中国、2030年までに1000発の核弾頭を保有か-国防総省報告

(2021年11月13日)

2021年9月29日(水)、ワシントンのキャピトル・ヒルで下院軍事委員会で証言するマーク・ミリー統合参謀本部議長(Rod Lamkey/Pool via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, November 3, 2021

 米国防総省は3日、中国の軍事力に関する年次報告書の中で、中国軍が戦略ミサイル部隊を急速に増強しており、2030年までに最大1000発の核弾頭を配備するとの予測を明らかにした。これは従来の予測の約4倍にあたる。

 マーク・ミリー統合参謀本部議長は、中国の軍事力が急速に拡大していることを示す別の兆候として、中国が最近行った極超音速ミサイルの実験を挙げた。このミサイルは、核を搭載し、地球の極軌道を周回できる。

 ミリー氏は、中国の人民解放軍(PLA)が10年以内に1000個の核弾頭を搭載したミサイル部隊を配備する見込みであることを明らかにしたが、これは、約250個の核弾頭を搭載した中国のミサイル部隊が10年後には倍増すると警告した2020年の情報を大幅に拡大するものだ。中国は昨年、米露との核軍備管理協議への参加を求めるトランプ政権の圧力に強く抵抗した。中国は、自国の核兵器ははるかに少なく、防衛目的だとしている。

 これらの核弾頭は、中国西部で発見された三つの大陸間弾道ミサイル(ICBM)基地に配備される予定の少なくとも350発の新型多弾頭ミサイル「東風41」に搭載される。

 報告書では、「中国の核開発が加速すれば、2027年までに最大700個の運搬可能な核弾頭を保有することが可能になるかもしれない。中国は、2030年までに少なくとも1000個の核弾頭を保有する意向のようで、2020年に(国防総省が)予測したペースと規模を超えている」と述べている。

 国防総省は、中国が核を搭載した空中発射弾道ミサイルを開発し、地上および海上の戦略兵器を向上させることで、新たな核のトライアド(3本柱)を打ち立てた可能性が高いとみている。

 数年前、中国の核戦力は、米国に到達可能な長距離ミサイルと数百個の核弾頭を持つ程度にとどまっていた。これは、攻撃を受けた場合にのみ核戦力を行使するという「先制不使用」の方針に基づくものだ。

 米国の軍事アナリストによると、中国は米国やロシアが核武装した敵を抑止するために採用しているのと同様の「警報即発射(LOW)」の核体制に移行しつつあり、核兵器の数も増え、いつ、どこで発射するかの選択肢も増えているという。

 「2020年の新たな動きは、中国がサイロベースの戦力を拡大してLOW態勢に移行することで、核戦力の平時の即応性を高めようとしていることを示唆している」と報告書は指摘している。

 中国の数百個の核弾頭の有効性、信頼性、生存性は、米国とロシアが開発している一部の核弾頭や攻撃プラットフォームに匹敵するようになると報告書は指摘している。

 国防総省は昨年の報告書で、中国の弾頭保有数は「200発台前半」で、10年後には2倍になるだろうと推定していた。今年の報告書によれば、そのペースは激変しているという。「このところ、中国は核開発を加速させており、2027年には最大700個の運搬可能な核弾頭を保有できる可能性があり、2030年には少なくとも1000個の核弾頭を保有する計画のようだ」と報告書は指摘している。

 高速増殖炉や再処理施設の建設によるプルトニウムの生産と分離の強化のためインフラが整えられている。中国西部の核実験場における中国の活動は、「一年中」休みなく続いている。その中には、小規模な爆発室や試験トンネルの使用、国際的な監視施設で地震データを検知されないようにする施設もある。

 核兵器の増強は、今世紀半ばまでに「世界一流」の軍隊を構築するという習近平国家主席の方針の一環だ。中国の国営メディアや退役軍人のコメンテーターは、この増強加速を支持している。彼らは、中国の抑止力を強化するためには、1000個の核弾頭と、先制不使用から相互確証破壊への切り替えが必要だとしている。

 米国防総省の報告書は、今後数年間の増強のスピードと規模は、先制攻撃への対応に必要なものを超えていると結論づけている。

 また、米国の分析では、中国は限定的な核戦力の継続的な導入を主張することで、核増強のペースを隠そうとするだろうと予測されている。中国はICBMサイロを「数百基」建設しており、「他の大国が行っているものに匹敵する大規模なサイロに格納したICBM戦力の拡大を目前にしている」という。

 このサイロはICBM、東風41または東風31に使用される可能性があり、大規模な建設作業の準備が進められている。

 空軍参謀本部のクリントン・ヒノテ戦略・統合・調達部長(中将)は、3日にワシントン・タイムズ紙のインタビューに応じ、米軍上層部の多くは、中国の核戦力や軍事力の急激な増加に驚いていないと語った。

 「この10年、15年の間に中国を観察してきて最も興味深いことの一つは、私の記憶では、中国のような例は他になく、情報機関も、これほど予測よりも常に加速している国は見たことがないと言われたことだ」

 「ソ連はそうではなかったし、北朝鮮やイランなどもだ。しかし、中国は経済力をうまく利用して、…軍事力強化を加速させている」

 「私は常に、中国はその範囲をさらに拡大していくだろうと考えている」とヒノテ氏は付け加えた。

極超音速の躍進

 中国は、まだ解明されていない兵器実験で世界中の軍事計画立案者の注目を集めたが、ミリー氏は3日、中国がハイテク部隊を大幅に増強している状況の中で「非常に、非常に重要」だと述べた。

 ミリー氏は「私の考えでは、われわれは世界が目撃した地政学的パワーの最大の変化の一つを目撃している」とワシントンでの会議で述べた。

 中国が実験した極超音速ミサイルは、開発中の部分軌道爆撃システム(FOBS)の一部と考えられている。これによって、長距離核攻撃兵器であり、早期警戒レーダーやミサイル防衛網を回避して極軌道から標的を攻撃することが可能になる。実験の報告によると、ミサイルは地球を周回した後、陸地の目標を攻撃しようとしていたという。

 極超音速兵器は、非常に速い速度で飛行し、機動性に優れているため、ミサイル迎撃装置による追跡や捕捉が困難とされている。

 国防総省の報告書「中国の軍事・安全保障分野の動向」によると、中国の陸上核戦力には、サイロや道路・鉄道用の移動式発射台に配備されたICBMが含まれている。一部のICBM部隊は発射台の数を2倍に増やしている。

 中国の094型(晋級)ミサイル潜水艦は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射することができるが、米東海岸に到達するためにはハワイの北方か東部まで行かなければならない。

 報告書は、「中国が巨浪3のような、より高性能で射程の長い新型SLBMを配備すれば、中国(海軍)は沿海域から米大陸を標的にする能力を得ることになる。そのため、海上配備の抑止力の生存率を高めるために防衛力強化を検討することになるだろう」と指摘している。潜水艦の発射エリアは、ミサイル潜水艦が配備されている南シナ海や渤海湾になる可能性が高いという。

 中国軍は核搭載爆撃機H6Nを保有しており、空中給油や核搭載空中発射弾道ミサイル搭載ができるよう改良されている。

 ミリー氏は、中国は米国に代わって超大国になることを望んでおり、その目標を達成するために軍事的な手段を講じていると、アスペン安全保障フォーラムで述べた。

 ミリー氏は、極超音速兵器は新しいものではなく、今回の中国の実験は、宇宙開発競争のきっかけとなったソ連の人工衛星打ち上げによる「スプートニク・ショック」のような、状況を一変させるものではないと述べた。しかし、今回の実験は、比較的最近になって獲得した高度な宇宙開発能力、大陸間弾道ミサイル、核兵器、ジェット戦闘機、軍艦、潜水艦など、中国の軍事力が大きく進歩したことを示しているという。

 「全体的に見れば、2週間前に行われたこの実験は、中国の軍事能力の全体像の中の一つであり、非常に重要だ」とミリー氏は述べている。

 中国が独自の武器を増強したことで、現代の戦争のあり方が変わってきた。ミリー氏は、この変化を第2次世界大戦で軍用機の導入がもたらした変化と比較している。

 ロボット兵器、人工知能(AI)の応用、精密誘導弾の使用などが相まって、「戦争の性格が根本的に変化している」とミリー氏は指摘。「米軍は、今後10年、15年、20年の間に根本的に変わらなければ、紛争で不利な側にいることになる」と述べた。

 極軌道上の極超音速攻撃飛翔体はパワーバランスを崩す可能性があるかという質問にミリー氏は「その可能性はあると思う。戦略的に不安定になる可能性がある」と述べた。

 中国からの戦略的脅威は、冷戦時代の米ソの戦略的対立を拡大する「三極世界」を生み出しているとミリー氏は指摘した。

 「私の考えでは、過去40年、50年、60年に比べて、より戦略的に不安定な可能性を秘めた世界に突入している。それは、大国間の平和を維持することに重きを置かなければならないことを意味している」

 中国は最近、台湾に対して軍事的な動きを見せており、中国軍の戦闘機が台湾の防衛識別圏(ADIZ)に侵入するケースが増えていることについてミリー氏は、中国共産党指導部が今後2年以内に台湾を攻撃したり、その他の方法で奪還するとは考えていないと述べた。

 しかし、中国は将来の攻撃の可能性に備えて「明らかに、明確に」戦力を増強していると付け加えた。

 「近い将来には、恐らくない。しかし、何が起こっても不思議ではない」とミリー氏は台湾と中国の対決について語った。

 また、米国のアフガニスタン撤退が中国を刺激したのではないかという質問に対しては、米国の敵対勢力が間違った教訓を学ばないように警告した。

 「ロシアや中国、あるいはその他の敵国が、われわれのアフガニスタン関与の終結を、弱さや後退、背を向けることを意味するように解釈しているとしたら、それは誤った解釈だと思う。どの国も、米国が何らかの形で弱体化していると考えることのないよう警告したい。それは間違った判断だ」

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