中国、核先制不使用を呼び掛け 米国は非現実的と拒否

(2024年8月12日)

2021年10月9日、北京の人民大会堂で行われた辛亥革命110周年記念イベントで演説する中国の習近平国家主席。中国の軍事力に関する米国防総省の新たな報告書によると、北京は2030年までに核兵器保有量を大幅に増やす勢いであり、ロシアのウクライナ戦争から「ほぼ確実に」学んでいるという。(AP Photo/Andy Wong, File)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, August 7, 2024

 中国は7月、「核先制不使用」政策を採用するようすべての国に呼びかける提案を国連に提出したが、これは米国にとっては現実的ではない。

 国務省のある高官は本コラム「インサイド・ザ・リング」に、中国の大規模な核兵器増強と米国からの軍備を巡る協議への参加呼び掛けの拒否を考えれば、先制不使用政策は受け入れられないだろうと述べた。

 「中国は核兵器を急速かつ不透明な形で増強しており、先制不使用の提案がどのような目的でなされたものか疑念を持たざるを得ない。中国が、先制不使用を明言していることに関する疑問点を含め、軍備管理およびリスク削減に関する有意義な二国間または多国間協議に参加することを拒否していることは、こうした懸念をさらに強めるものだ」

 この提案は、2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に先立ち、7月22日から8月2日までジュネーブで開催された国連の準備会合で提示された。

 中国政府による作業文書の中で習近平国家主席は、核兵器を人類を脅かす「ダモクレスの剣」と表現。核兵器のない世界を追求するために、すべての核兵器は「完全に禁止」されるべきだと述べている。

 中国はこの文書の中で、紛争で核兵器を最初に使用しないと宣言することは、NPT第6条を履行することでもあると主張している。同条約は、すべての署名国に対して核軍縮のための「誠実な交渉」を求めているが、中国はこれまでこれを拒否してきた。

 国務省当局者によれば、ジュネーブにいる米外交官が、軍備交渉について中国の高官に質問を投げかけたが、返答はなかったという。

 中国はこれに先立ち「軍備管理とリスク削減に関する二国間協議を中断」しており、提案は、実質的な協議に参加する気がないことの責任を回避しようとするものだろう。

 中国の提案は、米国、ロシア、中国、イギリス、フランスの5大核保有国に対し、核兵器の先制不使用に関する条約に署名するよう求めるものだ。軍備管理当局者によると、先制不使用は、核抑止が目指しているものであり、先制不使用を宣言することは、核抑止の目的を政策として表明することになる。

 現在、米国が明らかにしている政策は2009年までさかのぼるが、米国と、米国の「拡大」抑止の対象となる欧州やアジアの同盟国の両方に対するさまざまな脅威を抑止するために、核兵器をどのように使用するかについては意図的に曖昧にしている。

 歴代の政権は、先制不使用も、かつてバイデン大統領が支持している「唯一の目的」政策も否定してきた。この「唯一の目的」政策は、核兵器の使用が正当化されるのは、米国とその同盟国に対する核攻撃を抑止するためだけとする政策だ。

 トランプ政権で軍備管理を担当したマーシャル・ビリングスリー大統領特使は、先制不使用は米国には適さないと指摘、非核攻撃へのインセンティブを与えることで戦争のリスクは高まり、減ることはないと懸念を示した。

 ビリングスリー氏は電子メールで、「私たちは常に、何が米国の核による反撃を引き起こすかについて曖昧にしてきた。実際、私たちが最初に核兵器を使用するシナリオもあり、中国共産党はそれを理解する必要がある」と述べた。

 国防総省の中国軍に関する最新の年次報告書も、中国はミサイル、爆撃機、潜水艦の核戦力を急速に増強しているとして、先制不使用政策に疑問を呈している。

 報告は、中国の核戦略には、先制不使用とは逆に、核戦力や指揮統制システムを脅かす非核攻撃への核による反撃や、核攻撃に匹敵する規模の戦略的効果を持つ攻撃に対する核攻撃の計画が含まれている可能性が高いと指摘している。

 また、台湾で通常兵器による戦闘で敗北し、中国共産党の体制存続が著しく脅かされた場合、中国は核兵器を頼るだろうとの見方を示している。

 習氏が政権に就いて以降、10年以上にわたる中国の急速な核戦力増強は、前例のない「ブレイクアウト(急増)」と表現されている。国防総省は、かつては250発程度に制限されていた中国の核弾頭備蓄が、2035年までに1500発に達し、ミサイル、潜水艦、爆撃機に配備されると推定している。

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