移民急増で国境の状況悪化、現状の呼び方めぐり対立する政治家

(2021年3月20日)

Homeland Security Secretary Alejandro Mayorkas, right, accompanied by White House press secretary Jen Psaki, left (AP Photo/Andrew Harnik)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Sunday, March 14, 2021

 全米国境警備会議のブランドン・ジャッド会長は、2週間前なら、国境の状況を危機的とは呼ばなかっただろうが、今はその状況に達したと述べている。

 ジャッド氏は、国境警備当局はメキシコ国境の職員を増員し、北部国境やアリゾナ州の幹線道路の検問所から人員を集め、支援に当たらせていることを明らかにした。国境警備当局はすでに手いっぱいで、増員がなければ対処できず、危機的状況にあるということだ。

 ジャッド氏はワシントン・タイムズに、「きょう、今、『危機的状況にあるか、手に負えなくなっているか』と聞かれれば、その通りと答える」と述べた。

 共和党の有力議員らが22日、現状を把握するため国境を訪れる。ホワイトハウスと国土安全保障省は、「危機的」との指摘を繰り返し否定し、「困難な状況」と呼んでいる。

 この点が、移民問題にかかわる誰もが抱いている疑問だ。

 数字を見ると、状況は複雑であることが分かる。

 国境警備当局は2月、9万6974人を拘束した。これは、過去10年以上で3番目に多い。2019年に移民が押し寄せ、4月と5月に迎えたピーク時に次ぐ。

 南西部の国境の不法移民の数は通常、季節で変わる。先月の数字は、2月としては2006年以降で最多に当たる。2019年2月より45%多く、年間では、前回の急増時を上回る可能性がある。

 2月に国境警備当局が拘束した「保護者が同伴しない未成年者」(UAC)の数は、記録上、過去4番目の多さで、2019年5月、2014年5月、6月に次ぐ。それ以前は、UACはそれほど多くなかった。

 しかし、家族の移民は、記録的なペースとはいえない。国境で拘束された家族の移民は1万8945人で、2019年5月のピーク時の4分の1以下、2019年2月より35%少ない。

マヨルカス国土安全保障長官

 マヨルカス氏は1週間前に公表することなく国境を訪れているが、危機的状況にはないと繰り返し主張、テレビ局ユニビジョンで、状況は管理されていると述べた。

 「状況は、制御不能にはなっていない。確かにかなり困難な状況にあり、補給と人道という面から困難に直面している」

 マヨルカス氏は、トランプ前政権への非難も繰り返した。過去の国土安保長官らが、移民対策を大幅に変革し、「欲求を抑えつけた」が、バイデン政権がその欲求を解き放ったようだと指摘した。

 国土安保省は13日、南西部国境で「記録的」水準の不法移民を確認しており、マヨルカス氏が、連邦緊急事態管理庁(FEMA)に命じ、国境の収容施設に詰め込まれている子供の受け入れに取り組ませている。

ジョン・コーニン上院議員

 共和党のコーニン上院議員(テキサス州)は、政府がUACのために開設した収容施設を訪れ、責任者に、事態は危機的かどうかを尋ねている。

 コーニン氏は「メキシコ湾で発生した最大級のハリケーンだ。熱帯性の暴風雨が上陸しようとしている。すぐに来る」と言っていたと述べた。

全米国境警備会議のブランドン・ジャッド会長

 国境警備当局は以前、似た状況に対処している。ジャッド氏によると、クリントン政権の終わりごろとブッシュ政権の初期に、主にメキシコから1人で国境を越えた成人移民が急増した。

 2014年には未成年者の移民が増加、2015年、2016年には家族が増加、2019年にも再び増加した。ジャッド氏は、そのたびに、保護する正当な理由がない移民の排除を加速することで対処してきたことを明らかにした。

 前政権中、疾病対策センター(CDC)からの感染拡大緊急事態令によって、ほとんどの移民は国境で追い返された。UACにも同様の対応が取られた。バイデン政権もほぼ、その方針を維持しているが、子供を例外としており、子供の移民が記録的な数に達している理由はそこにあるとみられている。

 メキシコは、トランプ政権のほとんどの期間、協力的だったが、6歳以下の子供を持つ家族の引き取りを拒否し始めている。そのため、拘束し、米国内で解放することになる。家族の移民が増えているのはそのためだ。

 原因が何であれ、国境警備当局の状況は明らかだ。

 裁判所の文書によると、数百人の職員が北部国境など、他の任地から南西部に動員されている。地元の当局者らによると、アリゾナ州の幹線道路の検問所からも職員が動員され、未成年者への対応に当たっている。

 ジャッド氏は、「国境の安全は危機的状況にあると判断している。資源が全く足りておらず、国境で起きている事態を掌握する資源を持っていない」と述べた。

 ジャッド氏は、現状を「危機的」と呼ぶかどうかをめぐる政界での戦いよりも、問題を適切に解決することの方が重要だと指摘した。

アバラのサミ・ディパスクエール事務局長

 エルパソの移民の権利擁護団体の責任者ディパスクエール氏は、地元で何百人もの移民家族を受け入れており、テキサス州のリオグランデバレーから移送されていると述べた。

 ディパスクエール氏は先週、全米移民フォーラムが開催したオンラインイベントで、メキシコ国境の状況は、他の国が経験しているものとは比較にならないと述べた。

 「かつてない規模の移動が起きており、戦争や暴力によって移民となることを余儀なくされている。国境を越える人々がいるのは米国だけではない。比較的、多くなっているが、相対的にもっと多くの人々が国境を越えている国は他にある」

 ディパスクエール氏は、レバノンを例に挙げ、人口600万人ほどの小さな中東の国が、シリアから、恐らく150万人以上を受け入れていると述べた。

 米国に向かっている人々についてディパスクエール氏は、本当の危機は他にあると指摘した。

 「たしかに、危機的状況だ。中米の状況はそれ以上だ。居住地から人々が逃げ出している。国境よりも状況はひどい。確かに、対処するには大変な困難が伴う。しかし、危機的状況は、人々が逃げ出さざるえない現地にある」

ホワイトハウス国境調整官、ロバータ・ジェイコブソン氏

 元駐メキシコ大使のジェイコブソン氏は、どのように呼ぶかは重要でないと訴える。

 「現状をどのように呼ぼうと、すべきことをするだけだ」

 「状況を改善すること、もっと人道的で効率のいい体制に変えることに注力している。どのように呼ぼうと、すべきことが変わるわけではない。大統領以下誰もが、体制を見直し、自国での移民の希望と夢の実現にうまく対処できるよう、急がなければならない」

アリゾナ州コチセ郡保安官局のマーク・ネイピアー局長

 ピマ郡の保安官だったネイピアー氏は、どのように呼ぶかは重要だと指摘した。

 学校の授業に例えて、難しいというなら家庭教師が必要ということであり、危機的状況ならば、合格はできないということだとネイピアー氏は指摘した。

 「文言が重要なのはその言葉の意味ではない。危機という場合、危機的状況が悪いわけではなく、違ったレベルの対応が必要になるということだ」

 ネイピアー氏は現在の状況について、「以前から国境は危機的状況にある。今は悪化しているが、これまでにも経験してきた。しかし、それをどう表現するかは重要であり、資源を計画的に配分することが大切だ」と述べた。

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