トランプ氏勝利がスポーツ界にも波紋 保守系メディア「アウトキック」
By Valerie Richardson – The Washington Times – Tuesday, January 28, 2025
大統領選の結果を受けてアスリートたちが勢いづき、トランプ大統領への支持を表明したことで、ウォーク(リベラルな価値観を持つこと)なスポーツ業界が中道へと軸足を移しているようだ。それを最もよく分かっているのは、保守系ニュースサイト「アウトキック」だ。
アウトキックは、クレイ・トラビス氏が設立し、スポーツ、政治、カルチャーを扱う保守系メディアだ。国歌斉唱時に膝をつくことから、LGBTの権利を啓発する「プライド月間」、女性スポーツへの男性アスリートの進出まで、フィールド内外での左翼的な表現を非難することで、長年スポーツメディアの潮流に逆らってきた。
しかし、ポッドキャスト「アウトキック」の司会者トミ・ラーレン氏によると、トランプ氏が選挙で決定的な勝利を収めたことで、500億ドル規模の米国スポーツビジネスが政治的再編の最中にあり、それは選手たちによって主導されている。
「『アウトキック』は、膝をついたりする、主張の強い左派の人々をよくカバーしてきた。しかし、今回の選挙を受けて、トランプ支持を公にするアスリートをカバーすることが増えている。トランプを支持するような行動を取ったり、試合中のインタビューでMAGA(「米国を再び偉大に」)帽子をかぶったりしている」
その中には、MAGAの野球帽をかぶって試合中のインタビューに臨んだサンフランシスコ49ersのディフェンシブエンド、ニック・ボサ氏や、トランプ氏を支持し、バチカン駐日米国大使に選ばれた保守的なカトリック活動家ブライアン・バーチ氏を称賛したカンザスシティ・チーフスのキッカー、ハリソン・バッカー氏といったナショナル・フットボールリーグ(NFL)のスター選手も含まれている。
選挙後、複数のNFL選手がエンドゾーンで、トランプ氏のぎくしゃくしたダンスをまねて、1978年にヒットした「Y.M.C.A.」に合わせて踊った。
ラーレン氏はワシントン・タイムズとのインタビューで「私たちはスポーツ界に変化が訪れているのを目の当たりにしている。これまで、リベラルな視点、ウォークな視点について伝えてきたが、今は、別の側面からの報道に興奮している」と語った。
同氏は2つの画期的な出来事があったと指摘した。昨年7月13日のトランプ氏暗殺未遂事件と、11月の選挙でトランプ氏が選挙人団と一般投票を制し、米国史上最も記憶に残る政治的逆転劇を演じたことだ。
ラーレン氏は「スポーツやエンターテインメントで人前に出る人たちは、国民の大多数が自分たちと一緒にいることに気づき、ほっとしていると思う。もはや、クローゼットの中に閉じこもっていなければならないマイノリティーではなくなった。つまり、私たちの後ろには強い味方がいるということだ」と主張。
その結果、「世間のスポットライトを浴びることで、人々はより親トランプ派になる勇気を得たのだと思う」と語った。
32歳のラーレン氏は、10年間、保守派のテレビパーソナリティーを務め、過去8年間はFOXニュース・チャネルにも出演してきた。アウトキックは2021年にFOXに買収され、トラビス氏はその後も、社長兼ポッドキャストホストを続け、FOXにも出演している。
この買収はFOXに利益をもたらした。デジタル市場調査・分析会社「コムスコア」によると、2024年第4四半期のデスクトップとモバイルの1日平均ユニークビジター数は780万人で、2023年同期比28%増、総視聴回数は9700万回で、前年比33%増だった。
アウトキックの上級副社長ゲイリー・シュライアー氏は「アウトキックの成長は、私たちのプラットフォーム全体に常識と信頼性を持たせたことに起因している。これはアウトキックの基盤であり、私たちのコンテンツに対する需要は増加する一方で、他のスポーツサイトは自社の意見を表明することを恐れている」
2023年の女性史月間にトランスジェンダーの水泳選手リア・トーマス氏を表彰したESPNとアウトキックを混同する人はいないだろう。また、スポーツ・イラストレイテッド誌は最近、毎年恒例の水着特集でトランスジェンダーのアスリートを取り上げた。
アルジェリア人ボクサーのイマネ・ヘリフ選手は先月、AP通信社のスポーツライターによる「今年の女性アスリート」投票で3位に入った。
ラーレン氏は「アウトキックは反ウォークの情報を提供している。文化やスポーツ、エンターテインメントなど、保守的な観点からあらゆるものを提供している」と話した。
ラーレン氏は2年前、自身のアウトキック・ポッドキャスト「トミ・ラーレンは恐れない」を立ち上げ、昨年は週3日から5日に拡大した。
同氏はもともとスポーツではなく、政治畑出身だが、ほとんどのスポーツポッドキャスト司会者が持っていない有利な点がある。夫は元メジャーリーガー、J.P.アレンシビアであり、現在はニューヨーク・メッツのトリプルAでベンチコーチをしている。
ラーレン氏は、現役選手や元選手と過ごすうちに、彼らは大リーグ機構(MLB)の経営陣が思っているほどウォークではないことに気付いたという。
「野球についてしか言えないが、野球がいかに保守的であるかということに衝撃を受けるはずだ。野球を運営している人たちは、あのクラブハウスがどれほど保守的なのかを知れば、驚くはずだ」
彼女は今後も、アスリートたちがウォークな考え方から脱却し続けることを期待していると語った。
「MAGA帽子をかぶってあからさまに主張するようなことはないと思う。でも、毎年夏になるとプライド月間が来て、社会が『ウォーク化』していくのを目にするようになる。そして、あちこちで特別イベント『プライドナイト』が開かれ、みんなが虹色を身につけなければならないような雰囲気になる。『あれ、何だか分かる?
自分はあんなことはしない』という人が出てくると思う」
その傾向はすでに始まっている。昨年、MLBでプライドナイトの開催を辞退したのはテキサス・レンジャーズだけだった。その前年、MLBのコミッショナー、ロブ・マンフレッド氏は、各球団はプライドナイトを開催してもよいが、選手にプライドのロゴやジャージの着用を義務付けるべきではないと述べた。
2023年、北米アイスホッケーリーグ(NHL)は複数の選手の反対を受け、選手にプライドジャージの着用を義務付けないと発表した。
「彼ら(選手たち)は、自分らしくあることをより心地よく感じるようになると思う。それは素晴らしいことだと思う」