中国 南太平洋で覇権拡大へ-米専門家ら警戒呼び掛け
By Bill Gertz – The Washington Times – Friday, July 15, 2022
バイデン政権は、太平洋島嶼(とうしょ)国への影響力強化を狙う中国に対抗するための取り組みを強化している。米当局者、外交専門家らは、中国は太平洋での米国の影響力を削(そ)ぎ、新たな軍事基地を設置する機会をうかがっていると警告した。
ハリス米副大統領は12日、フィジーで行われた地域機構「太平洋諸島フォーラム(PIF、18カ国・地域)」首脳会議でオンラインで演説し、「厄介者がルールに基づく秩序を破壊しようとしている」と中国を非難、「太平洋島嶼国は、もっと外交的関心と支援を受けるべきだった」と関係強化へ方針を転換することを明確にした。
中国の王毅国務委員兼外相は、5月末から10日間にわたって太平洋島嶼国8カ国を訪問したばかり。安全保障などの多国間合意には失敗したものの、2国間ではさまざまな合意を交わしている。ソロモン諸島との安保合意は、軍事基地建設への布石との見方が出ている。
ハドソン研究所「中国センター」ディレクターのマイルズ・ユー氏は、「中国は南太平洋島嶼国を支配する必要性に迫られている。世界的な覇権達成のための手段とみているからだ」と指摘、この地域での軍事的プレゼンス拡大によって、米国を中国沿岸からさらに遠ざけようとしているとの見方を示した。
宇宙開発の拠点としての利用も目指しているとみられ、キリバスでは既にタラワ環礁に衛星追跡基地を運用している。
21年までフィジー、キリバス、ナウル、トンガ、ツバルの米大使だったジョセフ・セラ氏はワシントン・タイムズ紙に、中国共産党は南太平洋島嶼国に基盤を築こうとしていると指摘、「冷戦末期の1987年ごろ始まり、今も活発に進めている。広く浸透しており、危険で、有害で、悪意に満ちている」と非難した。
キリバスは、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環としてカントン島空港の滑走路延長で合意している。セラ氏は、「(滑走路が延長されれば)偵察中の(中国軍の)航空機が立ち寄るようになることもあり得る」と危険性を指摘した。マーシャル諸島のクエゼリン環礁にある米軍ロナルド・レーガン弾道ミサイル実験場、ホノルルのインド太平洋軍にも近い。
ユー氏によると、中国は資金を投入し、経済の対中依存を強めさせることで、経済的、政治的影響力を行使するてこにしようとしている。その上で、安保合意を取り付け、軍事基地の建設につなげる意向だという。ユー氏はこれを阻止するために、オーストラリア、ニュージーランドなど域内の同盟国との連携強化をバイデン政権に要求している。
トランプ前政権の大統領特別補佐官で、米外交評議会上級研究員のアレクサンダー・グレー氏は、中国は南太平洋への影響工作で、軍民両用の施設、基地を獲得しようとしていると警告している。標的となっているのは、パプアニューギニアのマヌス島、フィジーのブラックロック基地、バヌアツのルーガンビル港だ。
グレー氏は、太平洋島嶼国はインド太平洋全域での米国の戦略にとって重要であり、中国は米国だけでなく、日本からインドにかけての地域の脅威となっていると警告した。