アフガニスタンで戦略的勝利を手に入れた中国
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, August 17, 2021
ANALYSIS/OPINION:アフガニスタンからの米軍の撤退と米国が支援したアフガン政府・軍の驚くべき崩壊から、中国は戦略的利益を得るだろう。だが、その成功を相殺する要素もある。中央アジア国境で過激なイスラム国家と向き合うことへの中国共産党の懸念と、新疆ウイグル自治区にテロリストが流入する可能性だ。
軍事的には、タリバンが南西アジア国家を支配したことは、西部国境から米軍と偵察基地がなくなることを意味し、中国にとって祝うべき事態だ。中国共産党指導部は長らく、アフガンにおける米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍のプレゼンスを大きな脅威と捉えていた。
アフガンと中国の国境は、アフガンと新疆を結ぶワハーン回廊と呼ばれる細長い地域に限られる。新疆では、中国がウイグル族のイスラム教徒に対し、米国務省がジェノサイドと呼ぶ行為を反テロ政策と称して実行している。
ただ、米軍の撤退により、中国は新疆やその他の西部省の国境で、敵対的なタリバン主導のイスラム国家の脅威に直面することになる。
中国はアフガンの新体制と協力していく意向を示している。王毅外相は先月、上海でタリバン幹部と会談した。これは中国がいち早くタリバン政権を承認するとの臆測を呼んだ。
中国は習近平国家主席が最重要視する世界的インフラ開発プロジェクト「一帯一路」をタリバン政権に影響を与える手段として利用すると予想されている。これは中国の貿易・投資網の中で巨大な経済的利益をもたらす。
中国指導部は、台湾有事が起きれば、インドやモンゴル、中央アジア諸国など近隣諸国からの攻撃を招くことになるとずっと恐れていた。米軍のアフガン撤退により、中国共産党と軍指導部は台湾問題に集中していても、紛争の拡大を抑えられるようになった。
中国国営メディアもすぐさま、タリバンの速やかな勝利に付け込んで、米国は信頼できない安全保障上のパートナーであるという主張を広めている。中国は16日、台湾は大陸による軍事的侵攻の抑止・防止で米国の軍事力にはもはや頼れないと、台湾政府に通告した。
共産党機関紙・環球時報は16日にツイッターでこう主張した。「アフガンで起きたことを踏まえ、台湾の人々は(台湾)海峡で戦争が起きたら、台湾の防衛は数時間で崩壊し、米軍は助けに来ないと認識すべきだ。結果として、DPPはすぐに降伏するだろう」。DPPは独立派の民進党の頭文字だ。
テロリズムの分野では、米議会調査局の報告書によると、アフガンは依然、アルカイダ、インド亜大陸のアルカイダ、ハッカニ・ネットワーク、「イスラム国」(IS)地域支部「ホラサン州」など四つ以上のイスラム過激派組織の拠点になっている。
中国は積極的なプロパガンダ工作を通じ、米国が支援するアフガン政府の敗北を超大国・米国の衰退の証拠だと吹聴している。
台湾と東南アジアの客員研究員であるケリー・ガーシャネック氏は、中国は米国とNATOのアフガンからの敗走から政治的利益を手にしたのは明らかだと指摘する。
「台湾は習近平氏が台湾侵攻の脅しを続けても、米国が防衛する能力を信じているが、中国は台湾に対する心理戦、メディア戦の一環で、中国が取り込んだ台湾メディアや親中派の政治家・学者らと協力し、その信頼をむしばもうとするだろう」。ガーシャネック氏はこう語った。