米感染症学者 新型コロナ「流出」を確信、エコヘルスの関与を主張

(2022年12月14日)

2017年2月23日、中国中部湖北省武漢市にある武漢ウイルス研究所の研究室で、他の研究者とともに作業する史正利氏(ファイル写真)。(Chinatopix経由AP、ファイル)

By Bill Gertz – The Washington Times – Sunday, December 11, 2022

 米ニューヨークを拠点とする非営利団体エコヘルス・アライアンスの元職員が、新型コロナウイルスの感染は、中国の武漢ウイルス研究所(WIV)からの流出で始まったと考えていることを明らかにした。

 感染症学者でエコヘルスの元副所長、アンドルー・ハフ氏はインタビューで、エコヘルスは、2019年末に武漢で新型コロナが最初に現れる前の数年間、WIVでウイルスの毒性や感染力を高める可能性がある「機能獲得」実験を行っていたと指摘、ウイルスはWIVで作られ、「流出した」と確信していると述べた。

 自然発生したウイルスに感染した動物から人に感染したという説が根強いことについては、「科学的証拠は明らかに流出を示している。自然発生の証拠はなく、すべてのデータは、中国が検閲し、整理し、公開されている」と自然発生説を強く否定した。

 新型コロナの発生源について中国当局は流出説を強く否定、エコヘルスも、ハフ氏の主張を否定している。一方、米情報機関は、人工物か自然発生かは判断できないとしている。

 ハフ氏は新著「武漢の真実」で、学界や米政府内の一部は感染拡大を隠蔽(いんぺい)しようとしたが、それは、機能獲得研究を続けるためだったと主張している。

 ハフ氏によると、当初から流出説に否定的だったエコヘルスのダザック所長は、15年から中央情報局(CIA)と極秘に協力し、WIVなど、世界各地での活動で集めた情報を提供していたという。

 ハフ氏は、米エネルギー省傘下のサンディア国立研究所で感染症の研究を行い、14年にエコヘルスに入所、2年後に退職している。当時から所長を務めているダザック氏について、新型コロナの感染拡大に「直接、責任があると思っている」と主張した。

 また「エコヘルス・アライアンスは、米政府から支援を受け、世界の感染症の情報を集めていたが、感染症の軽減や生態系の改善にはほとんど貢献していない」と指摘、「ダザック氏が富裕層、各国政府、学者、環境保護論者に提供した情報は当てにならない」と非難した。

 ハフ氏の著書出版を受けてエコヘルスの広報担当は、エコヘルスは機能獲得研究には関わっていないと強調、ハフ氏はWIVで働いたことはなく、その情報は「信用できない」と主張した。

 さらに「確認済みの科学的証拠を基に、動物からの感染という説がコンセンサスとなってきている」と流出説を否定した。

 ダザック氏は流出説否定の急先鋒で、中国で世界保健機関(WHO)が行った調査にも参加、WHOは流出の証拠はほとんどないと結論付けていた。ところがWHOはその後、これを撤回し、流出の可能性を指摘、中国当局に国際的な専門家らと協力し調査するよう求めている。

 ハフ氏は、エコヘルスがWIVでの機能獲得に携わっていた証拠として、ノースカロライナ大学の感染症学者、ラルフ・バリック氏が「機能獲得実験でエコヘルスと協力」したこと、WIVの研究者でコウモリウイルスの研究で知られる石正麗氏と実施した機能獲得実験について詳細を明らかにしていることを挙げている。

 それによると、バリック氏ら16人は、学会誌に掲載された論文で、ウイルスが流出し、人に感染する危険性を指摘、内部に異なった遺伝子を持つ「キメラ」ウイルスを研究室で作り、人の気道で増殖するかどうかの実験を行っていたことを明らかにしている。

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