バイデン氏のインフラ整備は労働力不足と供給網の問題に直面する
By Haris Alic – The Washington Times – Thursday, November 11, 2021
バイデン大統領の1.2兆ドルの超党派インフラ整備法案は、サプライチェーン(供給網)の寸断と労働力不足のため、実施が大幅に遅れるとみられている。
アナリストらは、主要な高速道路、橋、港湾プロジェクトに取り掛かるのは、建築資材の不足、資材価格の高騰、技術者から土木作業員まで労働者の不足などの問題があり困難だと指摘している。
ホワイトハウスはかねて、共和党の協力を得て先週、議会を通過したこの計画は、国内の道路や橋を再建する「一世一代の大事業」になると述べてきた。
バイデン氏は「私たちは、米国を再建するための工事に取り掛かることを楽しみにしている。急速に変化する経済の中で取り残され、忘れられていると感じている国民のために、この法案を取りまとめた。この法案の効果は、おそらく今後2、3カ月のうちに工事が始まることで、表れてくる。状況は進んでいく」と述べた。
しかし、インフラの専門家らは、輸送インフラ整備の着工が大幅に遅れると警告している。
その理由の一つは労働力不足で、高度なスキルが求められる業務から、低レベルの業務まであらゆるインフラ関連の作業に影響を与える可能性がある。
高技能の分野では、プロジェクトの設計や監督を行う土木技師が不足しているため、インフラの着工が大幅に遅れる恐れがある。
米土木企業評議会の会長兼CEO、リンダ・バウアー・ダー氏は、この技師不足は他の分野との強い競争によるものだと指摘している。
「米国では技術者の数が不足しており、学位を取得しても、優秀な若手や中堅の専門家はハイテク産業などの産業に引っ張られ、土木から離れていっている。この状況を変える必要がある。より多くの若者、特に女性や有色人種をこの職業に引きつける必要がある」
ダッジ・アナリティクスによると、2020年9月~12月の4カ月間に、インフラ計画のための「熟練労働者の雇用」について懸念を報告した土木技術者は58%。この数字は、今年6月には69%に跳ね上がった。
ダー氏によると、ホワイトハウスのインフラ整備計画は、今後5年間で土木や設計サービス部門に8万2000人の求人を増やすことで、雇用市場にさらなるストレスを与えると評議会は予測している。
「技術者らが行っている仕事がいかに影響があるかへの認識が高まれば、技術者の数を増やすことができると思う」
土木技術者は、高技能労働者の不足を強調することは、低技能労働者、特に建設業界の労働者の真の問題を無視していると言う。
米土木学会の元会長であるK・N・グナラン氏は、民間や公共の土木会社は、技術を活用し、柔軟な勤務形態に頼ることで、高まる高技能労働者の需要に対応できると指摘する。
「技術に関する部分は、おそらく大きな問題にはならない。新型コロナウイルスの感染拡大によって、日々の仕事の多くがオンラインで可能になっており、一部の技術者にとってはそれは当たり前のことになっている」
8月には1040万人分の求人があったことを踏まえ、グナラン氏は、本当の問題は、インフラの建設に協力してくれる低技能の肉体労働者を見つけることだと語った。
「冗談でこんなことを言っている。寒い日に道路の真ん中で橋の上をハンマーでたたいたり、工事の補修をしたりするのは、家の中で快適に過ごしながら数十億円で売れるアプリを開発するのとは違って、魅力的ではない。しかし、インフラを改善するためには、それが必要だ」
労働市場の問題だけでなく、食料品店や自動車販売店、材木店などが抱えるサプライチェーンの問題も、インフラ整備の現場に影響を及ぼす。
建設資材や資源への入手の可否は、計画の成否を左右する。
グナラン氏は、「私は今、5億ドル規模の設計・建設プロジェクトを進めている。請負業者はそこにいるが、サプライチェーンの問題は続いている。…セメントが不足しているということを聞いた。どこかの船に載ったままだ」と述べた。
材料が不足すれば、コストを押し上げ、計画の完成を遅らせる原因となる。さらに、インフレの影響で卸売価格が過去1年間で8.6%上昇しているため、代わりとなる資材が高額になっていることも問題だ。
バイデン氏はインフラ整備計画で、連邦政府に国産品の調達を義務付ける「バイ・アメリカン」条項を強調しているが、これも問題を大きくしている。
グナラン氏は、「『バイ・アメリカン』の義務化が始まれば、請負業者が海外からの機器や資材に頼っている場合、大きな遅れが生じる可能性がある。特に、計画が複雑で、半年から1年かかるような場合はなおさらだ」
バイデン氏が提出したインフラ法案では、バイ・アメリカンの義務は大幅に緩和されているが、連邦政府から義務の免除を受けるには数カ月かかる可能性がある。
ホワイトハウスは、ワシントン・タイムズ紙の取材に答えなかった。