米海軍を悩ます造船産業の衰退、中国との競争の足枷に
By Joseph Clark – The Washington Times – Monday, July 12, 2021
米国の国内造船産業の衰退により、中国、ロシアに対抗できる海軍力を維持できるか、議員から懸念が上がっている。
中国は今や米国を抜き世界最大の海軍を有する。
米海軍はより大きな艦隊の建造を推し進めなければならないと、議員たちは党派を超えて一致している。だが、その目標達成の足枷(あしかせ)になっているのが、1990年代中頃から進む国内造船産業の縮小だ。
海軍は現在、原子力型の艦船をメンテナンスする公営造船所を4カ所しか運営していない。通常動力型の艦船の建造とメンテナンスを行うことが認められた民間造船所は約20カ所だ。
これに対し、中国はランド研究所の推計で、海軍や民間の船舶を支援する造船所を1200以上運営している。
「過去25年間で、海軍に原子力潜水艦や空母を供給する造船所の数が3分の2以上も減少した。残る造船所も65%以上がそこで製造される艦船の唯一の供給源になっている」。上院軍事委員会のジャック・リード委員長(ロードアイランド州選出、民主党)とジェームズ・インホフ共和党筆頭理事(オクラホマ州選出)は、米海軍協会の機関誌「プロシーディングス」でこう主張した。
造船産業の衰退は冷戦終結から始まり、米軍とそれを支える産業基盤の縮小をもたらした。
「新たな大国間競争の時代に入り、中国や程度は低いがロシアからの脅威が増大していることを認識している今、産業基盤の統合により、艦船建造を劇的に増加させたり、それどころか船の修理を劇的に増加させるための範囲や規模が不足している」。元海軍大佐で安全保障コンサルタント会社テレマス・グループのジェリー・ヘンドリックス副社長は、こう語った。
海軍は2018年国防権限法に基づき、艦隊を現在の297隻から355隻に増やす目標に向かって少しずつ進んできた。同法は拡大する中国海軍に対抗する意味合いもあった。マイケル・ギルデー海軍作戦部長は最近の下院軍事委員会公聴会で、355隻の目標は海軍予算を10年以上、4.1%ずつ増やすという想定に基づいていると指摘した。
伸び幅がインフレ率に満たない今年の予算案は、15隻を退役させ、調達予算を9%近く減らすことを要求しており、結果的に艦船数は差し引きマイナスになる。海軍は長期的投資にコミットしていないというシグナルを産業界に送る結果になったと、ヘンドリックス氏は述べた。
ヘンドリックス氏によると、ハンティントン・インガルス・インダストリーズやバス鉄工所などの造船企業には現在、1年間に約1隻を建造する能力があるが、1980年、90年代はその3倍を建造することができた。海軍が投資を続けるという強いシグナルがなければ、これらの企業には生産拡大のインセンティブが働かないという。
「どの企業も海軍予算を見て、熟練労働者の雇用を増やし、生産能力を最大化させる投資はしないだろう」とヘンドリックス氏。「とにかく政府が拡大に真剣だという強力なシグナルがない」
リード、インホフ両氏は、予測可能性が造船産業を拡大、安定させるカギだと指摘した。
両氏は「海軍の指示がなければ、生産ラインは中断され、労働者はレイオフされ、業者は受注がなくなり、造船所は縮小・閉鎖される。これは驚くべきことではない」と主張。「これは海軍が必要な時に生産ラインを復旧させたり、造船所を再開させることができないことを意味し、将来の国防総省と海軍の指導者が敵を抑止し、打ち負かすことができる艦隊を建造する能力が制限されるということだ」