ネット普及計画めぐり民主党の「大きな政府」と戦う共和党

(2021年5月20日)

The login/sign up screen for a Twitter account is seen on a laptop computer Tuesday, April 27, 2021, in Orlando, Fla. (AP Photo/John Raoux)

By Kery Murakami – The Washington Times – Monday, May 10, 2021

 下院民主党は、1000億㌦をかけて、ブロードバンドインターネット接続を地方の貧困地区、都心のスラム街にまで拡大し、低所得世帯にインターネット利用料を月50㌦支払う新型コロナウイルス対策を恒久化するとともに、一部に対しプロバイダーの課金に限度額を設ける意向だ。

 バイデン大統領と民主党幹部らは、コロナ感染拡大により、学校に行ったり、医師に診せたりするという日常的な行動を取るうえで、インターネットにつながっていることの重要性が高まったと主張した。

 これは、民主党が重視してきた人種間の不平等の緩和と一致している。調査によると、黒人、ヒスパニックの世帯は、白人世帯に比べて、自宅にブロードバンドサービスがあるケースが少ない。

 共和党は、この価格管理と補助金の提案は、ニューディール政策以来、最も大きな政府の拡大を目指す民主党の政策の一環だと主張している。

 下院エネルギー・商業委員会の共和党筆頭委員キャシー・マクモリス・ロジャース議員(ワシントン州)は、「誰もがデジタルデバイドを縮めたいと思っている。しかし、これを実現する唯一の方法は、そのための解決方法を示し、リードすることであり、政府の中央集権的な権限を強めることではない」と主張した。同委は、ブロードバンドの普及を管轄している。

 「民主党議員、バイデン政権が提示した政策には、民間企業がブロードバンドサービスに課金する料金を、連邦政府が規制することが盛り込まれている」

 米国人の90%は、宿題をしたり、オンラインで医師に診せたり、映画を見たりするのに十分な速度のインターネット接続を持っている。民主党は、地方の学校区はスクールバスにWi-Fi(ワイファイ)を設置し、生徒らが学校閉鎖期間中に宿題ができるようにするよう求めている。

 この問題を検証している小委員会のマイケル・ドイル下院議員(民主、ペンシルベニア州)は、「これは贅沢ではない。社会に参画するうえで必要なものだ」と述べた。

 民主党のジェームズ・クライバーン下院院内幹事とエイミー・クロブシャー上院議員(ミネソタ州)が提出した予算1000億㌦の「誰もがアクセスでき、手頃な価格のインターネット法」には、未整備の地域に高速インターネットを設置するための補助金として800億㌦が盛り込まれている。

 バイデン氏はさらに、2兆2500億㌦の「米雇用計画」に、全米に高速インターネットを拡大するための予算として1000億㌦を投入することを提案している。

 カマラ・ハリス副大統領は、高速インターネットを基本的な必需品と位置付けている。

 ハリス氏は先月、インフラ整備計画への支持を求めてニューハンプシャー州プリマスを訪れた際、「これまで米国では、『基本的に必要なものを誰もが入手できるようにするために国家として尽力する』ということが伝統となってきた」と述べた。

 地方では、ブロードバンドサービスがない地域がよくあり、都市部では普及が進んでいる。インターネットの普及を推進するリベラル派団体は、プロ―ドバンドプロバイダーが、支払い能力がないことを理由に都市の貧困地域に高速インターネットを設置していないと主張している。

 これには「デジタル・レッドライニング(差別)」という非難が向けられている。

 レッドライニングという言葉は、銀行が過去に、特定の地域の黒人に家の購入資金を融資しなかったことを指している。この慣行が人種隔離につながった。

 民主、共和両党議員らは協力して、感染拡大の期間中、ブロードバンドサービス料金を低所得世帯に月50㌦援助した。この一時的な補助金は、トランプ前大統領が昨年12月に署名したコロナ経済対策9000億㌦に盛り込まれている。

 バイデン氏が3月に署名した1兆9000億㌦の経済対策には盛り込まれていない。民主党議員らは現在、この補助金の恒久化を求めており、5年間で60億㌦が必要になると見積もられている。

 さらにバイデン氏の計画と議会民主党の法案は、企業間の競争を激化させることで料金を下げさせることを狙っている。地方自治体による住民への独自のインターネットサービスの開設に補助金を出す。しかし、地方自治体がブロードバンドサービスを開設することは22州で禁止または、制限されており、連邦政府はこれらの法を無効にする必要がある。

 共和党とブロードバンド会社が特に警戒しているのは、議会民主党が、インターネットサービス利用料を連邦政府に制限させることだ。

 上院と下院の法案では、インターネットサービスを拡大する連邦補助金に条件が付いている。補助金を受けるブロードバンド会社は、4人家族で約2万6500㌦という連邦貧困ラインの136%の収入がある世帯に対して「手頃な料金」でサービスを提供しなければならない。

 成立すれば、連邦通信委員会(FCC)が、企業が設定する料金を決めることになる。

 ニューヨーク州のアンドルー・クオモ知事の計画は、これにとどまらない。

 民主党のクオモ氏は、4月に州内で活動するすべてのブロードバンド会社に、700万人の低所得者に15㌦で高速インターネットを提供するよう求める法律に署名した。

 ケーブル業界は、バイデン氏が米雇用計画で、政府による価格規制を受け入れると示唆したことを懸念している。

 バイデン氏は、インフラ整備計画に関する概要報告でインターネット料金を管理する考えを示した。

 この報告は「高すぎるインターネットサービスを賄うために補助金を提供し続けることは、消費者、納税者にとって適切な長期的解決法にはならない。米国民はインターネット料金を払い過ぎている。米国よりも低価格の国は多くある。大統領は、全米国民のインターネット利用料を下げるための解決法を議会と協力して探すことに全力を投じている」としている。

 ブロードバンドサービスを提供する企業の業界団体「NTCA-インターネット・テレビ協会」のマイケル・パウエル会長は、価格規制案は「見当違い」と述べた。

 パウエル氏は、この案が実行されることになれば、何年も法廷闘争が続くことになり、「何年も続く、やっかいで、長期的で、複雑な問題」につながると述べた。

 低所得者はその間、支援を得られないとパウエル氏は強調した。

 FCCの元委員長であるパウエル氏は、この業界は低所得者への連邦補助金の継続を支援していると述べた。

 だが、ブロードバンドは、民主党にとって特に魅力的な事案であり、人種間格差に対処するという政策課題にうまく適合する。

 ピュー・リサーチ・センターによると、2月段階で白人男性の80%が自宅にインターネットサービスがあり、黒人成人で71%、ヒスパニック系成人で65%だった。

 下院エネルギー・商業委員会の民主党スタッフが作成した資料によると、1500万人の学生のうち、インターネットサービスが自宅にない割合は、黒人、ヒスパニック、インド系で高い。

 ドイル氏は公聴会で「議会がバイデン大統領の米雇用計画に取り組んでおり、そこで重要なのは、この国が抱えるインフラの問題への解決方法を考えることだ。デジタルデバイドだけではなく、歴史的な不平等の中であまりに長い間、取り残されてきた黒人、ヒスパニック、部族、低所得者のコミュニティーの問題について考えるべきだ」と述べた。

 クリントン政権時にFCCの経済学者だったジョージ・フォード氏は議会で、価格規制は逆効果だと主張した。

 フォード氏は、低所得者に低価格でサービスを提供することを企業に強いれば、ブロードバンドサービスの拡大のための予算が減ることになると指摘した。フォード氏は、ワシントンのシンクタンク「フェニックス先進法律・経済公共政策研究センター」の主任経済学者で、このセンターでは、連邦政府機関の元高官らが雇用されている。

 ロジャース氏によると、共和党は「自宅で仕事をする、子供を教育する、医療を受ける、愛する人々と連絡を取る、宗教団体を維持する」上で、ブロードバンドサービスを利用しやすくすることがいかに重要かを理解している。

 ロジャース氏は、価格を規制したり、低所得者への補助金を恒久化したりするよりも、企業に任せる方がいいと主張。ブロードバンド会社が1996年から2019年の間に、1兆7800億㌦をインターネット利用施設の建設に投資したという米テレコム協会の調査報告に言及した。さらに、価格への規制や補助金の継続で、対策を価格に集中させることが、インターネット利用者を増やすための最も効果的な方法かを検討すべきだと訴えた。

 フォード氏もこれに同意した。フォード氏によると、国勢調査局が、2019に自宅にインターネットがなかった人にその理由を聞いたところ、60%が興味がない、18%が経済的余裕がないまたは価格ほどの価値がないと答えた。

 「これを価格の問題とみるなら、5年後、問題は解決せず、失望することになる」とフォード氏は述べた。

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