バイデン米政権下で国境の壁が密入国業者の通り道に

AP Photo/Ross D. Franklin

By Stephen Dinan – The Washington Times – Wednesday, March 3, 2021

　バイデン米大統領が国境の壁建設の中止を決定したことで、作業員たちは工事の途中で道具を置き、いなくなってしまった。

　これにより、一部の場所では今までよりも国境の安全が低下している。アリゾナ州で国境を83マイルも接する郡の保安官が語った。

　一部の場所では、国境の壁システムの一部として、国境警備隊員が新たな壁をパトロールできるようにするために、業者が高速道路を建設していた。だが、作業中止命令が下された時点では、壁はまだ建設されていなかった。

　その結果、密入国業者専用道路ができてしまった。アリゾナ州コチセ郡のマーク・ダネルズ保安官によると、密入国を取り仕切るカルテルは、この道路によって不法移民を米国の奥地へと送り込むことが可能になっている。

　「カルテルのために道路を造っただけだ」と、ダネルズ氏は語った。

　壁建設中止はバイデンチームが最初に打ち出したさまざまな動きの一つだが、新型コロナウイルス大流行の中で移民急増に備える保安官たちにとって、さらなる頭痛の種をもたらしている。

　ワシントン・タイムズ紙は税関・国境警備局（ＣＢＰ）に対し、壁建設中止の決定について地元当局とどう連携しているのか質問を出したが、回答はなかった。ただ、ＣＢＰは「大統領が宣言で指示したように、適切に法にのっとってプロジェクトを再開、修正、中止する計画」について、「特定の連邦政府機関」と協力していると語った。

　影響を受けるのは何マイルかという質問は、陸軍工兵隊に回された。

　陸軍工兵隊が回答したのは、国境の壁システムのうち国防総省予算から出ている部分だけだったが、道路だけが新しくできて壁が建設されていないのは4.7マイルだという。

　バイデン氏は2020年大統領選で壁建設を中止すると誓約し、就任早々、その公約を実行する措置を取った。

　バイデン氏はトランプ前大統領が出した国家非常事態宣言を取り消し、国防総省予算の一部を打ち切り、議会が壁建設だけに割り当てた予算を凍結した。その資金を別のところに割り当てるかどうか、再検討しているところだと、バイデン氏は語った。

　アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は、最近の移民急増に対応するためにその資金を使うことを提案している。

　バイデン氏が指示を出した数日以内に、すべての壁建設作業が中止された。例外となった幾つかの事例は、建設が危険な状態の場所で、物資を縛り付けたり、危険な穴を埋めることなどが必要な所だ。

　ダネルズ保安官は、建設中止は安全上の隙をつくり出したと語った。

　「現在、オープンになっているある地域では、１日に５～６グループが入って来ている」とダネルズ氏。「以前よりもひどい状態だ。彼らのためのインフラを造っただけだ」

　バイデン氏は上院議員時代、数百マイルの国境の壁に賛成票を投じ、オバマ政権の副大統領時代は壁建設を監督した。だが、今は壁は機能しないと言っている。

　この議論はワシントンで盛んになっているが、バイデン氏が壁について聞くべき最も重要な意見は、「大多数が壁は機能している、本当に機能している」と言っている地元住民の声だと、ダネルズ氏は語った。