不透明な宇宙政策の将来 宇宙評議会が閉鎖か

(2025年2月18日)

2020年12月9日(水)、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターで開催された第8回国家宇宙協議会で発言するマイク・ペンス副大統領(中央下、当時)(AP Photo/John Raoux)

By Vaughn Cockayne – The Washington Times – Friday, February 14, 2025

 トランプ大統領が連邦支出削減の動きを見せる中、米国の宇宙政策をつかさどってきた国家宇宙評議会を閉鎖する可能性が指摘されている。

 同評議会は宇宙政策指針の作成を支援し、国家安全保障と商業宇宙での米国の宇宙活動に大きく関与してきた。評議会の議長は副大統領が務める。

 トランプ氏は、1992年にクリントン大統領によって解散させられた評議会を2017年に復活させた。マイク・ペンス元副大統領の指揮の下、評議会はトランプ氏の最初の任期中に8回開催され、宇宙政策や月探査のための国際「アルテミス協定」の策定を支援した。

 バイデン政権は、カマラ・ハリス副大統領の指揮の下、わずか3回しか会議を開かなかったため、評議会とは比較的関係が薄かった。

 トランプ氏は2期目の就任演説で、宇宙への関心を示したが、評議会を復活させるかどうかは確認していない。新政権が、宇宙評議会は米国の宇宙支配の邪魔をする不必要な官僚組織だと考え、評議会を廃止するのではないかと指摘する専門家もいる。

 シンクタンク「国立抑止研究所」の宇宙専門家クリストファー・ストーン氏は、「宇宙評議会は、問題を十分に検討するための政策審議機関という意味合いが強い。しかし、われわれはすでにいくつかの宇宙政策と戦略文書を持っている。多くの新政権がそうであるように、1万8000回目の車輪の再発明はやめよう」と述べた。

 実際、第1次トランプ政権は、米宇宙軍の設置を含む7つの宇宙政策指令を策定した。ストーン氏は、トランプ政権が宇宙評議会の指令に従うことで、宇宙政策を迅速に進めることができたとみている。

 ストーン氏は、「さらに半年から1年待って、同じ問題がまだ残っていることを発見するよりも、以前の評議会と国家安全保障会議が協力してすでにまとめたものを参考にし、それを実行に移せば、時間と労力を大幅に節約できるのではないか。そうすることで、官僚層を増やして議論を停滞させるのを防ぐことができる」と言う。

 しかし、宇宙評議会を廃止すれば、航空宇宙技術に投資している規制機関の間で問題が生じる可能性がある。評議会は、ホワイトハウスとそれらの機関の重要な仲介役となり、権限に関する問題をスムーズに解決する手助けをすることができるからだ。

 シンクタンク、テックフリーダムの顧問弁護士、ジェームズ・ダンスタン氏は、「国家宇宙評議会ができることは、すべての機関との間で調整し、議会から法的権限を得ているかどうかを判断する手助けをすることだ。そうでない場合は、あなた方は法的権限を有していないようなので、このような規則を採用すべきではないと助言できる」と述べた。

 法的な明確化を評議会が支援することで、ホワイトハウスの規制に関する行政措置に対する訴訟が迅速化される可能性がある。

 「このような訴訟の弁護に費やされる時間と労力は膨大なものだ。それを支援する方法はあるのだろうか。問題は、宇宙に関する権限や規制に関する裁判に2年もかかるのを待てるのかどうかということだ。行政機関はどうすれば処理を早められるのか。ここで、国家宇宙評議会が重要な役割を果たせるはずだ」

 問題を複雑にしているのは、スペースX社のイーロン・マスクCEOの存在だ。マスク氏は以前から連邦航空局(FAA)などの連邦政府機関の規制監督に批判的であり、宇宙評議会の削減を政府効率化省(DOGE)の特権とみなす可能性がある。

 マスク氏はホワイトハウスで、米国の宇宙政策に影響力を持ちすぎているのではないかという懸念が一部で指摘されている。宇宙評議会の位置を再確認することは、その懸念を和らげるのに役立つだろう。

 ダンスタン氏は「イーロン・マスク氏によって、宇宙はこの国の最新の文化戦争の場となった。このようなことは初めてだ。憂慮すべきことだ。だが、それが現状だ。だから、宇宙評議会が存在し、人々が『トランプはマスクに宇宙を任せきりにしている』と指摘することが、長期的には米国にとって全体的な利益になるのだと思う」と述べた。

 先月、トランプ政権は航空宇宙への明確な関心を示した。トランプ氏は就任演説で将来の火星旅行について言及したほか、防空網「米国版アイアンドーム」を建設する大統領令に署名し、国際宇宙ステーションに取り残された2人の米国人宇宙飛行士の帰還を早めるようマスク氏に命じた。

 業界関係者によれば、宇宙評議会は米国の宇宙政策を明確にし、宇宙での優位性を維持するために不可欠なものであるという。

 非営利団体「宇宙軍協会」は、「われわれは、宇宙での米国の利益を促進するためには、省庁間の協力とハイレベルの戦略的指針が不可欠であると強く信じている。国家宇宙評議会は、宇宙領域で急速に変化する課題や機会に対処する能力を維持すべきだ。もし(この取り組みが)続けられるなら、国家宇宙評議会は、関係者の役割や責任範囲をはっきり決め、宇宙関連のビジネスや軍事分野の関係者が納得し、協力できるようにする必要がある」

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