米国防総省、クラウド導入計画を中止
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Tuesday, July 6, 2021
米国防総省は6日、100億ドルを投じた「ウォークラウド」プロジェクトを正式に中止し、マイクロソフト社との契約解除へと向かっている。
今後、政治的、法的に問題となっている契約の遂行を複数の企業で進めていく意向だ。
国防総省とアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、マイクロソフトが勝ち取っていたこの10年間の契約をめぐって、大規模な法的、政治的な争いの中にある。アマゾンは、トランプ前大統領が、アマゾンとその創業者、ジェフ・ベゾス氏を個人的に嫌っていたため、「防衛基盤統合事業(JEDI)」の契約をマイクロソフトと交わすよう、国防総省に公私にわたって圧力をかけたと主張している。
国防総省は、これらの主張を強く否定している。
今回の決定により、国防総省は、アマゾンとの間の厄介で長引いている法廷闘争を回避できる可能性が出てくる。2019年に予想に反してマイクロソフトがJEDI受注を獲得したことを受けて、アマゾンは正式な抗議を提出していた。最近下された連邦裁判所の判決によって、トランプ氏、マティス元国防長官ら高官が、正式な宣誓証言に直面する可能性が出ていた。そうなれば、訴訟はさらに何年も要し、国防総省の内部文書や、国防総省の幹部とホワイトハウスの元高官らとの間の非公開の議論が公開されるという事態になった可能性もあった。
そうなれば、国防総省はこのクラウド構想を進められなくなっていた。JEDIを中止することで軍は、アマゾンとの裁判を続ける道を選んだ場合よりも、短期間で計画を推進できるようになるとみられている。
当局者らは6日、訴訟問題だけを理由に方針を変更したという考えには否定的な見方を示した。
国防総省の幹部らは、2019年10月にマイクロソフトがJEDI契約を獲得して以後も、軍の要求は変化してきていたと主張。この1年8カ月の間に、複数の企業を使ってクラウドコンピューティングの要求基準に対応する方が、現実的で、好ましく、コストも抑えられると考えられるようになったとしている。
国防総省のジョン・シャーマン最高情報責任者(CIO)代理は、電話会議で記者団に対し、「JEDI構想は崇高な意図をもって練られたが、…当時の省の要求は今とは違っていた。状況は進んでおり、新たな道を歩む必要がある」と述べた。
しかし、JEDI計画は何年もかけて開発され、当局者らは、膨大な量のデジタルデータを1カ所に集中させることの利点を繰り返しアピールしていた。国防総省は2018年に最終的な要件を発表、最終的にはアマゾンとマイクロソフトの2社だけが候補に残っていた。
最近まで国防総省は、一つの民間企業による一つのクラウドシステムが最も効率的で、費用対効果も高いと主張していた。
しかし、JEDIが頓挫してしまった今、シャーマン氏は、国防総省が「統合戦闘員クラウド能力(JWCC)」と呼ばれる新しいクラウドへの取り組みを始めると述べた。国防総省の当局者によると、「限られた数のソース」から提案を求める予定で、具体的にはマイクロソフトとアマゾンとなるという。