本紙独占:宇宙で高まる中国の脅威、宇宙軍の幹部が警告

(2021年10月26日)

2021年10月15日、中国北西部のJiuquan Satellite Launch Centerで、「神舟13号」による有人宇宙飛行に向けて出発する前に手を振る中国の宇宙飛行士。(Li Gang/Xinhua via AP)

ニュースメーカーと語る:

 中国は宇宙空間での最強の軍隊として米軍を出し抜く危険性がある - 設立して二年目の米国宇宙軍の副司令官は警告した。そして米国が未来戦の領域でも優位を保ちたいなら、米政府はカギとなる新鋭技術を大胆に展開するべきだ、と主張した。

 宇宙作戦本部副指令のデビッド・トンプソン将軍は朗報として、国防総省の傘下に近年設立された同軍が、米国の衛星を攻撃する中国の急速な能力向上に対抗するために、そのカギの能力を早く展開する構えを明示している、と明かした。

 トンプソン将軍は今週、ワシントンタイムズとの独占会見に応じ、広範な話題についての見解を提供した。同将軍は、2019年にトランプ前大統領が創設した宇宙軍について、合衆国議会内に異論があることを重視しなかった。

 新設の政府機関は総じて共和党に支持され、民主党からは鋭い批判を浴びてきた。左派の一部には、前政権が宇宙空間の「軍事化」を推進するのに軍を利用していると非難がある。トンプソン将軍は70年も前に米国空軍が創設されて以来、初めて米軍に追加された宇宙軍を取り巻く厳しい政局を一蹴した。

  「我々を取り巻いている現在の難しい政局では」、同将軍は言う、「どんな話題でも異論や、強い信念に基づく分極化が避けられないだろう」。民主党には宇宙軍廃止を求める人々もいる。

  トンプソン将軍は本人をふくめ同軍を指揮する者は、政局でなく、眼前の使命にしっかり焦点を当てて仕事をしている、と語った。そして中国その他の敵性勢力が一層精度の高い宇宙での軍事能力を発揮していく、向こう10年間が決定的な分かれ目になろう、と語気を強めた。

  「2007年頃から潜在的な敵性国家、つまり中国とロシアは米国が軍事作戦に宇宙空間を有効利用していたことに着目し、そうした能力の優位性を米国から奪える兵器システムの開発と構築に着手したのだ」、トンプソン将軍は説明した。

 そして今後の数年間で、中国の能力が急成長する前に、米国が築いてきた支配的な立場を維持できるか否かが決まるだろう、同将軍は注意を喚起した。

 「歴史は我々が今やっていることを裁くことになろう」、トンプソン将軍は語る、 「それは常に真実だが」、「我が国とリーダーから託された事態の重大さを思うと、正に今の瞬間」はそのようなものだ、と表現した。

 「我々が議論しているのは2020年代の10年間のことだ。それは宇宙空間で大きな前進を遂げられるか否か、深刻な期間だ」、将軍は語った。

「彼らは我々の行動を注視している」

 米空軍の最新報告によれば、中国人民解放軍は、宇宙空間をコントロールして地球を支配できる衛星攻撃ミサイルやサイバー兵器など、宇宙戦争のため一連の装置を造り配備している。

 米空軍が専門的軍事教育を施す大学機関の空軍大学に属する中国航空宇宙研究所の報告でも、主に2007年の対衛星ミサイル実験で大量の宇宙浮遊物を拡散させた、と中国を非難した。この実験では一基の気象衛星が破壊され、それから3,400個以上の宇宙浮遊物が発生したが、これは人工衛星と有人宇宙船を長年にわたって脅かす、と同報告は指摘した。

 「中国軍部は宇宙空間を、新たな指揮圏高度、と呼ぶ戦闘領域に指定し、未来戦争に勝つために中国が支配するべきだと考えている」と指摘した。 「人民解放軍(PLA)の士官と分析官は、宇宙が究極の戦略的高地であり、宇宙を支配する者は地球を支配する、と主張している。」

 国家安全保障に携わる他の関係者も同様の警告を出し、中国は宇宙能力を急速に進歩させ、ほどなく米国の能力に匹敵するだろう、と主張している。そうした分野の中国のプログラムは近年、その範囲を広げ洗練度を高めてきた。

 中国の軍事能力に関する国防情報局の最新報告書は、「人民解放軍が2015年12月に設立した戦略的支援部隊(SSF)は、中国の航空宇宙戦争の能力管理に重要な役割を果たしている」と警告した。

 「人民解放軍の宇宙・サイバー・電子戦争の機能を、SSFに統合して、「戦略的な最前線」で分野横断の相乗効果を期待されている」、2019年の同報告書は指摘している。 「SSFは指向性エネルギー兵器や運動エネルギー兵器など、新機軸の兵器の研究・開発・テスト・実戦化も担当可能だ。」

 トンプソン将軍はタイムズ紙に、中国の宇宙作戦がますます米国を模倣したものになっている、と語った。「中国は我々が宇宙でしてきたことを見てコピーしている」。

 PLAに制御された人工衛星の数は、総じて西太平洋上を飛翔している密集グループから増えている。

 「西太平洋上で起きたように、衛星群は拡大しており、最終的に地球全域を標的にした作戦を実行できるだろう」、トンプソン将軍は予測した。

 そして中国は「宇宙から地上の出来事を見る、聞く、追跡する、そして防御するという、途方もなく絶妙な能力」をすでに開発した、と指摘した。

 同将軍は最も重大なこととして、中国が新規の宇宙能力を開発・実戦化するタイムラインが短縮されていることだと指摘した。実態は北京が新規の宇宙システムを編成する能力は、米国が取得・配備するのに要する時間の約半分に近づいているという。

 「中国側は新規テクノロジーや更新機能をはるかに迅速に適用できるばかりか、これらを迅速に使いまわすことにおいて、我々とほぼ同程度に長けてきたし、やがて我々を超えるだろう」、同将軍は語った。

技術の進歩

 トンプソン将軍に言わせれば、宇宙軍が直面している決定的な課題は、米国が新しい軍事能力を運用するのに要する時間を大幅に短縮すべきことだ。

 宇宙軍は当初から、新技術の迅速な実戦配備を強調してきた。2019年に国防総省は、「宇宙空間即応能力事務所」を設け、新しい技術の実戦配備を極めて凝縮された時間内で実現することにしてきた。

 トンプソン将軍によると、その目標は通常標準の6-7年ではなく、高度な宇宙技術を2-3年の間に転換する、というものだ。

 今年2月に宇宙軍は宇宙開発庁に対し、より迅速な実戦転換に重点を置いた、宇宙空間での軍事システムの改善策を委託した。

 「実戦化のペースを維持する以上に、中国側の実戦展開能力から派生する脅威に先んじて、加速化することが極めて重要だ」、トンプソン将軍は指摘する。「我々はその実現のために、いくつかの経路と組織化を導入したが、それらの成果が早い段階で示されている。」

 同将軍によると、宇宙軍は「ガーディアン」と称される制服メンバー約6,400人と、約6,000人の民間人から構成された少数部隊だが、成果を収めてきた。これまで最小部隊だった海兵隊が185,000人近い制服メンバーを擁しているが、それよりさらに少ないのが宇宙軍の現状だ。

 初期の成果にもかかわらず、トンプソン将軍は宇宙軍がさらに仕事ができることを示さなければならない、という。

 宇宙軍の業務について、ヘリテージ財団が「2022年米軍事能力指数」を発表したのを受けて、今週、合衆国議会で改めて審査の対象になっている。この「指数」文書によると、宇宙軍は現在および将来の「状況に対応し、運用可能で、戦術上妥当で、実際の戦闘に対応できる要件を満たしていない」 という。その要件とは、他の軍組織から指摘されている内容だ。

 このヘリテージレポートは宇宙軍について、軍の規模、軍の能力、戦闘対応能力などで、指数の下から2番目の「弱い」という評価を与えた。

 こうした中、民主党は理念的な理由から宇宙軍について批判をし続けている。

 先月、ジャレッド・ハフマン議員(カリフォルニア州)ほか3人の民主党議員が、年次防衛政策法案に対する下院案への修正として、宇宙軍の完全廃止を目指す「宇宙軍事化禁止法」を提案した。

 「長年にわたる宇宙での中立性が、宇宙旅行の初期から全ての国や世代が評価してきたように、競争しつつも軍事化されない探検の時代を育んできた」、ハフマン議員は同修正案を配布した際にそう語った。

 「前トランプ政権が創設して以来、宇宙軍はそうした宇宙での長年の平和を脅かし、数十億ドルもの税金を無駄遣いしてきた」、同議員は主張した。

 この提議は不調に終わったが、議員たちの間にある宇宙軍への懐疑論を示したものだ。

 タイムズ紙にトンプソン将軍が示唆したことは、中国との競争激化に伴い、米国の宇宙における展開能力を強化することがますます緊急になっていることだ。

 同将軍の発言と時を合わせるように、中国が今月、台湾領空に記録的な回数の航空機出撃を実施したことから、ワシントンと北京の間に緊張が走った。中国との直接の対決が想像していたよりも近いのでは、という懸念を引き起こしている。

 トンプソン将軍は、米国の衛星を攻撃する能力を含め、宇宙能力の独自で急テンポな発展を考えると、中国は通常戦争の領域よりも、宇宙での戦争に備えているのかもしれない、と述べた。

 「危機や紛争が発生した場合、中国は、その紛争を宇宙で開戦するだろう、我々はそう信じている」、同将軍は締めくくった。

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