バイデン氏、警官の自殺増に沈黙
By Jeff Mordock – The Washington Times – Monday, July 4, 2022
自殺が、全米の警察の間で静かに流行しており、今年の警官の死因の第1位となっている。不満を募らせている警察支援者と精神衛生専門家は、バイデン大統領がこの危機を無視しただけでなく、反警察の発言で危機を悪化させたと警告している。
バイデン氏は30年以上にわたる上院議員生活の中で、かつては警察の忠実な味方だったが、治安に関しては微妙な立場を取っている。左派の警察予算削減運動には反発しているが、民主党の進歩的な支持層や黒人有権者と対立することを恐れて、警察を支持する公のコメントはほとんどしていない。
全米警察協会の広報担当者、ベッツィ・ブラントナー・スミス氏は、「政権は警官の自殺に取り組んでいないが、それが多くの点で、警官らが感じているストレス、不安、精神衛生上の問題を助長している」と述べた。
バイデン氏は大統領として、第一線で働く医療従事者の自殺を減らし、防止するための法案に署名し、軍人と退役軍人の自殺防止戦略を開始し、トランスジェンダーの10代の若者に対するメンタルヘルスサービスを提唱した。
しかし、政権幹部は、2021年1月6日の連邦議会議事堂での暴動に対処した後に自殺した4人の警官の死を悼む以外、警官の自殺についてはほとんど沈黙を守ってきた。
バイデン氏は5月、地元警察への資金投入を各都市に促すイベントで、社会復帰した犯罪者のメンタルヘルスサービスの必要性を論じたが、警官の話はしなかった。
司法省の広報担当者は、3月に開催された国際警察署長協会のシンポジウムでガーランド司法長官がこの問題を取り上げたと述べ、政権が警察官の自殺に沈黙していることに異議を唱えた。
ガーランド氏は発言の中で、司法省のCOPS(コミュニティー重視の警察サービス)オフィスが今年、警官の自殺防止とメンタルヘルスサービス拡充のために700万ドルの補助金を拠出すると述べた。しかし、この資金のほとんどは、2018年に当時のトランプ大統領が署名した「法執行機関のメンタルヘルスとウェルネス法」に基づいて割り当てられていたものだ。
広報担当者によると、司法省は2023年度の予算レベルを引き上げていないが、警官に提供する精神衛生のためのトレーニングや技術支援を拡充している。今年、同省はウェブサイトに、警官の安全と健康への予算の統合リストを追加した。
ガーランド氏はまた、警官の自殺を防ぐための全国的なコンソーシアムを招集するための200万ドルの助成金を宣伝した。それらの予算は、2019年に司法省の司法支援局から承認されていた。
警察心理学者のチェリリン・リー氏は、「問題があると認めれば、何かをしなければならないので、警察をバッシングするこの文化に問題があると認めることにためらいがあるのだと思う。一方で警官は悪意を持っていると言いながら、善のために戦い、国民を守るために犠牲になっていると言うことができるだろうか」と述べた。
このような統計を取っている非営利団体「ブルーH.E.L.P.」によれば、今年、米国では64人の警官が自殺しており、1カ月に平均10人以上となっている。
専門家によると、この数はもっと多いようだ。ブルーH.E.L.P.のデータは、地元の警察署からの報告に基づいている。これらの部署は、自殺にまつわる不名誉を理由に、正確な数字を出すことをためらっている。自殺は職務上の死と見なされないため、自殺した警官の家族は手当を受けられない。
報告された64件の自殺は、今年の警官の死197件の32%を占め、どの職務上の死因よりも多い。
今年は34人の警官が銃撃で死亡しており、そのほとんどが逮捕中、58人の警官が新型コロナウイルスで死亡、さらに30人が交通事故で死亡している。
2021年、判明している警察官の死因のうち、自殺は約20%を占めている。
疾病対策センター(CDC)の最新データによると、2021年の全米の自殺率は3%減少しているが、警官の自殺は増加している。
メンタルヘルス擁護者は、自殺の急増は、心身のタフさを誇る職業で助けを求めることに伴う恥と不名誉に起因し、米国の反警察風潮の中で警官であることのストレスが高まっていることも相まって、このような事態を招いていると述べている。
ブラントナー・スミス女史は「私は1976年から警察にかかわっているが、これは私が見た中で最悪の事態だ」と述べている。
専門家によれば、バイデン政権が警官の自殺を抑制するためにできることはたくさんあるという。
まず、警察を批判するような発言をやめることだという。
昨年の警察週間に警官を称えるための声明でバイデン氏は、警察と有色人種のコミュニティーの間に「深い不信感」を作り出していると警官を非難した。
職務中に倒れた警官を称えるための声明で、「今年、私たちは、コミュニティーの多く、特に黒人や褐色人種のコミュニティーで、警察に対して深い不信感があることを認識した。その不信感は、警察の手によって何人もの黒人や褐色人種の人々が最近死亡したことによって悪化した」と指摘している。
バイデン氏は昨年、国境でハイチ移民を「むち打ち」したとの濡れ衣を着せられた2人の米国境警備隊員に対し、「償いをさせる」と宣言したが、後に犯罪行為の疑いは晴らされた。
ブラントナー・スミス女史は「バイデン政権ができる最大のことは、選挙以来ジョー・バイデン氏が行ったいくつかのとんでもない発言について、専門家に謝罪することだ。警官らは、政権が後ろ盾になってくれないだけでなく、格好の攻撃の的なっていると感じており、街で仕事をしようとする男女の精神衛生を損なっている」と述べた。
バイデン氏はまた、警官を称える日や、警官のメンタルヘルスサービスの必要性を強調するイベントを開催することもできる。ホワイトハウスは以前、退役軍人の自殺を減らす計画など、いくつかの精神衛生に関する取り組みを大々的に発表した。
また専門家は、警官のためのメンタルヘルスサービスの資金を増やすことを求め、カウンセリングやその他の治療サービスのために地方警察署が利用できる司法省の助成金を増やすよう呼びかけた。
警察擁護派は、2018年の法律に基づいて提供される助成金はひどく不十分であり、連邦政府からの資金で補う必要があると述べた。また、COPSプログラムやバーン(司法支援補助金)プログラムで利用できる助成金は有用だが、資金繰りに苦しむ署は、破損した車両の交換や留置場の改良といった重要なニーズに資金を使っており、メンタルヘルスサービスにはわずかな予算しか残されていないと述べている。
現在、連邦議会には、法執行機関のメンタルヘルスサービスに対する連邦政府の資金を増やすための法案は提出されていない。バイデン政権を非難する声もあるが、共和党が警察のメンタルヘルスサービスへのアクセスを改善する法案を提出していないことを批判する声もある。
警察心理学者のリーさんは、「現在の予算は役に立っているが、それだけでは不十分だ。警察寄りであることは政治的に危険な領域だ」と述べた。
彼女は、警察官に年に一度のセラピストとの面談を義務づけ、重大事件に巻き込まれた警察官には、当局者やカウンセラーとの報告会に出席することを義務づけるような法律を要求している。議会がこのような規則を義務付けられるのは連邦警察官だけだが、地方の警察署は通常、これに従う。
現在、議会で第一対応者の自殺率の高さを取り上げているのは、たった一つの法案だけだ。「公安官支援法」は、自殺で亡くなった警官の遺族が給付を受けられるようにするものだ。
この法案は、タミー・ダックワース(民主、イリノイ州)とジョン・コーニン(共和、テキサス州)の両上院議員が共同提案したもので、上院の司法委員会を通過した。今後、本会議での採決に移る。
コーニン氏の側近は、バイデン氏は法案の早期成立にもっと貢献できたはずだと述べた。
「バイデン政権は、警察への予算打ち切りというひどい政策が裏目に出たことで、勇敢な警官を悪者扱いし、無視する新たな方法を探し続けている」