ソフトとハードで中国に対抗を―元海兵隊司令官

(2024年5月11日)

2023年9月23日土曜日、中国・杭州で開催された第19回アジア競技大会の開会式で、中国国旗に向かって敬礼する軍人たち。(AP Photo/Eugene Hoshiko)

By Andrew Salmon – The Washington Times – Wednesday, May 8, 2024

 米国は、戦争と平和に関して長年抱いてきた考え方を早急に見直す必要がある―軍人として経験を積んできた米海兵隊の退役中将ウォレス・グレッグソン氏は5月7日、ワシントン・タイムズ財団が主催するオンライン討論会「ワシントン・ブリーフ」でこう訴えた。

「私たちは、平和と戦争は二元的であり、相互に排他的な国家の存立状態であると考えている」が、「今、武力衝突がないということが、存立の脅威がないということではない」

 グレッグソン氏は、米国に対する軍事、経済、イデオロギー面での競合相手としての中国の台頭と、中国、ロシア、イラン、北朝鮮といった米国の敵対勢力や非国家主体間の連携の深まりとが相まって、この前提が崩れつつあると言う。

 また、戦後の米国主導の世界秩序が多方面から挑戦を受けるこの新たな戦略的現実は「激動の枢軸」と呼ばれていると指摘した。「戦いではあるが銃弾は飛び交っていない」状態を指す。

 討論会のテーマは「脅威が拡大する時代の政策と戦略」。

 グレッグソン氏は、さまざまな経験を積んできた。ベトナムの最前線での戦闘、太平洋の海兵隊の司令官をへて、政界、政府機関にも通じており、アジア・太平洋問題担当の国防次官補を務めたこともある。

 「中国共産党は、激しい情報戦を仕掛け、ここでは米国は劣勢に立たされている。米国はもともと中国に対し優位に立っている」と懸念を表明。中国の人権侵害や地域の民主主義国家に対する威嚇を挙げながら、「われわれは自らの信念や原則を守らねばならない」と語った。

 内紛もまた、米国の政策に対する信頼を損なっている。「ウクライナへの支援が遅れていることは、同盟国にとって心強いことではない」

 グレッグソン氏は、米国が地域内にある施設をもっと利用し、インド太平洋戦域の軍隊と近代兵器の増強を提案した。また、米国の軍需産業基盤を強化することが不可欠だと主張した。

 しかし、そのメッセージの中で重要なのは、思想的戦いにもっと注力すべきだということだ。

 中国には「ソフトパワー」がないと思われている。米憲法が説くような価値観や、ハリウッドが成功させているような文化的資産を通じた魅力が欠けているのだ。しかし、グレッグソン氏は、民主主義国家は世界の情報空間の支配権を失いつつあると考えている人は多いと指摘した。

 金融危機や中東での軍事的失敗を受けて、欧米にはシニシズムと自己不信が蔓延している。これが、ソーシャルメディアの普及と相まって、戦略的な反欧米認知戦争工作員が付け込む隙を生んでいる。

 グレッグソン氏は「戦争への取り組み方を再構築し、自由民主主義と人権の大切さを訴え、中国国民にメッセージを伝え、自国民と同盟国に米国の正しさを理解させなければならない。中国国民とその金融資産は中国を離れつつある。だからこの戦いには勝てる。しかし、そのためには戦うことが必要だ」と訴えた。

 同氏によると、ソフトパワーはそのための戦術の一つだ。フィリピンが台風に見舞われた際、自衛隊や民間によって日本の人道支援が届けられたことで、この地域の民主主義国間の協力関係が変わる一つのきっかけになったという。

 こうした変化は、4月11日にワシントンで開催された前例のない日比米首脳会談で目にすることができた。

 グレッグソン氏は、この3カ国首脳会談は「歴史的」かつ「実に意義深い」ものであり、「各国の態度と国際的脅威が変化していることの表れだ。民主主義諸国は立ち上がり、反撃を開始している」と述べた。

 また、日本は2027年までに防衛予算を倍増させることを目指している。国連安全保障理事会の二つの常任理事国、中国とロシアが攻撃性を強めていることで、国際的な組織に対する日本の信頼は「粉砕された」と語った。

 しかし、この戦いではハードパワーも重要だ。

 「西太平洋は海上戦域だ」。「中国は350隻の軍艦を持っているものの、米国は290隻だ」

 グレッグソン氏は、日本と韓国の造船所が米国の艦艇を改修できるようにすべきだという議論に賛成している。そうなれば、米国の造船所は修理よりも建造に集中できるようになるからだ。

 インド太平洋地域については、「われわれはそこにいるが、もっと必要だ。物理的なプレゼンスだけでなく、イデオロギーや宣言、政治的な戦いなど、かつては得意だったが、いつの間にか忘れてしまった部分を強化する必要がある」という。

 こういった意見には反発もあった。

 パネリストのジョージタウン大学安全保障研究センターのアレクサンドル・マンスーロフ教授は、中国とソ連を対立させるというヘンリー・キッシンジャー氏の戦略に言及しながら、両国に同時に対峙するという現在の米国の取り組みに疑問を呈した。

 現在の政策は、「くさびを打ち込むのではなく、両者を近づけている」ものだという。

 マンスーロフ氏は、極東地域でのロシアのプレゼンスは弱く、ウクライナでの戦争に集中している間、中国と北朝鮮が後方をカバーする必要があると付け加えた。

 グレッグソン氏は、キッシンジャー氏の対応は当時としては正しかったかもしれないが、「その政策が正しいかどうかはまだ確定されていない」と答えた。

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