中国、ロシアからの暗殺の恐怖に脅える亡命者
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, June 1, 2021
米情報機関が、ロシア、中国などの敵対国で米国のためのスパイ活動を行った高位の亡命者数百人を、生涯にわたって保護していることはあまり知られていない。
このプログラムに関わった中央情報局(CIA)元工作員が、その難しさについてワシントン・タイムズに語った。
ジョセフ・アウグスティン氏は2004年に退職するまでの28年間、この極秘業務に携わっていた。同氏によると、CIAの保護を受けた亡命者のほとんどは、名前を変え、米国で息をひそめながら新たな生活を送っているという。
保護を受けない場合は、暗殺の危険もある。旧ソ連国家保安委員会(KGB)のアレクサンダー・ザポロズスキー大佐は、KGBにだまされてソ連に帰国し、強制労働の判決を受けている。
アウグスティン氏は「亡命者保護プログラムの対象者は、CIAのスパイ活動にとって最も重要な資産だ。生涯にわたって亡命者に責任を持つ」と強調。連邦保安局の証人保護プログラムと違い、規則に従わない者がいても、保護対象から外すことはないという。
CIAは、最大で年間100人の亡命者と家族を受け入れ可能だが、上限に達したことはないとみられている。保護を受けているのはロシア人、中国人、北朝鮮人、イラク人などで、大部分が男性という。
「数年間で数百人が保護を受け、出ていく人はいない。人によって強い監視が必要なこともある」と、警戒の度合いは人それぞれだ。アウグスティン氏によると、ロシアの工作員による攻撃に対しては特に警戒が必要だったという。英国では、元KGBのアレクサンドル・リトビネンコ氏が06年にKGBの工作員に毒を盛られ、元情報機関員、セルゲイ・スクリパル氏は18年に暗殺の標的となった。
主要な脅威はロシアだが、中国も警戒の対象となっている。
アウグスティン氏によると、CIAの保護プログラムの対象となった中国の重要人物はすべて、中国政府の追跡を恐れて、身分を変えて生活している。
アウグスティン氏は「中国人亡命者は、ロシア人よりも警戒心が強い。報復が怖いからだ」と指摘した。
CIAは、名前や身分の変更を強制することはできない。家系への愛着から名前の変更を嫌がる亡命者も多いという。だが、中国人亡命者全員が説得に応じ、名前を変えているのは、中国政府からの脅威が分かっているからだとアウグスティン氏は指摘した。
「警戒心は強い。大学、孔子センターなど中国人コミュニティーがあり、実名で暮らしていれば、容易に発見されるからだ」
この警戒心のおかげで、これまでに中国情報機関に発見された中国人亡命者はほとんどいないという。
アウグスティン氏は、中国人暗殺団の方がロシアよりもその脅威は「深刻」だと主張、「チャンスがあれば、実行する。引き金を引く」と述べた。
同氏によると、CIAは、亡命させることを目指しているわけではなく、自国でCIAにひそかに協力させるのが理想だという。だが、スパイ活動が発覚した場合は、米国に脱出させ、保護することが必要になる。