トランプ政権の教育再編で対応に追われる大学

2019年5月18日土曜日、オハイオ州コロンバスで、歩行者がオハイオ州立大学の学生会館へ向かって歩いている。(AP通信/ジョン・ミンチロ、ファイル写真)
By Sean Salai – The Washington Times – Monday, September 22, 2025
米国内の大学は、秋学期が本格的に始まる中、トランプ政権の高等教育改革に対応しようと躍起になっているが、関係者の多くは失敗すると予想している。
高等教育業界誌「インサイド・ハイアー・エド」と市場分析会社「ハノーバー・リサーチ」が先週発表した全国調査によると、478の大学の教務担当副学長のうち56%が、トランプ大統領が1月に復帰してからの6カ月間で、連邦政府からの資金援助が減少したと報告している。
これらの資金削減と、トランプ政権による大学内の左派イデオロギーへの取り締まりは、高等教育にとって厳しい1年となることを示唆している。学生は、バイデン政権下の1年前と比べて、空室になったオフィスや、多様性推進プログラムの減少を目の当たりにすることになる。
元私立大学の運営者で、大学の財務健全性を評価する「カレッジ・バイアビリティー」を設立したゲイリー・ストッカー氏は、「連邦政府の政策変更は、高等教育市場にとって新たな重荷となる。今は統合の時期だ。今のところ閉鎖という形で表れ、数年後には合併という形になるだろう」と述べた。
最近の報道によると、トランプ氏が「過激な左翼」的な大学の活動から連邦政府の資金を引き揚げる動きは、高等教育が、減少する学生数と急速に変化する雇用情勢に対応するために「適正規模化」する傾向を加速させる可能性がある。
高等教育戦略コンサルティング会社「ヒューロン・コンサルティング・グループ」は、米国内に約1700校ある私立非営利大学のうち、今後10年間で370校が閉鎖または合併すると推定している。これは、米国の出生率の低下を反映している。
米国立教育統計センターは、2020年秋までの10年間に114の私立非営利の2年制・4年制大学が閉鎖されたと報告しており、ヒューロンのこの予測はその3倍以上にあたる。
大学の新設に関する同様の集計はないが、同じ期間に私立大学全体の数は減少した。
オハイオ州立大学のマシュー・メイヒュー教授(教育行政学)は、トランプ政権による変更について、「今後数年間で、さらに多くの大学閉鎖が見られるだろう。閉鎖を免れた大学でも、多くの学部学科や課外活動がなくなるだろう」と述べた。
トランプ氏による最近の予算削減は、人種に基づく優遇措置、性自認プログラム、反イスラエル抗議活動、外国人学生の受け入れ措置、不法移民への州からの学費、低賃金につながる学位への連邦学生援助を対象としている。
これに対し、大学側は職員の解雇、人文学部の削減、新規採用の凍結、多様性プログラムの名称変更や廃止で対応している。
ホワイトハウスの報道官リズ・ヒューストン氏は電子メールで、「トランプ大統領が望んでいるのは、米国の大学に常識が戻ることだけだ。だからこそ、大統領はわが国のエリート大学に説明責任を求め、公正さ、実力主義、米国の価値観を優先させるようにしている」と述べた。
ヒューストン氏はさらに、「トランプ大統領は、嫌がらせからすべての学生を守り、安全で差別のないキャンパスを徹底し、真の学術的優秀性を促進し、女性スポーツから男性を締め出すことに尽力している」と述べた。
雰囲気の変化
ワシントン・タイムズの取材に応じた複数の大学関係者は、連邦政府の研究助成金削減やその他の教育政策変更により、法廷闘争で一部の取り組みは遅れているものの、今学期は雰囲気が一変したと語った。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のエコノミスト、ディック・スターツ氏は、「現在、学生が目にしているのは、キャンパス内の研究室の仕事がなくなることや、今年の理系大学院への入学が非常に厳しくなることだろう。もちろん、政権が提案しているすべての削減を実行すれば、多くの大学が深刻な財政危機に陥り、多くの科学の発展にブレーキがかかるだろう」と述べた。
ノースカロライナ大学グリーンズボロ校のニール・クシェトリ教授(経営管理学)は、ノースカロライナ大学システムの16のキャンパスは、新しい連邦政策に「迅速に対応している」と語った。
クシェトリ氏は「最も目に見える変化は、一般教養での多様性と公平性の要件の削除または名称変更、専攻別のコースでのDEI(多様性、公平性、包括性)の内容の監査、少数の講座の改訂または停止だ」と述べた。
教育省は最近、人工知能(AI)を連邦政府の新たな資金援助の優先事項と宣言し、人種に基づく入学や教職員採用に対する新たな禁止措置を回避している数十の大学を調査している。
保守系団体「全米学者協会」のピーター・ウッド会長は、教育省が、高収入の技術職と結びついた職業訓練を優先する方針は、長年にわたり人種に基づく優遇措置を推進してきた、入学者数の少ない英文学や歴史などの一般教養系の学部の終焉を早める可能性が高いと語る。
ボストン大学の元副学長補佐でもあるウッド氏は、「人文科学や一般教養から離れていく大学が増えるだろう。ただし、これは一般教養を職業スキルや実践的な応用に再定義することで、一部は緩和されるだろう。そのため、今年の新入生のカリキュラムの選択肢は、過去数年よりも減り、恐らく無意味な授業やあからさまに政治的な授業は排除されていくだろう」と述べた。
一部の関係者はまた、物議を醸す講演者に対する反発が高まり、ユタ州の大学で保守活動家のチャーリー・カーク氏が暗殺されたことで、暴力への懸念が増していることを指摘した。
学生の言論の自由を擁護する団体「個人の権利と表現のための財団」が今月発表した、トップ257大学の学部生6万8510人を対象にした調査によると、3人に1人の学生が、一定の条件の下では、キャンパス内での講演者を阻止するために暴力を用いることを支持した。この数字は過去最高だという。
カリフォルニア州を拠点とする非営利コンサルタントで、ペパーダイン大学の元副学長マイケル・ワーダー氏は、「キャンパスでのチャーリー・カーク氏暗殺を受けて、大統領は、連邦法執行機関のさまざまな機関を利用して、キャンパスでの暴力を鎮圧するためにより積極的に動くだろう」と語る。
一方で、一部の大学は、トランプ政権による不法移民の流入経路への取り締まりや、ガザでの戦争に関連した学内抗議活動の影響で、留学生の数が減少したと報告している。
フロリダ州統一教員組合フロリダ大学支部の支部長で、終身在職権を持つミーラ・シタラム教授(コンピューター科学)は、「入国管理・税関執行局(ICE)が大学警察と協力して外国人学生や専門家を襲撃、つまり誘拐する行為は、今後に深刻な影響をもたらすだろう」と語った
未来
高等教育アナリストらは、長年の学術的傾向を破壊しようとするトランプ政権のキャンペーンは、今後何年にもわたって学界のあり方を変える可能性があると語る。
富の不平等が専門のシカゴ大学のエコノミスト、スティーブン・ダーラフ氏は、外国人学生の減少や気候変動研究への連邦資金削減は始まりにすぎないと語る。
「歴史的に過小評価されてきたグループへの財政援助を打ち切ったり、彼らへの支援を禁止しようとしたりすれば、学生の構成を悪化させる。民族や性別による不平等は事実であり、真の実力主義者が、これらの不平等のために才能が発揮できなくなってしまう可能性がある場合に、その才能を発掘する努力を支持すべきだ」
地方の一般教養大学や私立大学は、政権の新たな成果重視の学生援助政策に最も苦戦するだろうが、どの大学が生き残るかはまだ分からない。
全米学生資金援助管理者協会のメラニー・ストーリー社長兼CEOは「大学の対応は、より明確な情報を求め、確信をもって実施できるようにするため、さまざまだろう。高等教育機関が変化に緩慢なのは、そのシステム自体が非常に複雑だからだ」と述べた。
ニューヨーク市を拠点とする個別指導・大学入学サービス会社「カレッジ・コミット」の創設者ダン・ゴドリン氏は、すでに、大学の閉鎖の加速に対応するよう家族に助言し始めていると語る。
ゴドリン氏は、「一世代前には、子供が卒業する前に大学が閉鎖する可能性があるかと尋ねる親はほとんどいなかった。今では、小規模な地域の学校について話す時はまず聞かれる質問の一つだ。この意識の変化は、大学がどれほど大きなプレッシャーにさらされており、どれほど緊急に適応する必要があるかを示している」と述べた。