「文化革命」を起こすことが批判的人種理論の狙い
By Kery Murakami – The Washington Times – Wednesday, June 16, 2021
米ニューヨーク州バッファローの中学生たちは今年、学区の「奴隷解放カリキュラム」の一環で、「米国は人種差別社会として建国された」というエッセーを読むよう指示された。
中学生が宿題として読まなければならなかったエッセーには、「すべての白人は組織的人種差別の固定化に関わっている」と書かれていた。
シアトルの公立学校では、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)運動に触発されて設けられたプログラムの一環で、批判的人種理論(CRT)が高校3年生(日本の高校2年生に相当)に教えられることになっている。
批判的人種理論の中心にあるのは、米国の法律や制度は本質的に人種差別的であり、奴隷制度が廃止されてから150年以上、公民権運動の進展から数十年が経過した今も、白人は黒人やその他の有色人種を抑圧していると捉える考え方だ。
この理論は、米国の学校や職場、政府機関で急速に広がっている。米法曹協会によると、この理論は1970年代に定着した批判的法律理論と呼ばれる分野から発展したという。
批判的法律理論では、法律は純粋なものという考え方を捨て、人種や階級など社会的偏見が法律に影響を与えていると論じられている。
批判的人種理論の信奉者たちは一般的に、人種差別は個人が行うものだという伝統的な概念を拡大し、米国の民主主義に組み込まれていると主張している。
言い換えれば、白人は自分を人種差別主義者ではないと思っていたとしても、人種差別的制度の一部であり、そこから利益を得ていることになる。
批判的人種理論の草分けの一人が、ハーバード大学で教鞭(きょうべん)を執ったデリック・ベル氏だ。
保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の批判的人種理論に関する論文によると、2011年に他界したベル氏が、この運動の創始者だという。
「私の意見では、批判的人種理論は文化革命が文化の急進的分析から始まることを認識している」。ベル氏は、ヘリテージ財団が引用した論文でこう記している。
保守系シンクタンク、マンハッタン研究所が出版する「シティー・ジャーナル」は、批判的人種理論が実践されている主な事例として、バッファローの中学生たちが読むよう指示されたエッセーを取り上げている。
「社会学における組織的人種差別の定義」と題するこのエッセーは、社会学者のニッキー・リサ・コール氏が執筆したもので、「すべての白人は組織的人種差別の固定化に関わっている」と主張している。
エッセーは組織的人種差別について、「米国は人種差別社会として建国されたという調査の裏付けのある主張に基づくものであり、人種差別は社会にあるすべての社会機構、構造、社会関係に組み込まれている」と論じている。
オーストリアのスティリア(シュタイアーマルク州)にあるグラーツ工科大学に所属するコール氏は、人種差別は至る所に存在すると書いている。「人種差別は法律、政治、経済、社会機構の中に存在する。意識的にしろ、無意識にしろ、われわれの考え方や行動の中にも存在する。人種差別はわれわれの周りや内面のあらゆるところにある。だからこそ、これに戦うのであれば、あらゆる場面で人種差別に抵抗しなければならない」