破綻した「大きい政府は良い政府」神話

(2021年10月28日)

2021年10月20日(水)、ワシントンのキャピトル・ヒルで行われた記者会見で、ジョー・バイデン大統領の「Build Back Better」計画について語るカリフォルニア州のナンシー・ペロシ下院議長(AP Photo/Andrew Harnik)

By Editorial Board – The Washington Times – Wednesday, October 20, 2021

 

 政府は個人にできないことをするために存在している。だから、より「大きな政府」の方が、それだけより効果的に事を成し得ると思うのは自然である。

 

 さらに、中央政府が新型コロナウイルス感染症予防策に、より強い筋力を発揮できるなら、その死亡数は、より少なくなると結論付けたくなる気持ちも理解できる。新型コロナ問題は、そういった幅広く浸透した思い込みの中心にしっかりと根を下ろし、公衆衛生の名目ですでに数兆㌦も使われているのに、さらに屋上屋を重ねるがごとくパンデミック後の再建費に数兆㌦の予算を求めるバイデン大統領の論拠に、批判の声が上がっている。

 

 「大きい政府は良い政府」は神話だ。

 

 米国の成果を、経済協力開発機構(OECD)の37の同盟国の成果と比べても、パンデミック対策費、政府支出の大きさ、中央集権化された権限の程度、それらの結果としての公衆衛生関連の支出等々の間に相関関係はほとんど見られない。これは、自由市場を支持するケイトー研究所が9月に発表した報告「大きな政府に対する新型コロナの影響は弱い」の結論である。

 

 報告は、新型コロナ感染症が大流行する以前、米国は、世界的流行に対する準備計画の判断基準と見なされていたと指摘している。ジョンズ・ホプキンズ大学の「グローバル保健指標(GHI)」は、2019年の米国の準備策にスコア83.5という世界一のランク付けをした。しかし、2021年5月までに、米国は、100万人当たり1879人のコロナ死という惨憺(さんたん)たる状況に陥った。

 

 対照的に、GHIスコア47.3のイスラエルで、新型コロナによって命を失ったのは100万人当たりわずか692人だった。ボクシングの伝説上の人、マイク・タイソンはかつて「誰もが作戦を持っている。パンチを食らうまでの話だがな」と言った。

 

 伝統的に長い間続いている財政豊かな政府からの給付金が市民を病魔から守ることができるならば、イタリアは新型コロナの最悪の惨劇を免れたことであろう。ケイトー研究所によると、イタリアが2019年に、国内総生産(GDP)の19.6%を現金給付に費やした。そのような大盤振る舞いにもかかわらず、イタリア人は依然として、パンデミック以前の10万人当たり169人という「超過死亡」の上を行く率を体験した。超過死亡とは、予想される死者数を実際の死者数が上回ることを指す。

 

 新型コロナがイタリアに根を下ろすや否や、イタリアの新型コロナ死亡率は、100万人当たり2119人に急増した。ところが米国は、それほど厳しくなく、GDPの8.5%をパンデミック前の福祉計画に支出し、10万人当たりわずか145人の超過死亡しか経験していない。米国より高い新型コロナ死亡率を記録している高額支出のイタリアが存在することを見て、バイデン氏は、彼の数兆㌦の社会的セーフティーネット(SSN)は決してパンデミック後の解決策にならないことを認めるべきである。

 

 ケイトー研究所が行った各国間の比較研究では、対新型コロナ闘争の期間中に中央政府の権力が地方自治体の権力より強く働いたということは明らかになっていない。中央政府に依存するニュージーランドが、おおむね無傷であったのに、中央集権国家のスロバキアは、新型コロナの襲撃を受けて散々な目にあった。また、ドイツもスペインも強力な地方自治体を誇っているが、ドイツの公衆衛生のインフラが良好に機能する一方で、スペインの場合は違う。

 

 バイデン・スタイルの無節操に歳出を要求する政治が、必ずしも望ましいわけではない。これが望ましいなら、高額支出をいとわない中央集権的諸国は対新型コロナ闘争での成功度を表す福祉レベルチャートで、最優秀国の欄に名を連ねるはずである。しかし、そうはなっていない。

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