警察改革法案、期限に間に合わず 警官の免責めぐり対立
By Kery Murakami – The Washington Times – Sunday, May 23, 2021
ジョージ・フロイドさん殺害から1年を迎える25日、議会では依然、警察活動法案をめぐって押し問答が続き、バイデン大統領が定めた期限までの議会での合意は困難な情勢だ。
共和党との協議に加わっているカレン・バス下院議員(カリフォルニア州)、コリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州)の民主党幹部らは、バイデン氏が提示した期限までに上院で合意を交わせないことを認めた。
バス氏は、「1日までというのは無理だ」と述べた。
上院での協議は、警官に与えられている免責の廃止という民主党の要求をめぐって行き詰まっている。この免責によって警官は大抵の場合、職務中の行動を理由に訴えられることはない。
この「資格による免責」が、「ジョージ・フロイド警察活動の正義法案」の審議で最大の争点となっている。法案は下院を通過し、3月初めに上院に送付された。
8人の進歩的な民主党下院議員は、バス、ブッカー両氏ら議会指導者らにあてた書簡で、警官の資格による免責はなくすべきだと訴えた。
アヤンナ・プレスリー(マサチューセッツ州)、コリ・ブッシュ(ミズーリ州)、アレクサンドリア・オカシオコルテス(ニューヨーク州)ら民主党の左派系下院議員は書簡で、「交渉は続いている。分かっているのは、命を救えなければ、米国に真の正義はないということであり、資格による免責を廃止しなければ、米国に真の責任はない。この国は傷ついている。コミュニティーは傷ついている。もっと早く、ジョージ・フロイド警察活動の正義法案に盛り込まれている改革を法制化すべきだった。それは、政治家が責任をもって実行すべきことだ」と主張している。
しかし、交渉をリードしている共和党のティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)は、警察の保護を維持するという点で譲らない姿勢を示している。
プログレッシブ議員連盟(CPC)のプラミラ・ジャヤパル下院議員は、必要なら、民主党は、議会の規則を書き換えて議事妨害をなくし、民主党がこの警察活動法案を党だけで通過させるようにすべきだとまで言っている。
ジャヤパル氏はインタビューで、「共和党の協力が得られないのなら、議事妨害をできなくすべきだ。民主党として、すべきことは分かっているのだから。確実に通過させよう」と述べた。
ジョージ・フロイド法案は、首を押さえつけるチョークホールド、事前予告なしの家宅捜索令状も禁止し、不正を追及された警察官の全米データバンクの設置を求めている。
一部の民主党幹部は、資格による免責に関する交渉に関して協議する意向を示しているが、その概要はまだ具体化していない。
ジェームズ・クライバーン下院民主党幹事(カリフォルニア州)は、警察の免責の問題を後回しにして、警察活動のほかの部分の修正を勝ち取る意向を示した。
クライバーン氏はCNNで、「資格による免責を今、何とかできなくても、後でまた、対処できる。しかし、優れた法案を捨ててしまいたくはない。完璧な法案というのはない」と述べた。
民主党は、フロイドさんの死によって全米、世界中で抗議がわき起こったことで、警察活動改革の法制化に自信を持っている。
バイデン氏は4月の上下両院会議で、意見の相違を乗り越えるよう議員らに訴え、事件から1周年を期限として定めた。
「コンセンサスを得るために力を合わせなければならない。来月中に何とかしよう。ジョージ・フロイドさんの死の1周年までにだ」
民主党は、共和党との相違を埋められず、20日に1周年までに合意を交わすことの重要性を否定した。
バス氏は「最も重要なのは、時期ではなく、実のある法律を作ることだ」と述べた。
また、民主党が交渉で何を要求しているかを明確にはしなかったが、大まかな主張を提示した。
「必要なのは、残虐行為と死をなくすために、どのような政策を作るべきかをはっきりさせることだ」
議会は戦没者追悼記念日のため休会となるが、バス氏は来週、ワシントンにとどまり、交渉を続けると述べ、早期に合意に到達できることに期待を表明した。
「それほど時間はかからないと思うが、6月1日以前ではない」
ブッカー氏も記者らに対し、同様の発言をし、「スケジュールにはこだわらない。ただ、この法案できちんとした合意が得たいだけだ。6月1日前は無理だと思っている」と述べた。
ナンシー・ペロシ下院議長も、20日の毎週の記者会見で、バイデン氏の期限にはこだわらない意向を明らかにした。
「スケジュールにとらわれることはしない。準備が整い、最良の方法でできるまではしない。2週間早く準備を整えることよりも大切なことだ」
資格による免責の廃止は、警察組合が強く反対しており、ワシントンだけで議論されているわけではない。ワシントンの中道派シンクタンク「サード・ウェー」のアナリストによると、各州でこの1年間に警察活動に関してさまざまな法律が成立したが、この問題を扱っているのは2州だけだ。
コロラド州は昨年、警官への資格による免責を廃止する最初の州になった。それに対する妥協策として、警官側の支払額を上限2万5000㌦とし、それを超える部分は警察署が負担する。ニューメキシコ州がこれに続き、4月17日に免責を完全に廃止した。
両州は、議会、知事とも民主党が支配している。
しかし、サード・ウェーの分析によると、州によって対応はさまざまで、民主支配、共和支配問わず、変革が必要という点で一致している。
サード・ウェーは報告で、「連邦議会で行き詰まっている同様の提案の多くを盛り込んださまざまな法案が州議会を通過した。全米で、共和、民主、中間の州、どの州でも警察改革を実施すべきだと考えている」と指摘している。
警察活動の規則への変更で最もよくあるのは、力の行使の基準の厳格化だ。この報告によると、全米で、警官が力を行使できる時、行使できる力の種類が制限され、10州でチョークホールドが禁止された。
9州で、警官の訓練を増やし、とりわけ、暴力の抑制、人種的偏見への対処が重視されている。9州で、警官採用の基準が引き上げられ、5州で、警官の不正の訴えを調査する独立機関が設置された。
世論調査では、どちらの党の支持者も、取り締まり機関の規則の改革を強く支持している。
2020年のピュー・リサーチ・センターの調査では、警察は力を適切に行使しているかという質問に、35%が「非常にいい」または「いい」と答え、ほぼ3分の2は、警察の力の行使を「まあまあ」または「ひどい」と答えている。
ピュー・リサーチ・センターの2020年7月の別の調査では、有権者の3分の2が、警官は自身の行動によって訴えられる可能性があるべきだと考えている。党別では、共和党支持者が45%、民主党支持者が84%だった。