トランプとマコーネル:仇敵同士が最高裁の中絶判決を勝ち取る

(2022年7月5日)

2020年7月20日、ワシントンのホワイトハウスの執務室での会議で、ドナルド・トランプ大統領が話すのを聞く、ミッチ・マコーネル上院多数党院内総務。ロー対ウェイド裁判の終わりは、上院から始まった。上院共和党がトランプ大統領と連携して保守的な裁判官を承認したことが、中絶権に関する最高裁の画期的な判決への道を開いた。(AP写真/Evan Vucci、ファイル)

By Susan Ferrechio – The Washington Times – Wednesday, June 29, 2022

 これまで親友だったわけでもなく、今でも政敵のような二人だが、ドナルド・トランプとミッチ・マコーネルの腐れ縁が、ワシントンの保守派にとっては一世一代の最高裁判所での勝利をもたらした。

 連邦最高裁の判事5人対4人の裁決で「ロー対ウェイド」判決をくつがえしたことは、ワシントン保守派の最も高い目標の一つを達成し、中絶法の決定権を各州当局に差し戻すことになった。

 今回の展開は、主に両氏の政治行動によって可能になった。マコーネル氏は80歳、共和党が多数派だった時の指導者として、高等裁判所の判事候補を優先的に選択できた。トランプ氏は76歳、圧倒的な不利を跳ね返して共和党大統領候補になり、遂に2016年大統領選挙で勝者になった。まだ候補者のときに作成した保守派判事リストから最高裁判事を指名する手法を確立した。

 「二人がそれぞれに果たした役割は、一定の評価が与えられている」、南テキサス法学校の憲法学教授ジョシュ・ブラックマン氏は指摘する、「しかし、どちらも相手方なしでは不可能だった。」

 6年前、マコーネル氏はトランプ候補を阻止しようとした。トランプという、実業家で、報道特集の売れっ子が共和党の大統領候補になることを積極的に反対した。

 2016年のある時点までマコーネル氏は共和党の同僚に、トランプが投票日までこぎつけ、上院再選に苦戦する党員を危険にさらしそうになれば、トランプを見限り、引きずり降ろす、と約束したほどだ。

 一方のトランプ氏もマコーネル氏にしばしばジャブをかまして、このケンタッキー州出身の上院・共和党幹部を、「老いぼれカラス」とあだ名で呼んだりした。

 つい最近もトランプ氏は自らのソーシャルメディアサイトで警告し、マコーネル議員が超党派で銃規制法を推進していることは「我慢の限界」であり、「銃を取り上げられる第一歩」になるだろう、と語っている。

 こうした相互の嫌悪感にもかかわらず、トランプ政権の四年間、脆いパートナーシップを維持した。例えば連邦裁判所の二百以上の空席を埋めるために協力し、その極めつけが連邦最高裁判所の三つの空席を埋めるために連携したことだった。

 「政界では意外な人同士が手を組むものだ」、フロリダ州から立候補した共和党のフォード・オコンネル氏は述懐する。「上院で連邦最高裁判事を三人も承認させるには、大きな信頼が必要だった。トランプ氏は米国上院の難解な議事規則を考慮し、マコーネル氏に絶大の信頼を置いて、彼こそ地雷原を突破できる最適の人物だと判断した。」

 両者の提携関係は、トランプ大統領の四年間辛うじて持ち堪えた。しかし2021年1月6日に親トランプの暴徒が米国の首都を襲撃し、2020年大統領選挙の結果を吟味していた両院合同会議を混乱させたとき、両者の関係は崩壊した。

 マコーネル議員は暴動を扇動したことに関する下院弾劾審議で、大統領に対する有罪投票こそしなかったが、上院の議場でのスピーチでは、混乱と暴力についてトランプ氏の責任を追及し、大統領を骨抜きにした。

 「トランプ大統領にあの日の事態を誘発した、実質的かつ道徳的な責任があることは間違いない」、マコーネル議員は2021年2月13日に語っている。

 マコーネル氏に言わせれば、トランプ氏が1月6日にとった行動は、自らの政治生命を終わらせる類のものだ。ニューヨークタイムズの二人の記者、ジョナサン・マーティンとアレクサンダー・バーンズが書いた「This Will Not Pass(これは終わらない)」によれば、マコーネル氏はその展開を喜んでいるようだった、という。

 「(トランプは)頭に銃を突きつけ、引き金を引いた」、「これ以上に良いタイミングはなかっただろう」、マコーネル氏の発言が報じられた。

 しかし、その時までの四年間、トランプ・マコーネルの二人は連邦最高裁判所を民主党系の判事が5人対4人と、過半数を占めていた状態から、共和党系が6人対3人と上回る裁判所に変えるために連携した。その結果、一連の画期的な判決が下され、遂に1973年の最高裁が中絶の決定権に関して下した「ロー対ウェイド」判決を、今回逆転させるに至った。

 ここまでの重要なステップがある。保守系のアントニン・スカリア判事が逝去して数時間後、マコーネル議員は2016年の大統領選挙が終わるまで、最高裁の空席を埋める投票を上院で行わない、と発表した。これにより上院では、オバマ元大統領が内定したメリック・ガーランド氏(現在はバイデン大統領の司法長官)を判事に承認する機会が奪われた。

 さらにトランプ氏の大統領選勝利によって、共和党がニール・M・ゴーサッチ判事を承認する道が開かれた。同判事は先週、「ロー対ウェイド」判決をくつがえす投票をした連邦最高裁の5人の判事の一人だ。

 大統領候補者のトランプ氏は、ゴーサッチ氏を最高裁に選ぶと約束した保守派判事の一人で、そのおかげで福音派の票を獲得するのに役立った。

 またトランプ氏がゴーサッチ判事を任命した後、マコーネル議員は最高裁の判事候補者に関する議事妨害を終わらせるために動き、それによってゴーサッチ判事の承認のみならず、他に二人のトランプ指名判事を民主党が阻止しようとした議事妨害を挫折させることができた。

 トランプ政権はまた、アンソニー・M・ケネディ判事の引退を説得したと評価されている。これによって共和党指名の判事の椅子を維持し、さらにもう一人の最高裁判事を承認する機会を得ることになった。

 さらに上院の民主党が、ブレット・M・カバノー判事の承認を阻止すべく、彼の性的暴行という確証もない主張を長々と展開したり、テレビ放映された公聴会に告発者を登場させたとき、マコーネル議員は当時の司法委員会のチャールズ・E・グラスレイ委員長(アイオワ州、共和党)とともに、カバノー候補者の支持放棄することを拒んだ。それによりトランプ氏がカバノー判事を支持し続けて、僅差で承認されるよう助けた。

 カバノー判事の承認手続きを進めた上院・共和党のチーフスタッフだったマイク・デイビス氏は、「もし彼らが断念していたら、カバノー判事の指名は間違いなく挫折しただろう」と指摘した。「マコーネル議員とグラスレイ議員の二人は、カバノー判事承認を決着させるのに、思いがけない打開策を出してくれた。」

 マコーネル議員はまた、トランプ氏にとって三人目の判事候補だったエイミー・コニー・バレット判事の指名を先導してくれた。同判事は、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が亡くなった後、2020年11月の選挙の8日前に、最高裁判事に承認された。

 例の「ロー対ウェイド」判決を引っ繰り返した先週の「ドブス対ジャクソン女性保健局」判決についても、トランプ氏は大きな得点を稼いだ。つまるところ最高裁で過半数裁決をした五人の判事のうち三人を、トランプ氏が指名していたからだ。

 他にも連邦最高裁判所は先週、個人が銃を携帯する権利を拡大する主旨の判決を下した。それは憲法修正第2条の擁護者にとって大きな勝利だった。

 トランプ氏はこうした最高裁での裁決が、「三人の非常に尊敬され、かつ強力な立憲主義者を合衆国最高裁判所の判事に承認してもらったことなど、私が公約したことをすべて実現したから可能になったのだ」と強調した。

 一方のマコーネル氏は、司法の再編成こそ「私の政治経歴で最も重要な成果だ」と述懐しているが、同氏はそのサクセスストーリーにトランプ氏をほとんど登場させていない。

 マコーネル氏は先週月曜日、ケンタッキー州フィレンツェのロータリークラブでスピーチした際に、トランプ氏とウクライナのヴォロディーミル・ゼレンスキー大統領を敬意を込めて対照してみせた。ゼレンスキー氏は大統領に就く前、トランプ氏同様にテレビの人気者だったが、今やロシアの侵攻と数ヶ月にわたって闘い続けている。

 「人々は彼がどうなるか不審に思っていた」、マコーネル氏はゼレンスキー氏の尋常でない権力掌握の途に触れながら、「こうも言えるかもしれない、『ロナルド・レーガンという俳優がホワイトハウスにいた時、物事はうまくいった』。まったく芸能界出身者を批評するのは難しいものだ。」

性自認巡りハリス氏を批判 トランプ氏の勝因に-調査

(2024年12月03日)

トランスジェンダーの女性トイレ使用禁止 共和議員が決議案

(2024年11月20日)

トランプ新政権、2期目も「ハネムーン」なし

(2024年11月19日)

トランプ氏再登板は東南アジア各国に利益

(2024年11月15日)

トリプルレッド、第2次トランプ政権も政策目標達成に障害か

(2024年11月14日)

猫を飼う女性はハリス氏、犬派はトランプ氏-大統領選調査

(2024年11月12日)

トランプ陣営が次期政権の人選開始 国防長官候補にポンペオ氏の名も

(2024年11月09日)

トランプ氏の地滑り的勝利で政界激変

(2024年11月08日)

中絶反対グループがトランプ氏再選を祝福

(2024年11月07日)

ハリス氏は本当に不法滞在者の投票を望んでいる

(2024年11月04日)
→その他のニュース