リズ・チェイニー氏、共和党幹部の地位喪失か
By Seth McLaughlin – The Washington Times – Tuesday, May 4, 2021
共和党のリズ・チェイニー下院議員は、政治生命を犠牲にすることなくトランプ前大統領と決別し、「選挙は盗まれた」という主張を拒否することはできると党下院議員らに示そうと必死だ。
だが、議員らは、チェイニー氏の下院共和党会議議長としての地位は間もなく終わると予測、後任を誰にするかをめぐるうわさが飛び交っている。
チェイニー氏のこの思い切ったかけは、トランプ氏を支持するケビン・マッカーシー下院共和党院内総務が4日に、マイクのスイッチが入っていることを知らずに、チェイニー氏は「大きな問題」で、「決別した」と話していたことを受けて注目されるようになった。
マッカーシー氏は「FOX・アンド・フレンズ」の司会者スティーブ・ドゥーシー氏に「誰かが言いださなければならない。恐らくそうなるだろう」と述べた。
この発言の音声がソーシャルメディアで公になり、アクシオスが最初に報じた。マッカーシー氏の本心をのぞかせる発言だ。
テレビで放送された部分では、これほど直接的な言い方はしていない。
「議長としての職務を遂行する能力があるのかについて懸念しているという話を聞いた。意思疎通ができていない」
「(2022年中間選挙で)多数派を勝ち取るには、全員が一つになることが必要だ」
マッカーシー氏は、反チェイニー感情の高まりは、1月6日の議会議事堂襲撃を扇動したとして行われたトランプ氏弾劾に賛成票を投じたこととは無関係だと主張した。
この発言に対し、チェイニー氏の報道官ジェレミー・アドラー氏は、「これは、共和党が2020年選挙のうそを引きずり続け、1月6日に起きたことをごまかすかどうかということだ」と述べた。
「リズは、そんなことは絶対しない。問題はそこにある」
マッカーシー氏の事務所からコメントは得られなかった。
チェイニー氏が解任された場合、後任候補としてイリース・ステファニーク下院議員(ニューヨーク州)の名が挙がっている。
共和党研究委員会の委員長のジム・バンクス下院議員(インディアナ州)、マイク・ジョンソン下院議員(ルイジアナ州)も候補として挙げられている。
トランプ氏は、バイデン氏に敗れた選挙で7400万票を獲得し、共和党への影響力を維持している。
トランプ氏は、ロナ・マクダニエル氏の共和党全国委員長への復帰を助けた。また、中間選挙へ影響力を発揮しており、全米の候補者に支援を表明している。
予備選に出馬する共和党員らは、トランプ氏を称賛し、取り入ろうと必死だ。
その中にマッカーシー氏もいる。来年の予備選でチェイニー氏に対抗して出馬する可能性のある党員らもそうだ。
マッカーシー氏は、次期下院議長になれる可能性は、トランプ氏とその支持者らの側にいた方が高いと考えている。
しかし、共和党は、大統領ポストと上下両院を失っており、どこまでトランプ氏を支持すべきかをめぐっては決して一枚岩ではない。
トランプ氏は、反対陣営への報復に乗り出した。
弾劾に賛成したチェイニー氏と9人の下院共和党議員を標的にし、選挙を盗んだという主張を否定したミッチ・マコネル上院院内総務ら共和党議員を攻撃してきた。
トランプ氏は今週出した声明で、「立派な州、ワイオミングの大物戦争屋リズ・チェイニーに関する世論調査は心温まる。指示は低く、これだけ数多くの人々が反対しているのだから、復活の可能性はほぼない。そうならないことを望む」と強調した。
「こんなに嫌われているのだから、ワイオミングの選挙に2度と出馬することはない」
チェイニー氏は、州の党から非難された。対立候補らはワイオミングの有権者を裏切ったと糾弾し、弾劾への賛成は「恥ずべきこと」と主張している。
一方トランプ氏は、盗まれた選挙の主張を繰り返している。
トランプ氏は今週「2020年の不正に満ちた大統領選は今後、大うそとして知られるようになる」と訴えた。
チェイニー氏はこれに反論し、「2020年大統領選は盗まれていない」と主張。
「世界らはもっとカウボーイが必要だ」というバナーが付けられたツイッターアカウントで「大うそだと触れて回っている人たちは、法の支配に背を向け、民主主義制度を破壊している」と訴えた。
チェイニー氏はこの日、ポール・ライアン元下院議長が参加したイベントでも、同じことを力説したことが報じられている。
CNNによると、ジョージア州シーアイランドでのライアン氏が参席した非公開会合でチェイニー氏は、「選挙が盗まれたという主張を受け入れることはできない。それは、民主主義の血に毒を盛ることだ。1月6日に起きたことをごまかし、トランプ氏の大うそを続けさせることはできない。民主主義にとって脅威だ。1月6日にトランプ氏は越えてはいけない一線を越えた」と述べた。
今年に入ってチェイニー氏がトランプ氏を非難すると、共和党内から反発を招き、党員らはチェイニー氏の辞任を求めた。
マッカーシー氏が非公開の場でチェイニー氏を擁護したことから、145対61票の大差で党幹部の地位にとどまることができた。
ところが、フロリダ州オーランドで行われた党の研修会でマッカーシー氏は、態度を変え始めた。
チェイニー氏は、議事堂襲撃を調査するために9・11調査委員会のような委員会を設置する案をめぐっても対立している。チェイニー氏は、襲撃につながった出来事に集中した調査を要求している。一方のマッカーシー氏はもっと広範囲の、アンティファや「ブラック・ライブズ・マター」が関与した出来事など国全体の政治的暴力を対象とすることを求めている。
チェイニー氏の毅然と態度に、歓声とやじの両方が飛び交った。
今年に入って反トランプ政治活動委員会を立ち上げたアダム・キンジンガー下院議員(イリノイ州)は、チェイニー氏が党幹部にとどまることを歓迎した。
キンジンガー氏の報道官モーラ・ジリスピー氏は「チェイニー氏は、真実を話し、誠意を貫いている。恐れることなく、本当に重要なことを貫いている。2020年11月3日、選挙が盗まれたとうそと陰謀を広めた怒りの暴徒らが民主主義を攻撃した」と述べた。
「これは事実だ。幹部らが責任を持って事実を伝えることが重要だ。誠意が大切だと思う議員なら、そうあり続けるはずであり、どれだけ時間がかかろうと、共和党の魂のために戦い続けるはずだ」
弾劾を支持し、トランプ氏の反発を買っているミット・ロムニー上院議員(ユタ州)も、チェイニー氏を「良心の人」と称えた。
ロムニー氏は、「良心があるすべての人は一線を引き、その向こうには行かない。リズ・チェイニーはうそをつくようなことはしない」と強調した。
民主党下院議員らもこれに加勢した。
民主党のナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)の事務所は下院議長のウェブサイトで「うわさによると、下院の共和党幹部は、党内で最も最高位の女性、リズ・チェイニー下院議員を、いかにも共和党らしい理由で下院共和党会議議長から降ろそうとしている。つまり、チェイニー氏がうそをつかず、謙虚でなく、違うチームを応援しているガールフレンドのようだからだ」と指摘した。
ペロシ氏の事務所は、「下院共和党の幹部は、ナンバー3に何を求めているのか。自身にとって『脅威』にならない女性であってほしいということだ」と訴えた。