ハリス副大統領、中絶問題への取り組みが政治的運命を左右
By Tom Howell Jr. – The Washington Times – Tuesday, October 4, 2022
カマラ・ハリス副大統領は、不法移民阻止と投票権強化の取り組みがつまずいた後、足元を固めようと、人工妊娠中絶を中間選挙の重要な争点として盛り上げようとする民主党の取り組みを主導している。
バイデン大統領が再選出馬しない場合、党はハリス氏を予備候補として考えており、ハリス氏にとって中絶はそのための安全な足がかりとなるはずだ。
ハリスさんは4日、ロー対ウェイド裁判を覆した最高裁判決と中絶に対する国民の権利に対処するために作られたタスクフォースの第2回会合で、バイデン氏の隣に座った。しかし、最初に発言したのはハリス氏で、会議を主導したのもハリス氏だった。
長いテーブルの中央に座ったハリス氏はタスクフォースで「ドブス判決は、米国の医療危機を引き起こした。私たちは、そして私も、女性が自分の体について決定する自由を持つべきだと考えている。政府が決定すべきことではない」と述べた。
ハリス氏は、アリゾナ州とウィスコンシン州という二つの激戦州で、この判決をきっかけに19世紀からの中絶禁止が再び適用されていると指摘した。
バイデン氏は、一部の学校が反中絶に取り組む中、大学キャンパスで避妊法と避妊に関する情報が入手できるようにする方法を検討するようミゲル・カルドナ教育相に命じたことを明らかにした。
「私たちは何世紀にいるのだろうか」。バイデン氏はこのように語った上で、ハリス氏のタスクフォースでのリーダーシップに感謝を表明した。
バイデン氏は、ハリス氏にさまざまな任務を与え、困難な課題に対処させてきた。
しかし、共和党の批評家らは、不法移民問題への対処を任されたにもかかわらず、南部国境を訪問しなかったことを非難し、民主党の投票権を保護するための法案はほとんど進展していない。
外交政策の信頼性を高めるために計画された歴訪も順調にはいかなかった。最近の東アジア視察では、朝鮮半島を隔てる非武装地帯を訪れた際、ハリス氏が誤って「北朝鮮との同盟」を喧伝してしまうというハプニングがあった。
ラトガース大学のロス・ベイカー教授(政治学)は、「彼女は歓迎されていない。いいところを見せられるような課題に取り組んでいない」と語った。
民主党は、中絶問題への取り組みでハリスさんへの支持が高まることを期待している。米国史上初の女性副大統領であり、この問題でリーダーとなりうる人物だ。
ハリス氏は、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する健康)と中絶について、州や地域の指導者と話し合うために全米を飛び回っている。5日には、コネチカット州を訪れ、ジャハナ・ヘイズ議員、米家族計画連盟と家族計画行動基金の会長兼CEOであるアレクシス・マクギル・ジョンソン氏とニューブリテンでの中絶の権利について議論する予定だ。
今週末にはテキサス州オースティンを訪れ、テキサス州民主党のレセプションに先立ち、リプロダクティブ・ライツ擁護者と会談する。
民主党全国委員会の元委員長、ドナ・ブラジル氏は先月、CNNで、「ハリス氏は能力を生かせる場所を見つけた。ホワイトハウスが選択、自由、平等に関するメッセージを伝えることに貢献した。これは接戦の選挙で重要なことだ」と述べた。
予測によれば、中間選挙で共和党が下院を奪還する可能性が高いが、当初考えられていたほどの議席数にはならないとみられている。また、共和党は、ハリス氏が決定的な一票を握り、両党が拮抗している上院の獲得で苦戦するのではないかとみている。
民主党は、最高裁の人工妊娠中絶判決を11月の選挙前の重要な争点と考えている。民主党は、共和党が主導する州での中絶規制や全国的に禁止される可能性を懸念する民主党支持者らが、「赤い波(共和党支持の動き)」を弱めることを期待している。
民主党の戦略家で故ハリー・リード上院議員の報道官だったジム・マンリー氏は、「最高裁は、多くの共和党員が避けたいと思っていた政治的議論を引き起こしたが、共和党にとって残念なことに、党内の極端な勢力が火に油を注ぎ続けている。副大統領が関与しないのは筋が通らない」と述べた。
民主党は特に、リンゼー・グラム上院議員(共和、サウスカロライナ州)が提案した、15週以降の中絶を全米で禁止するという案に注目している。しかし、共和党の中には、この問題は州の決定事項だと主張し、関与を避ける議員もいる。
この問題は、どの選挙年においても民主党の命運を握る女性や若者にアピールできる争点だが、リスクがないわけでもない。
モンマス大学の世論調査によると、中間選挙の有権者にとって、中絶の権利や民主主義に対する懸念よりも、経済問題が大きな要因となっていることが分かった。民主党は人工妊娠中絶の権利などの問題に注目しているが、無党派層が重視しているは、物価の上昇だ。
調査によると、バイデン氏の中絶への対応に賛成したのは、成人の31%に過ぎない。
政権は、約100日前に最高裁で覆された中絶に関する広範な権利を成文化するよう議会に働きかけ、一方で、可能なところでは大統領令を出して対処している。
ホワイトハウスは4日、フロリダ、メリーランド、ミシガン、ニュージャージー、ニューヨーク、ノースカロライナ、ウィスコンシン州での家族計画と調査、10代の妊娠予防のために600万ドルの助成金を割り当てることを発表した。
ハリス氏はこの問題に注力することで、これまでの失敗を挽回することが可能だ。就任早々、低い支持率に悩まされ、スタッフの不満や高官の離職などが報じられてきた。
ハリス氏は2020年の大統領候補として期待されながら、早い段階で離脱した。しかし、バイデン氏が大統領選出馬を見送った場合の候補に挙げられている。
バイデン氏は先週、ホワイトハウスのイーストルームで開かれたユダヤ教の新年のイベントで、「カマラは副大統領、あるいは大統領になる最後の女性にはならない」とゲストに語った。
一部のアナリストは、彼女はまだ後継としてふさわしい資質を備えていることを証明する必要があると主張している。
ベイカー氏は「ハリス氏が置かれている状況は、他の副大統領も直面してきた。つまり、知名度はあるが実権はない。もう少し長く上院に在籍していれば、接戦の投票でバイデンを後押しし、友好関係を築けたかもしれない」と述べた。
ファイブ・サーティー・エイトがまとめた支持率の平均によると、ハリス氏の支持率は2021年11月と今年4月に30%前後まで急降下した。最近は少し改善され、38%に近づいているが、それでも国民の約半数は彼女のパフォーマンスを支持していない。
スーザン・B・アンソニー・プロライフ・アメリカの広報担当副会長のマロリー・キャロル氏は「バイデン氏とハリス氏が、過激な中絶推進派が悲惨な支持率から救ってくれると期待するなら、それは間違いだ」と言う。
キャロル氏は、トラファルガー・グループの世論調査によると、すべての年齢層で過半数が15週以降の中絶を制限する連邦法案(強姦と近親相姦の例外と州レベルの制限を認める)を支持し、無制限の中絶を認める民主党案への支持は少数だと述べた。
キャロル氏は、「米国民は、民主党の過激な政策の実情を理解すれは、拒否する」と語った。