中国人技術者、ミサイル技術窃取で逮捕
By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, February 8, 2024
カリフォルニア州の連邦捜査局(FBI)捜査官は今週、中国人技術者をスパイ容疑で逮捕し、ミサイル発射を探知するための高度なセンサーに関する機密情報を含む約3600本のファイルを防衛請負企業から盗み出したとして起訴した。
サンノゼ在住の●(龍の下に共)晨光(Gong
Chenguang、ゴン・チェンガン)容疑者(57)は、ロサンゼルスの連邦検察当局によって、中国の「人材獲得」プログラムの一端を担った容疑で起訴された。この計画によって中国は組織的に、高度な技術を入手できる米国在住の科学者や技術者をリクルートし、米国の技術を手に入れることを目指している。
逮捕状を請求するために使用されたFBIの供述書によると、ゴン氏は、帰化米国人で、2023年1月にマリブの防衛請負企業に雇用されていた。
盗み出された技術は「数億㌦」に相当し、外国政府が入手すれば「米国の国家安全保障を危うくする」と供述書は述べている。広報担当者は、この企業がHRLラボラトリーズであることを明らかにした。
供述書によると同社は、「高度な赤外線センサー技術を開発しており、これらの技術は、核ミサイルの発射を探知し、弾道ミサイルや極超音速ミサイルを追跡するためのシステムなど、さまざまな宇宙ベースおよび軍事ミッションでの使用を目的としている」という。
検察当局によると、ゴン氏は3、4月に企業秘密が記載されたファイルを提供したという。また、人材獲得プログラムの一環として中国に数回渡航していた。
ファイルの一部には「高ダイナミックレンジと飛行時間(ToF)機能を組み合わせ、視界の悪い環境でも飛来する脅威を追跡できる」集積回路の開発に関する情報が含まれていたと訴状には書かれている。
ミサイル発射の探知や極超音速ミサイルの追跡に使われる高感度、広視野、指揮統制機能を備え、宇宙空間での放射線に対する耐性を強化する集積回路のファイルも含まれていた。
米国防総省は極超音速ミサイルの開発に取り組んでおり、攻撃ミサイルと極超音速ミサイル攻撃に対する防御の両方を開発している。もし中国がこの技術を手に入れれば、極超音速ミサイルが米国の防御をかわすのに役立つはずだ。
第3の回路は、宇宙空間で活動しながら「発見しにくい目標を探知」するために開発されたものだった。
訴状には「これらのファイルには、これらの技術の方法、設計、手法、プロセス、仕様、テスト、製造に関する記述があり、(HRL社の)競合他社が入手すれば経済的に極めて大きな損害を受け、国際的な関係者が入手すれば米国の国家安全保障にとって脅威となる」と書かれている。
同社は4月にゴン氏によるコンピューター操作を検知し、それがファイル持ち出しの発見につながり、ゴン氏の解雇につながった。FBIの訴状には、ファイルが中国に提供されたかどうかは書かれていない。
FBIの捜査官は、ゴン氏が中国の人材募集計画に数回応募していたことを突き止めている。
中国共産党政府は、国内の研究インフラを整備し、海外で活躍する中国生まれの学者や研究者を国内に呼び込むための「千人計画」を実行してきた。司法省は2018年からこの計画を監視し、機密技術を中国に提供した疑いのある数人を起訴した。
ワシントン・タイムズは昨年11月、中国が14億㌦以上を投じて新たな人材獲得プログラムを設置、ロスアラモス国立研究所の元科学者がこのプログラムを運営していたと報じた。
2014~2022年まで、ゴン氏は中国の人材獲得プログラムへの参加申請を数回提出していた。
訴状には「その期間中、(ゴン氏は)米国の大手ハイテク企業数社と世界最大級の防衛関連企業に雇用されていた」と書かれている。
また、中国は人材獲得プログラムを利用して、中国経済と軍備の強化に役立つ技術、能力、知識を持つ人材を国外で発掘していると指摘している。
訴状には「ゴン氏は人材獲得プログラムへの提出書類の中で、これらの企業数社での仕事と同じようなプロジェクトを提案し、自分の提案が中国の軍事にとって有用であること、中国がまだ持っていない技術を自ら開発したり、中国企業と共有したりできることを繰り返し宣伝していた」と記されている。
会社のセキュリティー
裁判の資料によると、ゴン氏は1966年に中国浙江省で生まれた。1993年に渡米し、2011年に米国籍を取得した。クレムソン大学で電気工学の修士号を取得し、スタンフォード大学で博士号取得を目指していた。
HRLラボラトリーズのマーケティング・コミュニケーション担当ディレクター、パメラ・リース氏は声明で、ゴン氏は同社のビジュアル・システム研究所で働いていたが、その時すでに不審な行動を取っていることは把握されており、同氏を解雇したと述べた。
リース氏は「HRLは、ゴン氏の事例に関してFBIへの協力を続けており、必要に応じて今後も協力していく。よく政府の仕事をするトップレベルの物理科学・工学研究機関としてHRLは、疑わしい活動を検知し、記録するよう設計された強固な情報セキュリティーシステムを持っている」と述べた。
ゴン氏の弁護士からのコメントは得られていない。
カリフォルニア州中部地区の連邦検事、マーティン・エストラーダ氏は「外国からの脅威を含め、わが国の安全を守るために全力を尽くす」と述べた。
エストラーダ氏は声明で「ゴン氏は以前、中華人民共和国(PRC)に、軍を支援するために情報を提供しようとしており、核ミサイル発射の探知や弾道ミサイル、極超音速ミサイルの追跡に関する機密情報を盗み出した。私たちは、PRCを含む外国勢が私たちの技術を盗もうと精力的に活動していることを知っているが、そのような脅威に対し警戒を続けており、米国の企業や研究者が開発した新技術を必ず守る」と述べている。
供述書によると、ゴン氏は2014年、ダラスに拠点を置く情報技術企業に勤務していたとき、軍民両方の研究を行っている中国電子科技集団公司の第38研究所に事業提案書を送っていた。
ゴン氏は同社に輸出規制が課されている技術の開発を提案しており、財務省は2021年に同社に制裁を科した。バイデン政権は昨年、中国のスパイ気球との関連でも同社に制裁を科している。
ゴン氏の調査は、司法省と商務省が主導する、米技術の窃取を防止するための省庁間グループ「破壊的技術ストライクフォース」の一環として実施された。
マシュー・オルセン司法次官補(国家安全保障担当)は当時、司法省が、中国による技術窃取を取り締まるためトランプ政権時代に開始された「チャイナ・イニシアチブ」プログラムを廃止したことを明らかにしていた。このプログラムが「(中国に)関連する犯罪行為の捜査、起訴に関して厳しく、中国と人種的、民族的、家族的なつながりのある人々に対し特別な視点を持っている」という批判を受けたためだ。
オルセン氏は、国家安全保障に対する中国の脅威に対し、米政府は警戒を怠らないと述べた。