中国 流出技術で兵器開発
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, September 22, 2022
80年代から計画/米研究所から科学者獲得
中国政府が、核兵器開発を目的に設立された米ロスアラモス国立研究所で研究に携わった中国人科学者らを招致し、数十年にわたって先進兵器の開発に当たらせていたことが、新たな報告から明らかになった。
セキュリティー・情報企業、ストライダー・テクノロジーズが22日に公表した報告によると、1987~2021年にロスアラモスから帰国し、中国国内でさまざまな研究開発計画に携わっている中国人科学者は162人に上るとみられている。
報告「ロスアラモス・クラブ―中華人民共和国はいかにして、ロスアラモス国立研究所の科学者を集め、軍事計画を推進しているか」は、「ロスアラモスにいた科学者らは、中国の極超音速兵器、ミサイル、潜水艦の開発計画に大きく貢献してきた。米国と自由世界にとって安全保障上の脅威となっている」と警鐘を鳴らした。
ストライダーの共同創設者、グレッグ・レベスク氏は、「調査によると、中国は重要な軍事技術に関して、わずかな投資で大きな成果を得ている。米国と同盟国で公的、民間両部門の優れた才能を守ることが国家安全保障上の急務だ」と述べた。
元情報高官のケン・デグラフェンリード氏は、何十年にもわたって米国の重要な情報が中国によって盗まれてきたにもかかわらず、議会は対応を取らなかったと指摘、「20年前、超党派のコック委員会が、中国共産党がさまざまな手法で科学情報などを盗み出していることを報告し、衝撃が走った。ストライダー・リポートは、これらの活動が依然続いていることを示した」と政府と議会に対応を求めた。
報告によると、中国は1980年代に、人材獲得計画「千人計画」と同様の「才能超大国戦略計画」を開始、科学者の獲得に取り組んできた。その中で研究のために米国に若い中国科学者を送ることも行われていたという。
報告では、技術流出の具体例も挙げている。
1990年代にロスアラモスで働いていた物理学者、陳十一氏は帰国後、中国の南方科学技術大学の学長に着任。流体力学の専門家で、中国で極超音速ミサイル開発に携わったという。中国は、極超音速ミサイル東風17の開発を公表している。
趙予生氏は、18年間にわたってロスアラモスで働き、米政府から補助金1980万ドルを受け取っている。地下の軍事施設などを破壊するための徹甲弾の研究を行っており、現在は、核兵器の研究、開発、製造を行っている中国工程物理研究院(CAEP)に勤務している。
また、帰国後、大学や研究所で、潜水艦の静穏化の研究や、「軍民共用の垂直離着陸無人機開発の指揮を執っている」科学者の存在も報告では指摘されている。いずれも、中国軍の増強に貢献する兵器だ。
1990年代にクリントン政権(1993~2001年)によって、米中間の核科学者間の交流が開始されたが、当時、中国の核兵器開発に悪用されるとの批判もあった。