同盟修復に向かうバイデン欧州ツアーのタスクリスト

(2021年6月15日)

President Joe Biden salutes as he boards Air Force One upon departure, Wednesday, June 9, 2021, at Andrews Air Force Base, Md. (AP Photo/Alex Brandon)

By Tom Howell Jr. and Guy Taylor – The Washington Times – Wednesday, June 9, 2021

 バイデン大統領は水曜日、就任以来初めてとなる外遊に出発した。

 大西洋の向こう側の国々との関係修復、コロナ感染症克服のためのワクチン戦略、経済と民主主義の先進諸国が結束してロシアや中国からの地政学上の挑発を克服し、サイバー空間で高まる脅威に対処することなどが期待されている。

 米政府高官は一週間近い一連の首脳級会合を通じて、連帯のテーマを強調することになるだろう。最初の三日間はイギリスでG7・先進国首脳会議、続いて北大西洋条約機構(NATO)の会合、そして来週水曜日にスイスで、ウラジミール・プーチン・ロシア大統領との会談が予定されている。

 米、英、仏、独、伊、カナダ、日本の首脳によるG7会合は、2019年以来初めとなる。バイデン大統領は、これを機に協調のメッセージを明確に発信して、トランプ前大統領の政権中に低下したG7の影響力を回復したい意向を明らかにしている。

 G7の中心的な目標は強力な民主主義勢力の「同盟強化」であり、「プーチンと中国に対し、欧州と米国が緊密に結束していることを明示することだ」、バイデン大統領はワシントンを出発した水曜日に語った。

 「これは私がアメリカの大統領になって初めての外国訪問です。私はG7に参加し、次いでNATO閣僚会議に参加した後、プーチン氏に会い、私が彼に伝えたいことを率直に伝えたいと思います」、バイデン大統領は英国到着直後に、アメリカ空軍の兵員たちに語った。「行く先々で、本来のアメリカが戻ったこと、民主主義諸国が一緒に立ち上がって現在の困難な課題や、将来にとって大事なテーマに取り組んでいることを強くアピールしたい」と語った。

 バイデン大統領は前任者と対照的な姿勢を強調し、同盟関係と多国間主義を取り戻す、と言明した。トランプ前大統領は二国間交渉を好み、欧州連合(EU)やNATOの意義を疑問視してみたり、貿易戦争の火に油を注いだ。NATO加盟国に対しても米国と比べ、防衛に十分な代価を払っていない、タダ乗りではないか、と批判したこともある。

 そうしたことから米欧関係の専門家は、週末のG7会合が非常に重要なインパクトをもたらすと予想している。G7は一時期、ロシアを含んだ「G8」と称していたが、ロシアがウクライナからクリミア半島を併合した結果、2014年にこの先進国グループから排除され、それ以後は数回の首脳級会合を行ってきた。

 元々のG7グループは1970年代に石油・エネルギー危機が懸念されて、経済先進の民主主義諸国が世界経済に安定性をもたらすために作られた。近年では中国の経済力が強まる中で、自由市場経済の一体性を強調するフォーラムとして機能している。

 「今回の会議は9.11(同時多発テロ事件、2001)直後の会合に匹敵する、極めて重要なG7首脳会議になるかもしれない」、戦略国際問題研究所のマシュー・グッドマン氏は、ロシアもメンバーだった当時に米国のジョージ・ブッシュ政権が対テロ戦争への支援を呼びかけたG8サミットを想起して、そう語った。

 この週末のG7の議題としては、コロナ・ワクチンの製造と流通を地球規模で増加させること、多国籍企業に対する課税制度を改革すること、気候変動と闘いつつ、ハイテクに基づく産業育成に必要な投資を増加させることなどだ。

 しかしグッドマン氏は最近の電話会見の中で、会合の際に「多くの私的な会話が中国・ロシア関連のものになるだろう」と指摘した。

 また中国が「一帯一路構想」の名の下で、アジア、アフリカ、東欧、南米諸国のインフラ・プロジェクトに注ぎ込んでいる数十億ドルの資金力に対抗すべく、G7のリーダーたちは地球レベルの投資補助金と、そのシステムを作り出したい意向だ。

 私的な会話の中でG7首脳たちは、「一帯一路構想に対抗する投資補助ばかりでなく、社会的腐敗など価値観に関わる問題も話し合うだろう。」グッドマン氏はさらに、「海上安保と台湾についての共通の懸念をめぐって、鋭い討論が交わされるだろう」と付け加えた。

 中国は最近、南シナ海や台湾海峡で攻撃的な姿勢を強めており、米国やG7の他の国々とも連帯している台湾の民主主義がますます脅威にさらされている。

ロシアの懸念

 バイデン政権の高官は、今回の外遊での様々な会談が、ロシアにひとつの焦点を置いたものになると見ている。米政府機関や企業を標的に増加している「ランサムウェア」などのサイバー攻撃に対して、バイデン大統領はG7としての「行動計画」を策定することを示唆している。

 米国の情報筋によれば、そうした攻撃はクレムリンに支援されているという。つい最近も、米国内の燃料供給で動脈のような役割を果たしている「コロニアル・パイプライン」社や、食肉加工の主要企業「JBS」がサイバー攻撃を仕掛けられ、新たな懸念を生んでいる。

 ハッカーグループは最近、米国北東部の輸送システムや、アイルランドの保健システムにも同様の攻撃を行った。バイデン大統領が欧州に向かう前、国家安全保障問題担当・大統領補佐官のジェイク・サリバン氏は、西側の同盟諸国がこうしたハッキングを撃退し、ハッカー集団を庇護する国々に対抗する行動規範を策定する必要がある、と語っている。

 この月曜日に寄せたコメントでサリバン補佐官は、ランサムウェア対策では暗号通貨が「核心的なものだ」と指摘し、G7での討論でもこの問題が中心になるだろうと語った。同補佐官はさらに、6月14日にブリュッセルで予定されるNATO加盟国の会合でも、「サイバー攻撃、なかんずく社会に与える影響の大きい主要インフラに対するサイバー攻撃の脅威が話し合われる」と指摘した。

 「その件は優先事項であるべきだ」とサリバン補佐官は強調し、「今回の外遊のあらゆる機会を捉えて、この問題を取り上げることになるだろう」と語った。

 ホワイトハウス関係者は、バイデン大統領がプーチン大統領と6月16日にスイスで会談する際にも、サイバー攻撃の問題が取り上げるはずだ、と語った。

 その米ロ首脳会談の前に、G7指導者たちは、多国籍企業への課税を15%を下限として各国が連携するという、非常に微妙な問題を取り上げる。またコロナ・ワクチンを発展途上国に一層提供する方策についても話し合われる。

 バイデン氏は水曜日の出発の際に、数日中に世界的なワクチン戦略を発表するつもりだと報道陣に語った。大統領はワクチン製造を促進するために、ワクチンに関する特許保護規制を緩和するアイデアを支持している。しかし欧州の多くの国は、このアイデアに冷淡で、製薬会社の知的財産権保護をベースにした代替案を世界貿易機構に提出している。

 ホワイトハウス高官は大統領発表を出し抜くことはしないものだが、この計画に近い筋によれば、米政府は5億回分のワクチンを購入し世界中に提供する計画で、そのうち2億回分は年内に、3億回分は2022年前半に提供するという。

 「G7首脳会談前に周知させて、G7の他の国々やEUに数値を引き上げさせることを期待しているのだろう」-デューク地球保健革新センターの創設メンバーの一人、クリシュナ・ウタクマール氏は指摘した。同氏によれば専門家の推定では、G7とEUが合計で、今年末までに少なくとも10億回分のワクチンを寄付するだけの供給が見込まれるという。各国のワクチン接種分を確保しても、20億回分の供給が可能だとみる。

 米政府筋は今回の外遊のより全般的な狙いは、この数年間、同盟としての共同行動をほとんど実現できなかったので、同盟を結集することだと指摘した。「この外遊の主目的は、ジョー・バイデン大統領の外交路線に基本的な弾みをつけることで、世界の民主主義勢力を結集させ、我々の時代が直面する最大の課題に対応していくことだ」、サリバン補佐官は語った。

 大統領はこの外遊にファーストレディーのジル・バイデン夫人を同行している。ファーストカップルは、欧州で唯一となる米国空軍の燃料補給拠点でもあるミルデンホール英国空軍基地に現地時間で午後8時ごろ着陸し、G7会場となるコーンウォールに向かうまでの時間に、米空軍兵士たちにスピーチするため待機していた。

 「皆さんが当地に駐屯され、遂行されている一切に感謝の言葉を送りたい」、バイデン大統領は男女の兵士・兵員たちに語った。「ジルと私は世界を回るたび、米軍部隊やその家族の方々と一緒に過ごすことほど楽しい時間はありません。」

 米国の新大統領として初めての外遊でハイライトのひとつは、英国のバッキンガム宮殿が来年の英国女王即位70周年を祝う国家行事を準備しているタイミングで、エリザベス女王と面会することだろう。

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