「無宗派」の台頭 キリスト教徒の間で進む教派離れ
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Church and steeple (Associated Press)
By Emma Ayers – The Washington Times – Wednesday, January 29, 2025
倉庫を教会として利用し、「無宗派」を名乗る福音派が増え、キリスト教徒らはこれが米国のプロテスタントの未来なのかと戸惑っている。
バイオラ大学タルボット神学部リーダーシップ・クリスチャン・ミニストリー学部長で、福音派の「ライフウェイ・リサーチ・グループ」の元代表、エド・ステッツァー氏は、「これが、米国キリスト教徒の間で最大のトレンドになっている。このようなトレンドは大規模な超教派プロテスタント教会、福音主義教会にも浸透しようとしている」
ノースカロライナ州にあるガードナー・ウェッブ大学のスティーブ・ハーモン教授(歴史神学)は、「記録が残っているすべての教派、それもほとんどすべての教派が衰退している」と語った。
米国民の約3分の1はプロテスタントであり、1億4000万人以上がさまざまな教派に所属している。
かつて無宗派という人々はごくわずかだったが、今では米国のプロテスタントのかなりの割合を占めている。調査によると、1970年代初頭には、無宗派と主張する人は3%にも満たなかった。2022年には、この数字は35%近くまで上昇した。
米宗教センサスによると、無宗派の教会は過去10年間で9000近く増加した。
宗教専門家によれば、キリスト教の信者全体の数は近年、減少しているという。ステッツァー氏は、この2つの統計には強い相関関係があると述べた。
「実践的なキリスト教徒の割合は減少しているが、残っている人々は、より真剣に信仰を表現する傾向がある。数が減れば減るほど、その強度は増す」
「特に(1980年代前半から1990年代半ばまでに生まれた)ミレニアル世代と(1990年代中盤以降に生まれた)Z世代のキリスト教徒は、宗教的であることが時に代償を伴う文化的背景に直面しながらも、それを乗り越え、より大きなコミットメントの兆しを見せている」
「真剣に信仰していることを表現する」手段としては、こうした教会でよく使われるフォグマシン(煙霧機)やドラム、賛美チームは含まれないかもしれないが、これらが若い会員を効果的に引きつけている。
ハーモン氏は、若者は単に親の期待に従うのではなく、自分に合った教会を見つけることに真剣に取り組むようになったと語った。
かつては教派や神学が信仰を決定するのに役立ったが、最近の傾向では、自分に合った社交の場や楽しい典礼を見つけることに重点を置いている、と専門家は言う。
ハーモン氏は「若い福音派キリスト教徒らは、福音派の伝統に不満を感じ、歴史的に定着してきた典礼を通じて歴史的につながる感覚を見いだそうとしている。若い人たちの間で、そのようなところが魅力になっている」と語った。
「しかし同時に、プロテスタントでは特定の教派への愛着が少なくなっている。ある教会の伝統の中で育った人が、さまざまな教会に属するようになっている可能性がある。その中には無宗派という形もありうる」
孤独が無宗派の動きの大きな原動力になっている可能性がある。2023年5月、ビベク・マーシー公衆衛生局長官は孤独を公衆衛生上の疫病と宣言した。2024年初めまでに、米国精神医学会の「健康な心に関する月例世論調査」で、成人の30%が前年1年間に少なくとも毎週孤独を感じ、10%が毎日孤独を感じていることが明らかになった。
18歳から34歳では、その割合はさらに高くなり、ほぼ3分の1が、毎日または週に数回孤独を感じると答えている。独身者は、既婚者の22%に対し、39%が毎週孤独を感じていた。
ハーモン氏は、「このような理由から、若い成人のキリスト教徒は、おそらく真に助け合える本物の共同体を探しているのだろう」と述べた。
教派の衰退
伝統的な教派は、無宗派が成長するにつれて衰退している。
合同メソジスト教会の会員数は、1960年代後半には1100万人であったが、現在では500万人以下に激減している。イースタン・イリノイ大学の政治学准教授で宗教統計学者のライアン・バージ氏がまとめたデータによると、エピスコパル教会の「グッド・サンデー」の出席者は、現在40万人に過ぎない。
このような傾向は、主流派の教派に限らない。ほとんどの福音派も、若い世代がより柔軟で、ヒエラルキーによらない信仰表現を求めるようになり、停滞している。
ハーモン氏は「教派によって教会であることの意味を理解する方法が異なり、それが他のキリスト教徒との団結を阻む障壁になっているとみられている。超教派教会はさまざまな伝統を自由に取り入れている。これは受容的エキュメニズムと呼ばれるもので、すなわち、それぞれの伝統はその歴史的な歩みによって形成された独自の賜物を持っており、それはより広いキリスト教共同体全体で共有され、受け取ることができるという認識を反映したものだ」
文化的・制度的要因
ステッツァー氏の言う、米国の宗教に影響を与える全国的な「雰囲気の変化」を含め、無宗派の急増にはいくつかの要因がある。
ステッツァー氏は、「(所属する教会がない)人々の増加は、実はここ2、3年で一服している。例えば、Z世代の若い男性は、Z世代の女性よりも高いレベルで教会に行っている。これは米国史上初めてのことだ」と言う。
アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のアメリカン・ライフ・サーベイ・センターが昨年行った調査によると、Z世代では、男性の34%、女性の40%近くが所属なしと回答している。
長年バプテスト派の牧師を務めてきたバージ氏は、コミュニティー志向は特に若い男性にとって魅力的だと語る。彼の教会が閉鎖されたのは、この先の無宗派教会が発展したためでもあるという。
「リベラルな主流派の教会が、衰退する傾向にある。非主流派がうまくいっているのは、教会を生活の中心にするからだと思う」
「ほとんど毎日、活動している。老若男女、あらゆる年齢層のための活動がある。彼らは、友達みんなを教会のメンバーにして、親も子供も教会に通い、ある種の島国的なコミュニティーを作ることを望んでいる」
バージ氏は若い男性が特に、自分の人生にそのような活動の場を求めていると言う。
バージ氏はワシントン・タイムズに「若い人たちにとって、一般的に言って、人生のあらゆることがかなりスムーズに進んでいるのだと思う。彼らにとってかなり簡単だと思う。特に、大学に行って、いい仕事に就き、あらゆることが順調なら、つまりアメリカン・ドリームのようなものを手に入れられれば、困難を経験することはあまりない」と述べた。
「彼らにとっては、毎日体を鍛えたいとか、重量挙げの選手になりたいとか、マラソンランナーになりたいとか、『結婚前にセックスをしてはいけない』『収入の10%を寄付すべきだ』という厳しい宗教的伝統の一部になりたいとか、そういうことかもしれない」
このような変化は、若い男性がますます保守的になる一方で、若い女性がリベラルに傾くという、より広範な社会政治的傾向と一致している。
ビオラ大学教授のステッツァー氏は、聖書の売り上げが予想外に急増していることを指摘し、特定の層の間で聖書への関心が再び高まっていることを示した。「すべては変革の一部だ」
宗教が世俗の波にもまれる中で、米国は、宗教が衰退している西洋世界の他の地域よりも宗教的に一貫していることが判明した。
ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストで『信じる:なぜ、誰もが宗教的であるべきなのか(Believe: Why Everyone
Should Be Religious)」の著者、ロス・ドゥーサット氏は、昨年のセミナーで「それによって米国は、西欧、東アジアなどの先進国よりもかなり宗教的に強靭になった」と語った。
個人主義への文化的シフトによって、米国民は、社会を支配し、虐待スキャンダルや資金の不正流用など、不信の原因となる不正に揺れる硬直した組織と協調することを好まなくなっている、と研究者らは述べている。
2022年、1300万人近い会員を擁する全米最大のプロテスタント教派である南部バプテスト連盟(SBC)は、性的虐待スキャンダルに揺れた。SBCが最近発表した205ページに及ぶ報告書には、児童への性的虐待で告発されたり有罪判決を受けたりした数百人のバプテスト教会の指導者や会員の名前が挙げられている。ある元幹部は、これを
「南部バプテストの黙示録 」と呼んだ。
バプテスト・ニュースは昨年、「宗派として、(南部バプテスト連盟は)20年間、統計的に自由落下状態にある」と報じた。
専門家の中には、超教派のキリスト教の成長は、より広範な文化的傾向である分散化を反映していると言う者もいる。彼らは、共和党内でトランプ大統領が草の根的に台頭していることとの類似点を示し、どちらの動きもリーダーシップと組織に対するボトムアップのアプローチを反映していることを示唆している。
研究者であり元牧師のバージ氏は、独立教会での腐敗の浸透は教会自体に限定されると述べた。
「無宗派の教会では、組織だけでなく、精神性が問題となる。『宗教ではない、人間関係だ』というスローガンを聞いたことがあるだろう。そのような言葉は、無宗派の教会では一般的なもので、組織に失望させられたと感じている若者たちにアピールする」
バージ氏は、10年以上率いた教会を始めたとき、自分のカードはすべてテーブルの上にあり、隠すことは何もなかったと語った。
「神が私を呼んで、週に1度、8組の家族に自宅の地下室で聖書の勉強をさせた。私は聖職に就いたわけでも、免許を得たわけでもなく、どこかの階層から許可を与えられたわけでもない。私は神から許可を与えられた。神が私をここまで導いてくれた。そういう言葉は、特に今の若い人たちにとって、とても魅力的だと思う。反体制的であるからこそ、うまくいっている」
アメリカ・プロテスタンティズムの未来
宗教的な状況が進化するにつれ、伝統的な教派は終焉を迎えたわけではなく、生き残るためにアプローチを変えなければならないとハーモン氏は言う。
「教派が今後も増え続けるかどうかは分からない。神学教育であれ、宣教活動であれ、キリスト教教育プログラムであれ、他の同じような教会の伝統と力を合わせ、資源を共有し必要性を見いだすかもしれない」
このビジョンは、衰退しつつある教派が互いに協力し、資源を共有することが、組織化された宗教を再構築する可能性を指し示している。このような適応性は、急速に変化する社会の中で宗教団体が適切な存在であり続けようとする際に、非常に重要であることが分かるだろう。
バージ氏は、教派教会は、無宗派の信徒を支えてきた共同体主義的戦略について考えるべきだと述べた。
「伝道はほとんど失敗している。データによれば、ほとんどの努力は長期的な改宗をほとんどもたらさない。その代わりに、別のアプローチを試してみてはどうだろう。『今週末にある親睦会で一緒に遊ぼう』と言うだけだ」
バージ氏は、教会に通うのは神学や救いのためではないこともあると言う。
「孤独のかゆみを掻きむしり、人々が共同体を見いだす手助けをすることだ。信者席に座っている人たちは、イエスという存在についてはよく分からないかもしれないが、友達がここにいて、その人たちと一緒にいるのが楽しいからここにいる。それこそが意味があることだ。それが彼らをそこにとどまらせているのだ」