アラスカ会談で米中が激突

(2021年3月28日)

In this March 3, 2021, Secretary of State Antony Blinken speaks on foreign policy at the State Department in Washington. (Andrew Caballero-Reynolds/Pool via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Thursday, March 18, 2021

 バイデン政権の高官らは18日、アラスカ州で中国高官らと対決し、互いに世界的覇権を目指している、国際秩序を破壊していると非難し合った。

 アントニー・ブリンケン国務長官は、2人の中国高官が率いる代表団に、米国は拡大する中国の拡張主義、新疆、香港、南シナ海などでの全体主義に対抗し、依然として続く米国企業へのサイバー攻撃に対して罰を科すことをはっきりと伝えた。

 ブリンケン氏は、「これらの行動はどれも、世界の安定を維持するルールベースの秩序を脅かしている。単に中国の国内だけの問題ではなく、きょうここでこの問題を取り上げなければならないと考えたのはそのためだ」と述べた。

 外交を担当する中国の楊潔●(=竹かんむりに厂の中を虎に)共産党政治局員はこれに対抗し、米政府が中国を「抑えつけ」られなくなる時が来ると警告した。

 会談は、ブリンケン氏とジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)の2人が率いる米国の代表団と、楊氏と王毅外相が率いる中国側代表団との間で行われた。

 会談に先立ち中国は、国内問題に干渉しないよう米国に警告、トランプ前政権が科した経済制裁を解除するよう米国に求めていた。

 アンカレジで行われた会談は、バイデン政権にとって初の中国代表団とのハイレベル会合。バイデン政権は、対中政策の見直しを進めている。

 楊氏は、開会の発言で米国に対し、米国は軍事力と経済的優位を生かして、他国に圧力を掛けていると非難。米国は国際貿易の未来を破壊していると訴えた。

 さらに、ブリンケン氏は中国を「見下している」と非難、中国は、新疆、香港、台湾など中国の「国内問題」への米国の干渉を断固拒否すると強調した。

 「中国は、米国側からの不当な非難を絶対に受け入れない。中国を抑え込むことはできない」

 ブリンケン氏は今週、同盟国の韓国、日本との会談を実施したばかり。中国側の長時間の発言に対し、予定されていなかった発言をし、「米国が戻り、再び関与を開始したことが歓迎されていることが分かった。また、そちらの政府が取っている行動の一部に深い懸念を持っていることも分かった」と述べた。

 楊氏は、干渉に対しては「断固とした態度」を取ると警告、中国は「ごく一部の国のルールではなく」国連のルールに従うと主張した。

 「米国はそのイメージを変え、自国の民主主義を世界に拡大するのをやめることが重要だと思う。米国の民主主義を支持していない米国民は多い」

 サリバン氏は中国代表団に、「対立は望まないが、激しい競争は歓迎する。常に、わが国の原則、国民、友人を守るために戦う」と述べた。

 王氏は、ブリンケン氏とサリバン氏は「中国国民の真の友人」としながらも、香港をめぐる米国からの「不当な非難」と最近科された制裁を非難した。

 「このような形で客を迎えることは考えられない」と王氏は述べた。

 王氏はまた、中国が近隣諸国に嫌がらせをしているというブリンケン氏の主張に反論した。

 ブリンケン氏は、今週行った日本、韓国での会談を受けて米国の考えを表明、記者団に対して、中国は地域と国際的規範にとって脅威だとはっきりと主張した。米国は、国際的ルールを守るよう中国に圧力を掛け続けるとブリンケン氏は述べた。

 ブリンケン氏は韓国ソウルからアラスカに向けて出発する際に「中国が約束を破り続けていることをよく知っている。中国による攻撃的で全体主義的な態度が、インド太平洋地域の安定、安全、繁栄の障害となっている」と述べた。

 ブリンケン氏はアラスカでの会談の前、日本を訪問した際に日本テレビで、「(米国と日本はともに)中国が国内でさらに抑圧的になり、国外で攻撃的になっていることに対して強い懸念を抱いている。とりわけ、この地域内で、尖閣諸島、台湾、南シナ海に対する中国の対応を懸念している」と述べていた。

 この発言は、バイデン氏が副大統領だったオバマ政権での中国に対する融和的な姿勢とは対照的だ。この融和政策が中国共産党への譲歩につながったと批判されている。

「核心的利益」

 中国外務省の報道官、趙立堅氏は北京で記者団に、中国高官らが、中国の「革新的利益」を尊重するよう米高官に圧力を掛けることを期待すると述べた。

 「中国は、主権、安全保障、核心的利益に関する問題で譲歩することはない。核心的利益を守るという決意と意志は揺らがない」

 トランプ前政権は今年初めに、中国西部でイスラム教徒のウイグル族に対して「ジェノサイド(集団虐殺)」を行っていると非難した。また、香港の民主的な体制を維持するという英国との約束を破ったとして、中国高官に制裁を科した。

 トランプ政権時、国務省は、中国の南シナ海の90%への主権の主張は国際法上、違法だと断言した。中国は、南シナ海の島々にミサイルを配備している。

 中国高官は、バイデン政権の代表団に、前政権の強硬姿勢のもとで科された中国企業と中国人への制裁、関税、制限の停止を求めるとみられている。中国はさらに、トランプ氏が、非生産的として大部分を縮小していた定期的なハイレベル対話の再開を求めている。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国はまた、バイデン政権に通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)、半導体大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)などの企業に対するハイテク製品に関する輸出制限を停止するよう求める。

 中国は、共産党員、中国人学生、国営メディアの代表に科されているビザ制限の解除、情報収集の拠点として利用されているとの主張を受けて閉鎖されたヒューストン領事館の再開も求めている。バイデン氏と習近平国家主席との首脳会談も求めていることが報じられている。

 中国国営メディアは、対米交渉に対する中国政府の考え方を示した。中国共産党系の環球時報は、米国側に前向きな姿勢がみられず、アラスカ州での会談はあまり期待できないと警告した。

 環球時報は社説で、「米国が攻撃的は言動を続けているため、中国国民は、この対話から重大な結果が出ることにほとんど期待していない」と主張、中国は「全体として(世界の二大経済大国間の)緊張が高まることに備えている」と指摘した。

 国務省は16日、24人の中国当局者に新たに制裁を科すことを発表した。その中には、25人の共産党政治局員の1人、王晨氏、国外での印象操作を担当している共産党中央統一戦線工作部の尤権部長が含まれている。

 米当局者らは、アンカレジでの会談前の会見で、両国関係での大きな進展は期待しないよう語っていた。

 ある当局者は「重要な会談だと思っている。…すでに発表されているものと同じメッセージを伝えることははっきりしている。それには、さまざまな問題に関して深い懸念を抱いていることを明確にすることも含まれる。新疆、香港、米国の同盟国やパートナー国に対する経済的威嚇、台湾海峡で攻撃的な行動を強めていることなどだ」と述べた。

 米当局者らによると、会談は、現在進めている中国に関する政策の見直しに役立てられることになる。

 「会談で、楊潔●氏、王毅氏から聞いたことは、今後の対中戦略をどう進めていくかを考える上で重要となる」

北朝鮮に圧力

 バイデン政権は、中国との間で協力が可能な分野は限られていると指摘した。新型コロナウイルスの感染拡大との戦い、気候変動、アフガニスタンの和平交渉などだ。

 ブリンケン氏はソウルで、中国は核兵器を放棄するよう北朝鮮に圧力を掛けることができると述べた。

 「中国は、北朝鮮に非核化の推進を説得するうえで、重要な役割を担っている。中国は、北朝鮮とユニークな関係を持っている。北朝鮮の経済関係、貿易のほぼすべては、中国経由だ。そのため、非常に大きな影響力がある」

 北朝鮮は今週、バイデン政権との交渉に興味はないと表明した。

 崔善姫・第一外務次官は声明で、米国は、交渉の前に「敵対政策」を放棄しなければならないと主張した。

 「新政権の発足後、米国から聞こえてくるのは、『北朝鮮の脅威』という異常な考え、『完全な非核化』に関する根拠のない発言だけだ」

 バイデン政権の交渉の申し出について崔氏は、「時間稼ぎ」には応じないと拒否した。

 アラスカでの交渉に対する中国の取り組みについて環球時報は、「中国が米国に理解させるべき」6点を挙げた。

 その中には、中国は地域を攻撃する意図はないこと、中国が大規模な軍事増強を進めたのは米国による中国「封じ込め」の試みのせいだという主張が含まれていた。同紙は、どのような関係を築けるかは米国次第だとしている。

 「米国が中国と平和的に共存、協力するつもりなら、中国は歓迎し、関係を築くために努力する。米国が対立するつもりなら、中国は最後まで戦う」

 アナリストらによると、中国が外交でこのような手法を取るのは、通常のプロパガンダを推進した上で、米当局者らにそれを拒否させることで会談をコントロールするためだという。そうなれば中国は、米国の発言を無視しながら、中国側が取り上げたいテーマへと会談を向かわせることができるようになる。

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