争の悪役と決めつけ、「抑圧者と被抑圧者」というストーリーがキャンパス内の反ユダヤ主義に拍車をかけているという懸念から、複数の大学が採用時の多様性に関する宣言文の提出などの取り組みを後退させている。
さらに、ウォルマート、ロウズ、ジョン・ディア、フォードなどの有名企業が昨年、DEIイニシアチブを縮小した。
皮肉なことに、この調査はラトガース大学と共同で実施された。ラトガース大学は、大学の「公平性・包括性オフィス」を通じてDEIを積極的に推進している。
NCRIの共同研究者であり、ラトガース大学の心理学教授であるリー・ジュシム氏は、彼が知る限り、この研究は「DEIのレトリック、アイデア、教育法がもたらす可能性のあるマイナス面」を検証した初めてのものだと述べた。
ジュシム氏はワシントン・タイムズ紙に「DEIの導入は効果的かが試された。言い換えれば、DEIは組織の多様性を高めるのかということだ。効果的な場合もあれば、そうでない場合もある。逆効果になることもある。その証拠はまちまちだ。しかし、効果的かどうかは、事前に告知されていないネガティブな副作用があるかどうかとは別の問題だ」と述べた。
彼は、「意図していない」ではなく「告知されていない」副作用という文言を特に使用したのは、「人々の意図は分からない」からだが、その表現方法は、非常にネガティブな影響を及ぼしていると主張した。
それを 「意図していない」と呼ぶことには違和感がある。確かにDEIの擁護者の多くは意図的に人々に悪影響を及ぼしているわけではないが、われわれが研究した表現方法はそうなっている。
2019年のベストセラー「How to Be an Anti-Racist(いかに反差別主義者になるか)」の著者であるケンディ氏は、この調査結果に否定的な反応を示し、いい加減な調査だと非難した。
ボストン大学教授であり、ボストン大学「反差別主義者研究センター」の創設ディレクターであるケンディ氏は、「ワシントン・タイムズが、検証を受けていない、私の研究を誤って伝える、(最初に提示された情報に影響を受け、判断が歪む)アンカリング・バイアスに基づいたこの疑似科学を報じたとしても、驚きはしない」と語った。
ケンディ氏は電子メールで「このいわゆる研究は、当時も現在も、反奴隷制や公民権、そして多様性、公平性、包括性、さらには反人種差別が有害であったという人種差別的プロパガンダに科学的正当性をもたらそうとする他の試みとともに、疑似科学の歴史的埋立地に埋められることになるだろう」と主張した。
2023年のピュー・リサーチの調査によると、従業員の約52%が「職場でDEIに関する研修や会議がある」と答え、56%がそのようなプログラムは「良いことだ」と考えている。
NCRIの衝撃的な調査結果にもかかわらず、この内容は発表から1カ月間、保守系メディア以外ではほとんど注目されなかった。ニューヨーク・タイムズ紙とブルームバーグ紙は当初、この調査結果を記事にすることに興味を示していたが、最終的には見送った。
ニューヨーク・タイムズの広報担当者は、同紙の記者が「さまざまな理由でそれ以上の報道をしないことを選択することは多い」と述べ、「掲載する準備」はできていないことを認めた。
ジュシム氏は失望しているとしながらも、左傾化した報道機関がこの記事を掲載しないという決定に親DEI感情が影響したという「証拠はない」と付け加えた。
「新聞はありとあらゆる記事を掲載することはできない。新聞は考えられるすべての記事を掲載することはできない。それは偏向報道なのか。そうかもしれないが、私にはわからない」