ハリス副大統領の移民対策は逆効果か

(2021年6月14日)

Vice President Kamala Harris, center, makes a double thumbs up sign toward members of the media after exiting Air Force Two after a technical issue required the plane to return to Andrews Air Force Base, Md., Sunday, June 6, 2021, after it had already started begun flying to Guatemala City. (AP Photo/Jacquelyn Martin)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Sunday, June 6, 2021

 カマラ・ハリス副大統領は、国境の問題をめぐって初めての外交に乗り出す。中米に向かい、国家建設に40億㌦の提供を約束し、国民が自国で暮らせるよう状況の改善を求める予定だ。

 この戦略は以前にも試みられたが、アナリストらは、容易ではなく、短期的には、逆に米国に来る人々が増加することもありうると指摘する。

 移民研究センターの事務局長、マーク・クリコリアン氏によると、メキシコの所得は、メキシコとカナダの指導者らが1992年に自由貿易協定(NAFTA)に調印してから増加したが、ちょうどその時期、不法移民が「歴史上かつてないほど」急増したという。

 最近では、欧州連合(EU)がアフリカの20カ国以上で、移民の急増を阻止することを目指して、社会の建設を試みるプロジェクトに取り掛かった。国民がいたくなるような魅力的な国にするために、雇用、コミュニティー、統治機関に50億ユーロ(約6640億円)の供与を約束した。

 最初は機能しているように見え、移民は減少した。ところが、移民政策研究所の政策アナリスト、カミーユ・ルコズ氏によると、再び増加し始めた。これは、経済開発が進むと固定収入が増え、国外に出るための資金をためやすくなるからであることが明らかになっている。

 「雇用創出、就職、移民の間の関係は、非常に複雑で、逆効果となることもある」

 このような失敗を避けることが、ハリス氏の課題となる。ハリス氏は、6日にグアテマラに、7日にメキシコに向かう。バイデン米大統領は、なぜ、人々が自国を離れ、北に向かうのかを判断する権限をハリス氏に与えている。

 ハリス氏は、まだ学習段階だと、初めての外遊に期待しないよう述べている。

 記者団に対し2日、「誠実に、実のある話し合いをする。できるだけ話を聞き、考え方を共有する」と述べた。

 ハリス氏は、グアテマラとメキシコの指導者とは何度か会談しているが、ホンジュラスとエルサルバドルとの関係は緊張しているようだ。

 グアテマラには、「汚職への対処、犯罪、暴力への対応、特に弱い立場の人々への暴力への対応の必要性について、率直で誠意のある話し合いをする必要がある」と伝える意向だという。

 ハリス氏は先月、米財界の指導者らとの会合を開催し、解決への具体的な一歩を踏み出し、中米での経済的な機会を増やすよう促した。バイデン政権は、中米からの外国人労働者数千人分のビザを確保している。

 バイデン政権は移民の増加に関して、国境を越えたり、国外退去への大きな心配なく定着したりしやすいといった米側の要因よりも、国民を国外へと向かわせる相手国側の要因に焦点を合わせている。

 アナリストの多くは、この考え方に疑問を呈している。

 クリコリアン氏は「根底にある原因をめぐる話し合いをして、中米で有効な何かが得られるとは思えない。だが、仮定の話としてはいいだろう。これは、実際には国境管理の強化の話であり、それに代わるものはない」と述べた。

 クリコリアン氏は、この30年間のメキシコの出来事を挙げて、警告した。世紀の変わり目から毎年100万人以上が国境を超え、2010年までに次第に減少していった。

 クリコリアン氏は、「移民圧力は事態が進むとともに強くなり、そのうちに収まっていった」と述べた。

 メキシコ移民が減少したことで、移民は5年~10年前の間に、近代史上最低水準にまで減少した。しかし、中米からの移民が2014年から急増し始め、移民は再び増加した。

 ルコズ氏は、投資が正解でありうる理由は数多くあると指摘、対象を絞って実施するよう提案した。

 ルコズ氏は、バイデン政権は、中央政府、地方自治体と協力し、コミュニティーに直接入っていこうとしており、これは正しい方法だと述べた。

 また、外国人労働者用のビザを設けるなどの法的な手段の拡大も重要だと指摘した。支援を受け取る側に説明責任を果たさせる方法を見つけることで、これまでも米国の支援の取り組みを邪魔してきた無駄を削減できるという。

 「この構想の成功全体について言うなら、投資は必要だ」

 ハリス氏は、このところ民主的統治が失われているようだとメキシコとグアテマラの指導者らを非難し、自国の移民への管理を強化して北上する人の流れを止めるようこれらの国に求めるよう活動家グループから圧力を受けている。

 活動家グループの連合組織は16日、「厳しい移民への取り締まり、抑止を優先し、保護を受けられなくすれば、命懸けで逃げ出す数多くの家族や個人を危険にさらすことになる」と表明した。

 別の問題もある。中米の国々に変革の意思があるかどうかだ。その一つに送金がある。米国にいる自国民からの資金の流れだ。

 世銀によると、2019年の送金額は、グアテマラで国内総生産(GDP)の14%、エルサルバドルでは21%、ホンジュラスは22%を占めた。アナリストらは、新型コロナウイルスの流行で送金は減少すると予測していたが、これまでの様子を見る限り、記録的な額に増えている。

 クリコリアン氏は、この種の資金は政府にとって麻薬のようなものであり、それによって変革の可能性が失われる可能性があると指摘する。

 ハリス氏が移民問題に取り組むことをめぐって論争が起きている。

 バイデン氏がハリス氏を起用したとき、記者、専門家らはすぐにハリス氏を「ボーダーツァー(国境の皇帝)と呼んだ。ホワイトハウスはすぐに、ハリス氏の役割は、入国を阻止することではなく、自国から出る人々の流れを止めることだと説明した。

 だがこの説明では、ハリス氏の国境訪問の要求を鎮められなかった。ハリスが国境を訪れることはなさそうだ。少なくとも、状況が落ち着くまではない。

 国境をめぐる問題以外にも、ハリス氏が抱える困難な外交課題はある。

 中米に資金を投入することは新しいことではない。

 議会調査局は、2019年の報告で、米国はこの年までの4年間に26億㌦を「地域の経済的繁栄を促進し、安全性を高め、統治を強化する」ために投入したことを明らかにしている。これはバイデン政権が今、話し合っていることと変わらないようにみえる。

 共和党のトマス・ティファニー下院議員(ウィスコンシン州)は、ハリス氏が国境の状況を沈静化させたいなら、グアテマラよりもっと南に行き、パナマの情勢を見る必要があると指摘した。

 パナマは、ブラジル、エクアドル、ペルーなどから米大陸を北上する移民にとって難所となる。ティファニー氏は、ダリエン地峡近くの村から帰ってきたばかりだ。ダリエン地峡は、徒歩で移動すると通過せざるを得ない原生林であり、北上する移民にとって非常に危険な地点とされている。

 ティファニー氏はワシントン・タイムズに、「お金を投じて問題解決と思っているなら、それは違う。問題の本質に迫っていないからだ。移民は世界中から来ている」と述べた。

 ティファニー氏はこの旅行中に、村を出発する何百人もの移民を見たという。そこで、セネガルから来たという男性に遭い、村人からは、ジャングルを徒歩で通過するアフガニスタン、バングラデシュ、ルーマニアから来た人々の話を聞いた。

 それでも、ハリス氏が中米からの移民の数を減らせられれば、大きな変化となる。

 2019年の増加の際、国境警備隊が拘束した移民、約60万~86万人は、この主要3カ国からだった。

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