企業幹部数百人が「差別的」選挙法に反対
By Alex Swoyer and Ryan Lovelace – The Washington Times – Wednesday, April 14, 2021
米主要企業の最高経営責任者(CEO)、幹部ら数百人が14日、共和党政権の州での新選挙法への反対に賛意を表明した。
選挙をめぐる激しい戦いの中、民主党に賛同することで、保守派の顧客が離れる可能性がある。
大手IT企業、銀行大手、航空大手、小売大手の幹部らが、選挙への規制を強化する州での「いかなる差別的法律」にも反対するとする声明に署名した。
アメリカン・エキスプレスの元CEOケネス・シュノールト氏、メルクのCEOケネス・フレーザー氏が共同声明の作成を支援した。声明は、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズに全面広告で掲載された。
声明は「米国の民主主義が全国民に貢献するよう、全国民の投票権を守らなければならない。誰もが、投票権を守る責務を感じるべきであり、正当な有権者が投票の公平で公正な機会を持つことを制限または妨害する差別的な法律、法案に反対することに責務を感じるべきだ。投票は、民主主義の血液であり、全米国民に、力を合わせて、国民の最も基本的な権利を訴える無党派の活動に参加するよう呼び掛ける」としている。
企業幹部らは、政治的主張はないとしている。しかし、これらの主張は、党派的な反応を呼び起こした。
米保守連合(ACU)のダン・シュナイダー事務局長は、アマゾン、アップル、バンク・オブ・アメリカ、ユナイテッド航空、ターゲットなどによるこの政治活動が、保守派からの反発を招き、ボイコット運動が起きると述べた。
「これらの企業は非常に近視眼的だ。企業は、雇用を創出し、株価を上げる政策を主張する保守的な自由市場支持団体に依存してきた。保守派に背を向けることで、議会とホワイトハウスの過激な左派の顔色をうかがっている。長くは続かず、後悔することになる」
ACUは今週、政治的左派の策略に乗らないよう企業に求める活動を開始した。企業幹部らとの面会を求め、拒否すると草の根の活動に取り掛かると脅した。
この声明が消費者らの間でどの程度、反響を呼ぶかはまだ分からない。しかし、米市場の大部分は、リベラル派の主張を受け入れていない。
ギャラップ社が今年に入って公表した調査によると、国民の36%は自身を保守派と考え、35%が穏健、25%がリベラルと認識している。
企業幹部らの声明は、特定の州や法律に反対しているというわけではないようだ。しかし、ジョージア州の新選挙法や、有権者への身分証明の要求など選挙不正防止のための共和党の取り組みに対するリベラル派の怒りを反映したものだ。
投票での身分証明の提示は、米国各地で行われ、何十年も前から規定されている。全米州議会会議によると、現在、36州で有権者に身分証明の提示を求めている。
選挙法は、一部の州で厳格化され、写真付きの身分証明書が要求されている。10以上の州では、投票時に写真付き身分証明書の提示を求めている。インディアナ州が、写真付きの身分証明を求める厳格な措置を取った最初の州となった。このような措置は、2008年に最高裁が支持を表明していた。
保守派は、選挙不正と投票の重複は身分証明法で防止できると主張。投票に身分証明が必要な国は、英国、カナダ、フランス、アルゼンチン、ブラジルなど何十カ国もあると指摘している。
しかし、ジョージア、テキサス、ミシガン、アリゾナなど共和党政権の州で、2020年大統領選での違反、立証されていない不正の主張を受けて選挙法が成立しており、政治的対立は激化している。
民主党は、人種差別的で、少数派の投票を困難にするとこれらの制限を課す州を非難している。
共和党は、これらの法律は、選挙の不正を防止し、投票プロセスへの信頼を回復するために必要だと主張する。
共和党主導のジョージア州議会は、不在者郵便投票には政府の身分証明が必要とする法律を定めた。これに対し、少数派は、白人が持っているような身分証明が入手できないという批判の声が上がった。
コカ・コーラ。デルタ航空のCEOはジョージア州の新法を非難し、大リーグは抗議のため、2021年オールスターゲームの開催地を同州アトランタから他州に移した。
リベラル派の活動家らは、財界のウォーク(不公正や差別に敏感)な考え方を称賛した。IT大手と連携した新しいリベラル派権利擁護連合組織「チェンバー・オブ・プログレス」は、企業幹部らの発表を高く評価し、署名リストに加わることを求めた。
共和党はこれに強く反発している。リベラル派の主張を支持し、これまでの保守派との連携を否定していると財界に警告を発した。
共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員(テネシー州)は、左派は「自由で公正な選挙への攻撃」を開始したと述べた。
「米企業は、AOC(アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員)、(ステイシー・)エイブラムズ氏らとともに、有権者に身分証明の提示を求め、集票を禁止するなどの当たり前の考え方に反対している。ならば、デルタ航空、大リーグのような企業は、率先して行動し、空港や、野球の試合のチケット購入で身分証明書の提示を求めるのをやめるべきだ」
共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)は、試合の開催地変更に対する報復として、大リーグの反トラスト法(独占禁止法)の適用免除を廃止するよう求めた。
「党派的な行動を取り、誠意を示さず一方に肩入れするのなら、連邦からの特別扱いは期待しない方がいい」
トランプ前大統領は今月、ジョージア州の選挙法に反対したり、報復したりした企業をボイコットするよう支持者に呼び掛けた。その中には、大リーグ、デルタ、コカ・コーラ、JPモルガン・チェース、バイアコムCBS、シティグループ、シスコ、UPS、メルクなどがある。
これらの企業のうち、シスコ、メルク、バイアコムCBSは、声明に署名し、支持の姿勢を明確にした。ニューヨーク・タイムズ紙によると、コカ・コーラ、デルタは署名を拒否している。
米プロバスケットボール協会(NBA)は、声明に署名していないが、コミッショナーのアダム・シルバー氏は署名した。
伝統のある業界団体は、これら大手企業の積極的行動に対し沈黙している。
米商業会議所の広報サブリナ・ファング氏はワシントン・タイムズに、声明の意見広告を見ていないとしたうえで、民主党が推進する選挙制度改革法案「HR1」に会議所として反対することを明らかにした。この法案が成立すれば、連邦選挙制度が定められ、共和党主導の州が採用した選挙法の多くが無効となる。
声明への賛同者らは、反発は恐れていないという。
ペンシルベニア大学ウォートンスクールの経営学教授メアリーハンター・マクダネル氏は、喜んで声明に署名したと述べるとともに、企業は政治的立場を明確にすることになるが、それほど反発に遭うことはないと主張した。
「調査によると、企業が表明している価値観に沿って政治・社会的行動を取る場合、ほとんどの場合、反発は招かない。実際に、自社の価値観に沿って活動する企業では、主要なステークホルダー、特に従業員の忠誠心、支持が高まる傾向がある。行動が偽善的、偽物と思われた企業ではよく、問題が起きる」