思いやりとは真逆の移民政策

(2022年7月7日)

2022年6月27日月曜日、サンアントニオで、移民と思われる人々を乗せたセミトレーラーが発見され、数十人が死亡、複数人が熱中症で病院に運ばれたと当局が発表した現場で、警察やその他の第一応答者が作業している。(AP写真/エリック・ゲイ)

By Editorial Board – The Washington Times – Thursday, June 30, 2022

 今週、サンアントニオで大型トレーラーに閉じ込められていた51人の移民が死亡した。彼らはコヨーテ(メキシコから米国への不法移民を仲介する業者)によって密輸され、蒸し暑い状態の中に放置され窒息死した後、法執行機関と緊急対応要員に発見された。この事件は恐らく、過去20年間に国境危機により引き起こされたものの中で最も重大な悲劇の一つであり、当然、誰が責任を負うべきかという問題が持ち上がっている。

 バイデン大統領は、「恐ろしくて悲痛」と言い、政権は「密入国業者や人身売買業者らが、米国に入国しようとする人々を利用できないようにするために、何でもするつもりだ」と述べた。

 しかし、テキサス州のアボット知事は、責任はホワイトハウスにあるとしている。「今回の死亡事件の責任はバイデン大統領にある。彼の殺人的にオープンな国境政策の結果だ。彼が法律を執行することを拒否したことの致命的な結果だ」とツイートした。

 アボット氏の強い口調のコメントは、非常に厳しいが、必ずしも間違っているわけではない。マーシャ・ブラックバーン上院議員は「バイデン政権の国境開放政策には何ら思いやりの心はない」と、問題の本質を突いた。

 FOXニュースのニュースアンカー、マーサ・マッカラム女史は「これは、思いやりとは真逆の代物だ…ここではカルテル(共通の利益を持つ政治集団)が完全に仕切っている。われわれは、カルテルが命のことなど全く無視して、人々を虐待した揚げ句、道路際に立ち往生させるのを許している。これらの若い女性らは米国の内外で性犯罪を目的に人身売買されていた可能性が極めて高い。いつになったら、当局は捜査に乗り出すのか」と言った。

 国境で何が起こっているかについては多くの説がある。当局は2022会計年度に入ってわずか9カ月で、1万4000件以上の国境捜索と救助を実施した。昨年度の12カ月間に実施された捜索・救助件数は合計1万2833件にすぎなかった。

 大量流入は政権の無能の結果であると信じている人々がいる一方で、将来の民主党の投票基盤を移民でいっぱいにしようという、より大規模な陰謀の一部であると信じている者もいる。いずれにしても、マッカラム女史は、実情は「思いやりからの動機説とは真逆だ」と喝破した。

 トレーラーで死亡した人たちには、少なくとも22人のメキシコ人、7人のグアテマラ人、2人のホンジュラス人が含まれていた。いずれの場合も、故人は国境を越えるチャンスに期待をかけて、何百㌔も旅してきた。

 ダリエン地峡として知られる地域を通って、南米からさらに遠い距離を旅してやって来る移民もいる。その地峡は、コロンビアとパナマを結ぶ湿地帯と山岳熱帯雨林の両方を含む危険な地域にある。密林が非常に濃く、北米、中米、南米を貫くパンアメリカン・ハイウエーが途切れるのは、ここだけだ。

 それでも、無数の移民が依然として命懸けで地峡を通過し、コヨーテに誘導されて、中米とメキシコを通って北上する。仮設の山道は整備され、発電機を使って電源も整えられている。カルテルは、国境を支配するのと同じように、西半球全体の国境に通じる移動経路を支配している。

 米大統領が国境を閉鎖することを明言する時が来ている。それを行う最善の方法は、言葉でではなく、行動をもって国境を閉鎖することだ。やがて人々は、行き止まりであることを学び、カルテルの地下路線も意味がなくなる。

 言葉ではなく、行動が、このいつまでも続く悲劇を終わらせる唯一の方法であり――この胸が張り裂けるような悲劇を早く終わらせなければならない。

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