トランプ次期大統領、ビットコインの戦略的保有を検討

(2024年12月24日)

2021年11月18日、香港のビルに掲げられた暗号通貨のひとつ、ビットコインの広告。(AP Photo/Kin Cheung, File)

By Tom Howell Jr. – The Washington Times – Monday, December 23, 2024

 暗号資産(仮想通貨)は、2009年の不況期に電子マネーの一形態として登場して以来、荒野に取り残され、規制当局から放置されてきた。

 10年以上もの間、急成長してきたにもかかわらず、連邦規制当局からの指示はほとんどなかった。

 今、ドナルド・トランプ次期大統領は、ビットコインなどの暗号資産を寒い荒野から脱出させようとしている。証券取引委員会(SEC)委員長に暗号資産に好意的な人物を当て、暗号資産と人工知能(AI)を促進するための特別な「責任者」の任命など、暗号資産を温かく受け入れようとしている。

 最も注目すべきは、次期政権が、ビットコインや、他の形態の暗号通貨になる可能性のあるものを規制当局がどのように分類し、銀行がどのように管理すべきかを示す規制を策定しようとしていることだ。これはバイデン政権時代の強引なアプローチとは一線を画すもので、政権は、無記名証券の取引を助長したとして暗号資産事業を訴えたり、銀行や投資家に暗号資産に注意するよう警告したりしていた。

 ミシシッピ大学の経済学准教授であるジョシュア・ヘンドリクソン氏は、「バイデン政権で問題となったのは、何が商品とみなされるのか、何が証券とみなされるのか、暗号資産やトークンにそれぞれ別の定義や規制ルール、強制が必要なのかどうかが明確でなかったことだ。バイデン政権はこれらを明確にせず、SECが事実上、取り締まりを通じて政策を決めようとしてきた」と指摘した。

 ビットコインはデジタル投資であり、ユーザーは金融機関を利用する代わりにピアツーピア・ネットワーク上で取引を記録することができる。取引はブロックチェーン(分散型台帳)に記録される。

 ビットコインの背後にある考え方は、個人から個人へ取引できる電子版の現金のようなものを作ることにあり、取引が行われたことは当事者にしか分からない。

 ヘンドリクソン氏は、「ビットコインの利用に関しては、携帯電話やノートパソコンにインストールできるソフトウエアを使って、送ったり受け取ったりでき、非常に簡単だ。アップルペイのようなものを使うのと大差ない。唯一の違いは、ビットコインを支払いに使ってくれる人を見つけるのは、アップルペイを使うよりもずっと難しいということだ」と述べた。

 多くの人にとって、ビットコインは金のように所有でき、持ち続けることでインフレから資産を守ることができるものにすぎない。他の暗号資産は、携帯電話や無線LANのデータ用の暗号資産「ヘリウム」のように、価値のあるものを購入したり取引したりするのに使われる。

 暗号資産は実験的とみなされることがよくある。誕生以来、いい時もあれば、よくない時もあり、そのサイクルを繰り返してきた。

 それでも暗号資産支持者らは、トランプ氏の強い支持で暗号資産の妥当性が認められたと考えている。

 フロリダ・アトランティック大学のウィリアム・ルーサー准教授(経済学)は、「ビットコインなどの暗号資産は、現政権下で規制という障害に直面してきた。次期政権はおそらく、より寛容なアプローチを取るだろう」と述べた。

 トランプ氏が暗号資産を受け入れたことは大きな変化だ。2019年に暗号通貨を批判し、その価値は「非常に不安定で、薄い空気の上に乗っているようなものだ」と批判していたからだ。

 トランプ氏は今年、選挙運動で暗号資産を支持し、ビットコイン会議で演説し、暗号資産での選挙寄付を受け入れた。トランプ氏は、中国や他の国が暗号資産を受け入れ、米国より先に進むことを望んでいないと言う。

 トランプ氏は今月に入って、ニューヨーク証券取引所のオープニングベルを鳴らした後、CNBCにこう語った。「暗号資産を取り入れている国はあるが、われわれはその先頭に立ちたい」

 息子のエリック・トランプ氏は最近、アブダビで開かれた暗号資産会議で、2021年1月6日の議会議事堂襲撃事件後、既存の銀行がトランプ一家との取引を凍結したため、一家は暗号資産を受け入れたと語った。

 トランプ一家はワールド・リバティー・フィナンシャルという独自の暗号資産プロジェクトを持ち、9月に発表した。ブルームバーグが先月、報じたところによると、このプロジェクトは起業家のジャスティン・サン氏から3000万ドルを受け取っている。

 議員の間にも、このデジタル資産の法的枠組みをつくろうとする動きがあるという。何年もの間、政治家らは暗号資産が麻薬取引などの違法行為にしか使えないと恐れてきた。

 暗号資産の代表格であるビットコインの価格は、大統領選でのトランプ氏の勝利から数週間後に10万ドルを記録した。これは大きな節目であり、ビットコインへの需要の高まりと、次期政権による寛容な姿勢を反映している。

 価格の急騰は、トランプ氏がゲーリー・ゲンスラー現SEC委員長の後任に、暗号資産に好意的とみられるポール・アトキンス氏を選出することを決定した時期と重なった。

 保守派シンクタンク、ヘリテージ財団のデリック・モーガン上級副会長は、「イノベーションを阻害し、暗号資産のようなイノベーションに対する敵意を助長するSECはもはや必要ない。ポールはSECを、良識のある規制当局に戻し、資本市場を再び偉大なものにするための明確で分かりやすい規制の枠組みを提供するはずだ」と語った。

 トランプ氏は暗号資産・AIの責任者にデービッド・サックス氏を指名した。彼はいわゆる「ペイパルマフィア」の一員で、デジタル決済会社で働き、イーロン・マスク氏やピーター・ティール氏といったトランプ氏支持者グループの一員だ。

 トランプ-バンス政権移行チームのスポークスマン、ブライアン・ヒューズ氏は「デービッド・サックスは、非常に成功した起業家であり投資家であり、米国の競争力の将来にとって極めて重要なAIと暗号通貨について、第2次政権の政策を導くだろう。トランプ大統領のリーダーシップの下で、デービッドはオンライン上の言論の自由を守り、大手ハイテク企業による偏見や検閲からわれわれを遠ざけ、暗号資産産業が米国で繁栄できるよう法的枠組みを整備してくれる」と語った。

 次期政権は、銀行が顧客のビットコインを保有することを許可すべきかどうかを決定し、暗号資産やトークンが証券とみなされるかどうかという重要な問題に決着をつける必要がある。証券には株式、債券、投資契約などが含まれる。

 ビットコイン政策研究所の上級研究員で、オースティン大学の経済学准教授、トーマス・ホーガン氏は、「(問題は)SECが実際の規則をつくることを拒んできたことだ。その理由の一つは、権力を行使することで規制を実行し、これらの企業の多くをいじめることができるようにしたいためだ。暗号資産企業は今、この問題に関する法律がどうなるか、それによってトークンを発行できるようになるのかが明確になるのを待っている。既存の金融企業も、これを気にかけている。法的にどうなるのかがはっきりするまでは暗号資産トークンを保有したくないからだ」と語った。

 トランプ氏が暗号資産を受け入れていることは、投資家が暗号資産を広く受け入れていることを反映している。世界的な投資会社であるブラックロックは最近、投資家に対し、ビットコインをポートフォリオの2%まで増やすことを推奨した。

 ルーサー氏は「現代のポートフォリオ理論は、市場を模倣した分散ポートフォリオでうまくいくことを示唆している。ビットコインの時価総額は世界株式の時価総額の1.5%程度であるため、ビットコインの配分を0%から2%にすることは、ほとんどの投資家にとって妥当な範囲だろう」と指摘した。

 トランプ氏はまた、国家としてビットコインを戦略的に保有することを望んでいる。

 シンシア・ルミス上院議員(共和党、ワイオミング州)は、米国には金証券などの資産があり、時価に換算して売却することでビットコインを取得できると述べた。ルミス氏の「BITCOIN法」は、米国が保有する金準備の規模と範囲を反映し、ビットコインの総供給量の約5%を取得する計画を実施するものだ。

 ルミス氏はニュースリリースで「これは、現代の『ルイジアナ買収』だ。私たちが次の金融フロンティアに到達することにつながる」と述べた。

 だが、誰もがこの案に賛成しているわけではない。よくても無駄、悪くすればドルを不安定化させるという見方もある。

 ビル・クリントン政権で財務長官だったラリー・サマーズ氏は、国家的なビットコイン準備のアイデアは「クレイジー」であり、「不毛な在庫」に過ぎないと言う。

 サマーズ氏はブルームバーグ・テレビに「そんなことをする理由は、気前のいい特別利益団体の選挙資金提供者に迎合する以外にない」と語った。

 ユーロパシフィックファンズのチーフエコノミスト、ピーター・シフ氏は、政府は「ビットコイン準備に実際の価値があるという見せかけを維持する」ためにビットコインを買い続けなければならないかもしれず、連鎖反応を引き起こしてドルに打撃を与えると警告した。

 「最終的には、ビットコインを買うために多くのドルが印刷され、米国はハイパーインフレに見舞われ、ドルは完全に無価値になるだろう」

 しかし、ビットコインの価値を信じる人々にとって、もう後戻りはできない。

 エリック・トランプ氏はアブダビからCNBCに「暗号資産業界の人々は、業界を規制する方法について、誰も賢明な計画をまとめたことがないことに苛立っている。業界は、規制してもいいと考えているが、欲しいのはガイドラインだ。われわれはこれから明確なロードマップを持つ。世界もそれに付いてきてほしいと思っている」と述べた。

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