「ISは滅びていない」米軍が攻撃を強化

(2021年4月16日)

In this March 31, 2019 file photo, women speak to guards at the gate that closes off the section for foreign families who lived in the Islamic State’s so-called caliphate, at Al-Hol camp in Hasakeh province, Syria. Killings have surged inside the camp with at least 20 men and women killed in January, 2021. They are believed to be the victims of IS militants trying to enforce their power inside the camp housing 62,000 people, mostly women and children. (AP Photo/Maya Alleruzzo, File)

By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, April 6, 2021

 国防総省は、2年前に「支配地を殲滅した」と宣言した過激派組織「イスラム国」(IS)に対する攻撃を強化しており、米国と同盟国によるISの恒久的殲滅への戦略が適切だったのかどうかをめぐって疑問が生じている。

 米国主導の中東の連合軍は勝利し、ISが絶頂期に支配していた広大な「カリフ国家」を壊滅に追い込んだが、ISの思想への支持は続いており、ISの台頭を許した現地の状況も変わってはいない。それどころか、専門家が指摘しているように、何千人もの戦闘員がイラクとシリアで、一般人にまぎれ込み、発見が困難な地方に潜むことで、新たな、これまで以上に強靭なISが誕生した。米軍の中東でのプレゼンスが低下していることもそれに拍車をかけた。

 困難な状況を生き抜くISの能力が明らかになった。米軍と同盟国は数カ月前から、中東でのISの拠点を空爆してきた。先週末には、新たな空爆と地上からの攻撃を実施、攻撃には少なくとも1機の米空軍F15Eストライクイーグルが参加し、バグダッド北のサラディン州のISの拠点を攻撃した。イラク国防相の報道官ヤヒヤ・ラスール氏は3日、この攻撃によって、ISの拠点2カ所が破壊され、少なくとも戦闘員2人が死亡したとツイートした。

 ISの幹部らはまた、シリアでよく知られているホル難民キャンプなどで戦闘員の募集を強化しており、米軍の指揮官らは、難民キャンプが次世代のIS戦闘員の温床になるのではないかと懸念を表明している。

 イラクとシリアで攻撃が再開される一方で、アフガニスタンでは衝突が増加、モザンビークでは残虐な反乱が起き、ソマリアでも依然として反乱が続いている。ISが中東、アフリカ、アジア全域で基盤を固めていることを示す証拠が数多くある。

 専門家は、ISへの勝利宣言は早すぎたと指摘する。

 米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)のキャサリン・ツィマーマン常任研究員は、「依然として、ISの支配地を殲滅したと言われている。何年もの間、マスコミで大きく取り上げられてきたイラクとシリアのモスル、ファルージャ、ラッカなどはすべて、もうISの支配下にない。だが、ISは滅びていない」と述べた。

 「本当に難しいのは、低烈度の反乱が増えていることだ。戻ってきている。軍事作戦は実施したものの、ISを台頭させた現地のさまざまな条件を排除するための政治的な対応はなされなかった。IS復活の条件は残されたままだ」

 2021年のISが、イラクとシリアの広大な地域を支配していた6年前の事実上のテロ国家とは違うことは間違いない。ISはこの「カリフ国家」から、従来の国家のような統治を行い、イスラム的な慣行を残虐なかたちで実行した。斬首、生きたまま焼くなどの残虐な方法で囚人を殺害し、テロ事件を起こし、世界の注目を集めた。そのため、オバマ政権時の2011年にイラクから撤収した米軍は、戦闘のため戻ってきた。

 米軍は、イラクの治安部隊、クルド人主体のシリア民主軍(SDF)などの友好的な組織と協力し、ロシア、アサド大統領に忠実なシリア軍などの敵対勢力からの支援を受けて、数万人にも達したIS戦闘員を、支配地から追いやった。

 ISがカリフ国家の首都と主張していたラッカは、2017年10月の激しい戦闘で奪還した。

 しかし、国防総省の最新の報告によると、8000人~1万6000人のIS戦闘員が依然としてイラクとシリアにいる。一方の米軍は、国防総省の最新の数字によると、イラクに2500人、シリアには900人程度だ。

 バイデン政権の高官らは、ISの支配地を奪ったことを強調するが、一方で、ISは地上の戦闘部隊から、従来からある表に出ることのないテロ組織へと変化し、依然として深刻な脅威であることを認めている。

 国際IS掃討連合のジョン・ゴドフリー米特使代行は3月末の会見で、世界的な脅威であるISを封じ込めるには継続的な「テロ対策圧力」が必要だと述べた。

 ゴドフリー氏は国務省での会見で「ISは、シリア内だけでなく中東の米国のパートナー、さらにはイラクから、さらにその先の地域にとって依然として重大な安全保障への脅威であり、その脅威は、遠く欧州へ及び、さらに北米にまで達する可能性もある」と述べた。

 またゴドフリー氏は、ISが戦いの協力相手を求めていると指摘、「ISは、遠方の組織とつながりがあることをアピールしており、監視を強めている」と述べた。

ISへの攻撃

 ISは、残虐なテロ攻撃で現地の住民に恐怖心を植え込むことに非常に長けていることが分かっている。3月中旬、ISの民兵が、イラクのアルブドゥールで8人を射殺したことが報じられた。そのうちの6人は家族で、自宅で殺害された。

 ISはソーシャルメディアで犯行声明を出し、殺害されたのはイランとつながりのあるシーア派民兵組織、人民動員軍(PMF)に協力する「スパイ」だと主張した。

 昨年11月、IS戦闘員がアフガンのカブール大学を襲撃し、少なくとも22人を殺害した。先週には、このところアフリカで勢力を急速に拡大しているIS系組織が、モザンビークでの襲撃事件で犯行声明を出した。この事件で少なくとも55人が死亡した。

 襲撃が相次いだことで、米軍、SDF、イラク軍による大規模な攻撃が開始された。放置すれば、さらに勢力を拡大すると考えたからだ。

 3月9日に米軍とイラクの協力組織が開始した攻撃では、少なくとも312回の空爆と地上からの攻撃が実施され、当局者らによると、少なくともテロリスト27人が死亡した。イラクは地上部隊を派遣、米軍の航空機が上空から攻撃した。

 米軍によると、この攻撃で少なくとも120カ所のISの「隠れ家」が破壊された。報道官のウェイン・マロット氏はツイッターで、「生来の決意作戦」参加国が3月、「(IS組織に対して)78回の作戦を実施し、107人のテロリストらがテロを実行するのを阻止した」ことを明らかにした。マロット氏は、イラクとシリアの民間人に、IS戦闘員の兆候があれば、連合軍へのホットラインで通報するよう呼び掛けている。

 これら以外にも、IS掃討に参加している米軍部隊がある。ドワイト・D・アイゼンハワー空母打撃群が、地中海東部から航空作戦を実施し、生来の決意作戦を支援、新たに戦闘機、艦艇が作戦に参加した。

 米海軍第6艦隊は声明で、「打撃群の地中海での作戦で、米海軍が複数の戦域から、生来の決意作戦を支援する能力を持つことが示され、米海軍空母打撃群の動員力、機動力、戦力投射能力が際立った」と強調した。

 一方、SDFの部隊は先月末、シリア北部に広がるホル難民キャンプを捜索した。国連の推測によると、キャンプには6万4000人が収容されている。SDFは、キャンプ内で活動するISの戦闘員募集人とみられる人物を拘束した。

 このキャンプについては、中東に駐留する米軍指揮官らが、ISが新たな戦闘員を集める格好の場所になっているのではないかと強い懸念を抱いている。

 ツィマーマン氏は「生活環境は劣悪」で、「ISの募集人が入ってきて、いい生活を提示すれば、未来が見えず、キャンプから出る道も見えない難民にとっては魅力的だ」と指摘した。

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