イルハン・オマル議員の反イスラエル・反米レトリックで、下院民主党幹部会に広がる亀裂
By Joseph Clark – The Washington Times – Thursday, June 10, 2021
アメリカ合衆国議会の下院・民主党イルハン・オマル議員の最近の発言が、米国とイスラエルをハマスやタリバンと同列に置くようなものだとして、ユダヤ系民主党議員らが対決姿勢を強めている。
多くのユダヤ系民主党議員は今週、オマール議員のレトリックが「根深い偏見」を反映したもので、「テロ組織の犯罪性をあいまいにする」との非難声明を発表した。
これらユダヤ系議員たちは、下院のナンシー・ペロシ議長と議会指導部の全員に対して、オマール議員に一線を越えないよう注意させた。しかし同議員のレトリックそのものを非難したり、彼女に懲罰的措置を講じることは要求しなかった。
さらに、これらの議員たちは、米国とイスラエルに対する「正当な批判」は歓迎するが、民主主義が機能している両国と、ハマスやタリバンのようにテロを実行するグループとを「同等に扱う過ち」を犯せば、偏見を助長し、国民の今後の平和と安全保障の促進に妨げとなる」と主張した。
それでも、イスラエルに敵対的姿勢を強める極左議員グループと、それ以外の民主党幹部議員たちとの亀裂は深まっていた。
極左議員グループの一部はオマール議員を弁護しながら、ユダヤ系民主党議員たちはイスラム嫌いだ、と批判した。
「@IlhanMN(オマール議員のツイッタ名)に対する攻撃をやめなさい。私たちを攻撃するのはやめなさい」、民主党コーリ・ブッシュ議員(ミズリー州選出)は訴える。「黒人女性が人権擁護を訴えて立ち上がったとき、それを共和党議員がなじるなら驚くこともありません。しかし民主党議員が辛く当たるのは胸が痛いことです。私たちは皆さんの同僚じゃないですか。直接話したらどうですか。黒人嫌いもイスラム嫌いも、もうたくさんです。」
民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員(ニューヨーク州選出)も次のように語った。「相も変わらない中傷や、意図的に誤ったイメージをなすりつけ、我が党の幹部会が「@IlhanMN」を公然と標的にするなど、うんざりです、もうたくさんです。彼女に対して私的に忠告しないで、オマール議員をめぐる一連の報道を焚き付ければ、彼女がどんな危険に晒されるか考えたこともないのでしょうか。」
一方、下院の共和党議員たちは、ペロシ議長と議会幹部たちがオマール議員を十分に譴責していない、と批判した。
「ペロシ議長および民主党の議員全員が、何故、イルハン・オマール議員の劣悪な発言を非難しなかったのか」、下院共和党会議・議長のエリーゼ・ステファニク議員(ニューヨーク選出)は詰問した。
オマール議員はミネソタ選出の民主党議員で、極左の通称「行動隊」に属しているが、これほどの不快を与えた問題発言は、彼女がアントニー・ブリンケン国務長官に、国際刑事裁判所に対する米国の支援に関して質した後の月曜日、ツイッター投稿したものだ。
「我々は人道に対する犯罪の被害者すべてに関して、同等の説明責任を果たし正義を尽くすべきだ。」オマール議員は下院外交委員会の公聴会でもこう述べていた、「我々は米国、ハマス、イスラエル、アフガニスタンおよびタリバンによって犯された想像を超える残虐行為を目にしてきました。」
ユダヤ通信社とエルサレム・ポストの報道によると、このツイートは民主党内で直ちに波紋を起こした。下院の非公式なユダヤ民主党会議に属する25人が水曜日に会合し対応を検討したが、オマール議員をやり玉に挙げるべきか、所属議員の間で意見が分かれた。
オマール議員はソマリア系米国人として、またアフリカ生まれの帰化市民としては、合衆国議会に選出された初めての議員だ。
ブラッドリ・シュナイダー議員(イリノイ州選出)が率いるユダヤ民主党会議のメンバー12人が、その日のうちに書かれた声明文に共同署名をした。
「米国とイスラエルを、ハマスやタリバンと同列に置くことは甚だしい見当違いであり侮辱だ」と同議員は言明した。「法に支配される民主主義の国と、テロに従事する卑劣な組織との違いを無視していれば、元々の論旨を疑わせ、最悪は発言者の根深い偏見を晒すばかりだ。」
シュナイダー議員に賛同して声明に署名したのは次の議員たちだ。ジェイク・オーチンクロス(マサチューセッツ州)、テッド・ドイチ(フロリダ州)、ロイス・フランクル(同)、ジョシュ・ゴットハイマー(ニュージャージー州)、エレイン・ルリア(バージニア州)、キャシー・E・マニング(ノースカロライナ州)、ジェロルド・ナドラー(ニューヨーク州)、ディーン・フィリップス(ミネソタ州)、キム・シュライア(ワシントン州)、ブラッド・シャーマン(カリフォルニア州)、デビー・ワッサーマン・シュルツ(フロリダ州)。
これらの議員たちは次のように求めた、「我々はオマール議員に対して、米国とイスラエルをハマスやタリバンと同一カテゴリーに含めた言葉の真意を明確にするよう督促する。」
オマール議員は水曜日遅く、ツイッターで以下のように反論した。
「私の賛同が必要のときは電話をかけてくる同僚議員たちが、電話もくれず、声明文を発出して釈明を要求してくるとは情けない話です。」さらに別のツイートではこうも語った、「この声明文の端々に滲むイスラム嫌いの表現は不快極まりないものだ。この声明文に署名した人たちから絶え間なく受ける嫌がらせと、言論封殺の圧力は耐え難いものだ。」
別のツイートでオマール議員は、そもそも月曜日の発言は偏見などとは関係がなく、国際刑事裁判所で未解決の事案に関するものだったと述べた。
一方、オマール議員の事務所は今回の騒ぎについて、いくつかの声明を発表した。
最初の声明はオマール議員の広報責任者ジェレミー・スレビン氏が出して、極右の勢力が一連の騒ぎに乗じ、殺害の脅迫まで出した、と次のように非難した。
「相も変わらず極右の連中は、進行中の調査に関する専門的な質問を材料にして、オマール議員への反感をまき散らしている」、スレビン氏は主張した、「そのせいで、すでに議員本人と我々スタッフへの殺害の脅迫が増えている。さらに民主党の同僚議員たちは、オマール議員が犯罪捜査に関心を持っていることを取り上げて、「テログループを庇おうとしている」などと非難し、彼女によってイスラム嫌悪を煽らせている。
オマール議員はその後、月曜日の発言を釈明する声明を出し、ブリンケン国務長官の証言の際に彼女が発言したのは、国際刑事裁判所で進行中の捜査に関するものであって、ハマスやタリバンを米国やイスラエルと同一視させようと意図したものではないと説明した。
「ハッキリ言って、あの話の流れは国際刑事裁判所で扱われている特定の事件に関する説明責任であって、ハマスとタリバンを米国・イスラエルと対比して評価しようとしたものではなかった。」そしてオマール議員は続けた、「私はテロ組織と、しっかりした司法制度を備えた民主主義国とを同一視などしていません。」
今回の出来事は、オマール議員と極左議員グループが長年扇動してきた発言に加えて、先月発生したイスラエルとハマスの軍事衝突について、反イスラエルの対決姿勢を露わにしたことからエスカレートしたものだ。
例えば2019年3月、オマール議員は米国政治におけるイスラエルの影響について発言した際に、合衆国下院の一部議員が反ユダヤ主義だと指摘し、下院が議決したことがある。その後、オマール議員は謝罪をしている。
オマール議員へのけん責は当初、議員不信任として始まったが、ペロシ議長と配下の幹部たちは、広義のヘイトスピーチを非難する主旨の決議に和らげ、オマール議員を名指しすることもなかった。
この一件でペロシ議長と議会指導部はオマール議員を叱責したものの、同議員の説明で十分だとして、最終的に同議員を窮地から救ったわけだ。
「米国とイスラエルの政策に関する正当な批判は、言論の自由および民主的議論という価値観で保護されている」、木曜日の声明は述べている。「実際、そうした批判は我々の民主主義を力強く、かつ健全に保つために不可欠だ。しかし米国やイスラエルのような民主主義社会と、ハマスやタリバンのようにテロを遂行するグループとを同一視する誤りは偏見を助長し、すべての人々の平和で安全な将来に向かう道を妨げるものだ。」
同声明はこう付け加えた、「我々は米国やイスラエルと、ハマスやタリバンとの間に道徳的な等価性はない、というオマール下院議員の説明を歓迎したい。」