国土安保省が国境警備当局に警告「移民急増に備えよ」
By Stephen Dinan – The Washington Times – Tuesday, February 23, 2021
バイデン政権は、新たな不法移民に対し厳しく対応すると話しているが、裏では、今後数カ月間に流入すると予想される大規模な移民の「急増」に必死に備えようとしている。国土安全保障省の内部メールから明らかになった。
移民税関捜査局(ICE)は、急増するとみられる不法移民の移送ため、大型の飛行機を探し、地上の輸送能力の増強に取り組んでいる。テキサス州の石油労働者用の仮設住宅「マンキャンプ」を運営する企業に、不法移民の急増に備えて宿泊施設を借りられるかどうかを問い合わせている。
ICEの首席補佐官ティモシー・ペリー氏からのメールによると、国土安保省のマヨルカス新長官はICEに、費用は気にしなくていい、値段に関しては心配せず、契約をキャンセルし、新しく契約を交わすよう伝えていた。さらに、マヨルカス氏は、国境の壁からの予算を「今後の費用を埋める」ために転用することも考えているという。
ペリー氏はICE幹部へのメールで、「国境の移民急増にすぐに備える必要がある。今のままではだめだ。コストは気にせず行動すべきだ。すべきことをすれば、資金は省が後で何とかする」と主張、マヨルカス氏からの命令を改めて強調した。
メールは2月12日のものだが、その調子はバイデン政権の国民に向けた態度とは対照的だ。バイデン氏は、国境は開いておらず、人々は追い返されると断言した。
国土安保省の元高官はワシントン・タイムズに、「このメールは、いずれ制御できなくなることが分かっていることを示している」と述べた。
マヨルカス氏は、特別に国境管理チームを編成、自らがその運営の責任者に、副長官を作戦立案の責任者に据えた。
ICEに毎日報告するよう求め、驚くことに、4日先までの移民の動きの予測を提出させている。
メールによると、マヨルカス氏はさらに、ICE職員をできる限り任務に就けないようにするよう命じた。「必要な時」だけ使えばいいと命じたという。
ペリー氏は「フェンスはいらない」と書いている。
ICEのテ・ジョンソン局長代行は、仮設の収容施設「マンキャンプ」を運営するターゲット・ホスピタリティーに連絡し、ICEが借りられる収容施設がないか問い合わせるよう指示を受けた。その他のICE高官らは、他に使える施設がないかについて細かな集計をしていた。
ターゲット・ホスピタリティーに施設に関して問い合わせたが、返答は得られなかった。
国土安保省は、移民の急増が迫っていることに関する質問に対し、声明を発表し、移民制度を「4年間、壊れたまま」放置したとトランプ政権を非難した。
同省は、新型コロナウイルスの感染拡大という逆風の中、「一から出直して」人道的制度を構築すると表明した。
「MPP(移民保護プロトコル)で移民に対応する体制を確立するなど、再建を急いでいるが、まだ時間が必要だ。ずっと国境が開いているわけではなく、来るべきではない」
国家安保省によると、国境に押し寄せる移民は昨年の4月以降増加しているが、それは中米の状況の悪化が原因だ。
国土安保省は「国境では、季節による新たな移民の動向に対する計画や準備を含めて、コミュニティーを守り、国境を越えた物や人の動きの便宜を図り、法に則った人道的保護を求める亡命希望者などへの人道的な対応ができるようにするための措置が取られている」としている。
ホワイトハウスではサキ大統領報道官が23日、国境で寛大な措置が期待できるとしても、国境に来ないよう改めて移民への警告を発した。
「今は来る時ではない。移民受け入れの態勢や方針を定める時間がない。国境で必要とされる対応ができない。新型コロナへの対応手順を守れるようにする設備も、明らかに整っていない」
税関・国境警備局(CBP)が国境で実際に対応し、ICEとともに不法越境者を捕らえたり、対応したりしている。
ソーシャルディスタンシングの制限によって、国境施設の収容能力も落ち、対応策は2019年に移民が急増した時より限られている。この時は、議会が50億㌦の支援を拠出せざるを得なくなった。
ペリー氏はメールで、マヨルカス氏が移民当局に、移民を国境から離れた施設に移動させ、国境の収容施設の負担を減らすよう働きかけていることを明らかにした。
ペリー氏は「ICEは、輸送のペースを上げ、国境北方の処理センターでの処理とATDを完了するための人材を配置すべきだ」と主張した。ATDとは収容代替措置を意味し、これによって移民は、当局に定期的に出頭することを条件に解放される。
ある警察筋は、マヨルカス氏の命令は、ペリー氏がメールで指摘しているように、コストを無視しており、法的な問題が生じる可能性があると指摘、州と現地の当局の間で連携が取れていないことに疑問を呈した。
「議会を回避することは、さらに驚きだ」
国土安保省が移民の急増への備えを急ピッチで進めている一方で、バイデン大統領は、2019年に急増した移民の問題を解決したトランプ政権時の対策の大部分を停止または、廃止した。
国境の壁建設は中止され、拘束された後に解放された移民は国境へと戻り、国土安保省は先週、「メキシコにとどめる」政策として知られるMPPのもとでメキシコで待機していた約2万5000人の移民の第一陣の受け入れを始めた。
安全保障専門家らによると、MPPは2019年の移民急増を解消するうえで重要な役割を果たし、許可なく国境を越え、亡命などを求めていた難民を裁判所での審理までメキシコで待たせることで、米国内に入ることを事実上阻止した。
国境警備当局者らは、これらの変更、さらには国土安保省が暗に認めている移民の急増によって、地域社会は大きな被害を受けることになると指摘する。
アリゾナ州南東部のコチセ郡の保安官で、全米保安官協会国境安全委員会の委員長マーク・ダニエル氏は「強く懸念している。以前の状態に戻るのではないかと懸念している」と述べた。
マヨルカス氏による警察官の使用を制限するICEへの命令、フェンスはいらないという発言から、現政権は、オバマ、トランプ政権とは違う対応を取ろうとしているようにみえる。
マヨルカス氏は2014年、国土安保省副長官だった。中米からの不法移民の子供が急増した時だった。1年後、子供を連れた家族の移民が急増した。
オバマ政権は、2つの家族収容施設を設置、金網のフェンスで小屋を建てて国境での処理続きを拡充した。トランプ政権時、これは「檻」と呼ばれた。
バイデン氏は非人道的だとして、寛大な対応を取ることを約束している。