インド太平洋軍司令官、中国の脅威を警告 戦力強化へ新規兵器に1220億ドル要求

(2026年6月19日)
2024年4月23日火曜日、中国東部山東省青島市で中国人民解放軍海軍創設75周年を記念する一般公開日の終わりにミサイル駆逐艦「貴陽」の近くに夕日が沈む。(AP通信/ン・ハン・グアン)

2024年4月23日火曜日、中国東部山東省青島市で中国人民解放軍海軍創設75周年を記念する一般公開日の終わりにミサイル駆逐艦「貴陽」の近くに夕日が沈む。(AP通信/ン・ハン・グアン)

By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, June 16, 2026

 インド太平洋軍の司令官は、中国との戦争の危険性が高まっており、紛争を抑止するため米軍は新たな兵器や能力を早急に整備する必要があると議会に警告した。ワシントン・タイムズが入手した議会向け報告書で明らかになった。

 米西海岸からインドまでを担当地域とするインド太平洋軍のトップ、サミュエル・パパロ司令官は議会に対し、新型ミサイル導入のため674億ドル、中国軍の指揮統制システムに対抗するため180億ドル、宇宙配備型ミサイル警戒システムと戦場監視センサー向け150億ドル、海上・水中・地上配備型無人兵器向け23億ドルの予算承認を求めた。

 この報告書は、2021会計年度の国防権限法で初めて義務付けられ、その後毎年実施されている「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」に基づく独立した軍事評価だ。

 インド太平洋軍と国防総省は、これまでの年次評価を公表していない。

 ワシントン・タイムズは4月6日付の最新報告書を入手した。

 インド太平洋軍の報道担当者は報告書についてコメントを控えた。

 報告書には兵器調達計画の詳細が盛り込まれており、依然として機密扱いのシステムや開発中の装備、最近になって存在が明らかになった高度電子戦装置や極超音速ミサイルなどが含まれている。

 報告書は機密指定されていない要約版で、2027会計年度国防予算法案策定の指針として議会向けに作成された。

 国防総省は現在、裁量予算1兆1000億ドルと義務的支出3500億ドルを合わせた総額1兆4500億ドルを要求している。

 上下両院の議員らは現在、国防関連法案の策定を進めている。

 パパロ氏は221ページに及ぶ報告書で、「インド太平洋地域の安全保障環境は一段と厳しくなっており、対立や危機のリスクが増大している」と指摘した。報告書は、この地域で必要な兵器、通信・スパイシステム、訓練計画、軍事施設について概説している。

 同氏は「中国の積極的な軍近代化、領土拡張、ロシアや北朝鮮との関係強化は、ますます複雑化する安全保障環境の中で重大な課題となっている」と述べた。

 報告書によると、中国軍は全軍種にわたる包括的な「歴史的拡張」を進めており、台湾併合と米国および同盟国の防衛能力への対抗という2つの主要任務に向けた訓練を実施している。

 また、中国軍は2027年までに民主主義体制の台湾に対する軍事行動を実施できる態勢を整えるよう命じられているとし、他の軍幹部らと同様、将来的な台湾侵攻の危険性について改めて警告した。

 報告書はさらに、国防総省が、西太平洋にあり、軍事拠点になっている米領グアムに攻撃用ミサイルを配備する計画を進めていることも明らかにした。ここでは現在、大規模な統合ミサイル防空システムの設置が進められている。

 パパロ氏は、総額45億ドルの「太平洋本土防衛戦略」計画の一環として、中国の弾道ミサイル、極超音速ミサイル、巡航ミサイルに対抗できるグアム防衛システム向けに9億900万ドルを要求した。

 同氏は、この防衛システムが将来的な攻撃能力の基盤にもなると述べた。詳細は機密度の高い特別アクセス計画(SAP)に含まれており、報告書には記載されていない。

 現在の陸軍計画を基に、有力候補として射程1200マイル(約1930キロ)のトマホーク巡航ミサイルを発射できる「タイフォン中距離打撃システム」や、最大1700マイル(約2740キロ)の射程を持つ極超音速兵器「ダークイーグル」が挙げられている。

 いずれのミサイルもグアムから中国本土を攻撃可能だ。

 中国国営メディアは、中国軍の中距離弾道ミサイル「東風26(DF26)」がグアムを攻撃可能で、「グアムキラー」や「グアムエクスプレス」と呼ばれていることを公然と誇示してきた。

 米国防情報局(DIA)は2024年10月、中国がDF26戦力を拡大していると明らかにした。

 インド太平洋軍は高価な精密誘導ミサイルに加え、比較的低価格の巡航ミサイルや低コストの極超音速ミサイル「ブラックビアード」の配備も求めている。

 報告書はブラックビアードについて、「長射程の低コスト極超音速攻撃ミサイルであり、高度な極超音速兵器が持つ能力の約80%を、はるかに低いコストで実現する」と説明している。

 また、ブラックビアードなどの極超音速ミサイルは「敵の統合防空網を圧倒し、敵の標的選定を困難にし、統合軍の作戦能力を向上させる」としている。

 パパロ氏は、中国の戦略は軍事力による威嚇にとどまらないと指摘した。中国は「グレーゾーン活動」と呼ばれる法律戦、経済的威圧、情報戦も展開しており、それらは地域の同盟国やパートナー国に大きな圧力になっているという。

 また、国防総省の最新予算要求について「国土防衛と中国の誤った戦略の打破に必要な速度と規模でこれらの要件に対応する、画期的な資源配分の転換だ」と評価した。

 パパロ氏による中国脅威分析は、最近のトランプ政権による対中融和姿勢とは著しい対照をなしている。

 トランプ大統領の新方針の下で、米中両国は5月に「建設的で戦略的に安定した関係」を築くと発表した。

 米国は貿易関係改善や非機密分野での協力拡大を目指す一方、大規模ハッキングや技術窃取、フェンタニル取引支援など中国の有害な活動には引き続き対処する方針だ。

 しかし米政権が、中国のレアアース(希土類)の輸出規制などを巡って、関係改善に意欲的に取り組んでいる一方で中国側は、こうした新たな関係を、自国の影響力拡大と中国式社会主義の世界的拡大が認められたものと受け止めている。

 パパロ氏は、2027会計年度予算として要求した総額1220億ドルについて、「抑止力を維持し、抑止が失敗した場合に勝利するための最低限必要な投資だ」と述べた。

 予算要求の中で最大の項目はミサイル関連で、中国の防衛網を突破できる新型極超音速ミサイルを含む巡航ミサイルや弾道ミサイルの調達が盛り込まれている。

 パパロ氏は最近の上院公聴会で、優先的に増産すべき兵器としてMk48重魚雷、射程延長型空対地スタンド・オフ・ミサイル(JASSM-ER)、長距離対艦ミサイル「LRASM」、海上打撃型トマホーク(MST)巡航ミサイル、精密打撃ミサイル(PrSM)、SM3およびSM6迎撃ミサイルを挙げた。

 同軍の最重要課題の1つは、中国軍の指揮・統制・通信・コンピューター・サイバー・情報・監視・偵察・照準能力、いわゆる「C5ISRT」への対処だ。

 インド太平洋軍は、「短期的宇宙支配能力」に180億ドル超の予算を要求している。これは「多領域にわたる脅威や敵対勢力への対応を可能にする」兵器などの能力と説明されている。

 報告書によると、宇宙兵器については「特別な宇宙活動」とだけ記されており、これは国防総省のSAPに盛り込まれている。SAPは政府内でも最も機密性の高い計画の1つであり、敵対国にその内容を知られないよう、極めて厳格な安全保障措置が講じられている。

 パパロ氏は、この対指揮統制能力強化によってインド太平洋地域で「意思決定上の優位」を維持できると述べた。

 さらに、敵の作戦立案を困難にする無人航空機、水上・水中無人システムの導入も優先事項としている。これは同氏が以前から提唱してきた「地獄絵図(ヘルスケープ)戦略」に関連するものだ。

 この戦略は、台湾や地域の同盟国に対する中国軍の攻撃を阻止または撃退するため、数千機の低コスト無人機を展開する構想だ。

 報告書はまた、新型トマホーク巡航ミサイルなど重要弾薬の増強や、中国沿岸に南北に連なる第1列島線、第2列島線の軍事拠点強化も優先事項として挙げた。第2列島線は日本からマリアナ諸島、グアム、パラオに至る西太平洋の島々を結んでいる。

 同盟国との合同演習や新たな基地整備への資金投入も重要課題だとしている。

 パパロ氏は、「これらの要件はリスクを軽減し、エスカレーションを回避し、戦闘能力を向上させ、統合軍が敵よりも早く状況を把握し、理解し、判断し、行動できるようにするためのものだ」と述べた。

 また、新たな兵器やシステムは「拒否による抑止」を実現し、政権の国家防衛戦略を支えるために必要な運動エネルギー兵器・非運動エネルギー兵器双方の不足を補うと説明した。

 報告書の別の項目では、先進誘導弾システム「クイックシンク」導入のため4億5300万ドルを要求している。これは、空軍の通常精密誘導爆弾JDAMを改良したものだ。

 クイックシンクは、航空機から投下する爆弾に魚雷のような攻撃能力を付与し、「喫水線下で爆発して艦船の船体を破壊する低コスト全天候型対艦兵器」と説明されている。

 この精密爆弾は、数的に優位に立つ中国海軍艦艇への対抗に使用される。

 報告書は、「クイックシンクが導入されれば、インド太平洋軍は拡張性のある対水上戦能力を獲得し、水上脅威への迅速な航空攻撃、兵器運用の柔軟性向上、数で勝る敵艦隊に対抗するための費用対効果の高い戦力を得られる」と説明している。

 また同軍は、「クイックストライク」と呼ばれる新型高性能機雷向けに5億3100万ドルを要求している。報告書ではこれを「浅海域で水上・水中目標に対して使用する航空機投下型機雷群」と説明している。

 同じ予算項目には、現在の潜水艦発射型機雷を基にした「秘匿敷設機雷」の調達も含まれている。この機雷は艦艇や潜水艦、無人機によって敷設される。

 さらに同軍は、高度な遠隔操作機能とセンサーを備えた改良型「ハンマーヘッド機雷」の導入も計画している。この機雷は軽量魚雷を用いて艦艇や潜水艦を識別、探知、撃破する能力を持つ。

 報告書は、これらの機雷について「水中脅威への対抗、海上防衛の強化、侵略抑止、重要海上交通路に対する戦略的支配の維持において極めて重要な役割を果たす」と指摘している。

 機雷戦は、中国による台湾侵攻に対する防衛においても重要な役割を担うことになる。

 また同軍は、ハワイに新たな先進製造システムを新設する計画だ。このシステムは補修部品の製造や重要部品の生産、迅速な試作開発、装備改修を支援する。

 報告書によると、新たな予算のうち約30億ドルは、ハワイやグアム、ウェーク島、パラオ、テニアン島、ヤップ島など太平洋の島々での重要インフラ整備に充てられる。

 日本については、大型無人潜水艇とその搭載兵器を運用する基地建設のため5000万ドルの支出を求めている。

 意思決定能力を強化する軍事用人工知能(AI)については、1億700万ドルを要求している。報告書は、この先進能力によって「指揮官や作戦立案担当者、幕僚らが膨大なデータを迅速に分析し、実行可能な知見へと変換できるようになる」と説明している。

 AI関連事業は、計算能力の向上、モデルの実装、人員訓練に重点を置く。

 報告書は、軍事力強化、兵站能力向上、訓練・演習の実施、同盟国との防衛協力強化、インド太平洋軍システムの近代化という5つの分野で構成されている。

 パパロ氏は、現行のエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)の抑制的な防衛戦略を踏まえ、中国による領土拡張や威圧を第1列島線で阻止するため、「拒否的防衛」を実施しているとしている。

 同氏は、この拒否的防衛は戦争の性質そのものが変化していることを前提としており、それに対応するため同軍は急速な適応を進めていると説明した。

 また、軍事情報能力の向上、無人機戦の拡大、突破力を持つ精密打撃ミサイルの増強などによって、米軍は世界最強の軍事力であり続けるため「変化を受け入れなければならない」と強調した。

 パパロ氏は「われわれの手法は拒否的抑止であり、過度に挑発することなく、揺るぎない自信を持って敵の計画を先手先手で阻止する。そのために情報戦を非常に重要な戦いの一環として組み込み、さらに同盟国などと緊密に連携した、いつでも戦える強力な部隊を見せることで、圧倒的な実力の差を見せつけていく」と訴えている。

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