ツイッター幹部、ロシア・ボット説への反論を避けていた
By Joseph Clark – The Washington Times – Friday, January 27, 2023
ツイッター社幹部らは、ロシアのボット(一定のタスクを遂行するようにプログラムされたソフトウエア)がツイッターを乗っ取り、右派の主張を広めるために利用されているという誤った主張に内心愕然としていたが、この作り話がメディアを賑わせる中、公に反論することを避けていたことが、最新の「ツイッター・ファイル」で明らかになった。
ロシア・ボット説の中心は、連邦捜査局(FBI)の元工作員クリント・ワッツ氏が作成した「民主主義を守るための同盟(ASD)」のダッシュボード「ハミルトン68」。ツイッター上のロシアの影響を追跡すると称しているが、メディアや民主党議員によって、保守派の信用を損ね、反対意見を黙らせるために広く引用されるようになった。
内部メールから、ツイッターが自社データを分析した結果、同社幹部がハミルトン68の誤った主張について何度も議論していたことが明らかになった。
彼らは、欠陥のある党派的なハミルトン68が、リベラル派の主流から外れた意見を表明する一般ユーザーを標的にするために使用されうると警告した。
ツイッターの信頼・安全部門の責任者だったヨエル・ロス氏は、同僚にこう書き送っていた。「私たちは、これにとことん反論する必要があると思う」
ロス氏はその後のメールで、このハミルトン68が「本物の右派系アカウント群をロシアのボットと誤って非難している」と警告した。
「事実上、ツイッター上の保守派かいわいの会話を取り上げて、ロシア人だと非難するということになっている」と彼は書いている。
にもかかわらず、識者がロシア・ボット説を用いて、ツイッター上で人気を博した保守的なハッシュタグを否定したため、この主張をメディアが取り上げることになった。
ASDは、ワシントン・タイムズに提供したファクトシートで、ハミルトン68のやり方を擁護、ファクトシートには、ハミルトン68によって「ロシアによるネット上のプロパガンダと偽情報が見えるようになった」と記されている。
ASDのファクトシートによると「ハミルトン68の手法からは、このネットワークが『ロシアのボット』とみることはできない。それは、ロシアのネット上の影響活動に、意識的であれ、無意識であれ従事している600以上のツイッター・アカウントの動的リストからなるアカウントのネットワークに目を向けている」
ASDはまた、ハミルトン68の専門家が、「このツールが何をし、何をしなかったかについてメディアと一般人を教育」しようと、ハミルトン68を「激しく批判」してきた複数のメディアなどにインタビューを行ったと述べている。
これまでに開示されたツイッター・ファイルの内部メールでは、2018年に、ハミルトン68を引用し、トランプ政権関係者に対する連邦捜査局(FBI)による不正な監視を詳述したメモに関して共和党主導の下院情報特別委員会を非難したことを受けて、ツイッター幹部がいかにしてハミルトン68の存在を否定したかを明らかにしている。
FBIの不正行為と、すでに作り話であることが分かっている「スティール文書」が果たした役割を詳述した、共和党のデビン・ヌネス下院情報委員長(カリフォルニア州)の機密メモの公開を求めるハッシュタグがツイッター上でトレンド入りしており、その背後ににロシア政府系のトロールファーム(情報工作組織)があるという主張に、民主党のアダム・シフ(カリフォルニア州)、ダイアン・ファインスタイン(カリフォルニア州)両下院議員は飛びついた。
両議員はこのメモが書かれた数日後の公開書簡で、このハッシュタグが「すぐに注目を集め、ロシアの影響工作にかかわっているソーシャルメディアアカウントからの協力を得た」と主張、ヌネス氏がこのメモで機密情報を歪曲したと非難した。
また、民主党のリチャード・ブルメンタール上院議員(コネチカット州)は、ヌネス氏のメモを非難する別の公開書簡を作成、「ロシアの工作員が罪のない米国人を熱心に操っていることは非難に値する」と主張した。
これらの公開書簡は、共和党主導のメモを笑いものにしたメディア各社の記事と結びつれられ、大きく報じられた。
あるツイッター社員は、ブルメンタール氏のスタッフによるこの主張を払いのけようとした。ツイッターは「これらがボットだとは思っていなかった」からだ。
別のツイッター社員は社内電子メールで、「ブルメンタール氏のスタッフに働き掛けることは意味があるかもしれない。公開しないことは、同氏の上司にとって利益となるからだ。ただそれは、いずれブルメンタール氏のもとに跳ね返り、面目を失うことになる可能性もある」と指摘した。
ブルメンタール氏は警告にもかかわらず、手紙を公開した。
1月27日に公開された最新のメールでは、この説が広まるにつれ、ツイッターの幹部が懸念を強めていたことが分かる。
ロス氏は、「実在の人々は、証拠も手段もなく、一方的にロシアの手先というレッテルを貼られたことを知る必要がある」と書いている。
他の社員は、ハミルトン68が陰謀であることを公表することを提案した。
ある匿名の社員はロス氏へのメールで、「なぜ調査したと言えないのか…ハミルトン68を引き合いに出すのは、間違っていて、無責任で、偏っているのではないか」と指摘した。
ワシントン・タイムズが入手したASDのファクトシートは、ハミルトン68の作成方法を見れば、「アカウントリストにいくつかの本物の米国人が含まれている」理由が分かるとしている。「彼らがアナリストによってボットやロシア人であると決め付られたからではなく、使用した分析の手法によって、彼らが、米国の閲覧者らをターゲットにしたロシアのプロパガンダを拡散したり、関与したりしたネットワークの一部と認識されたからだ」と指摘している。
ロス氏は最終的に、ツイッターがハミルトン68を公式に非難することを推奨した。
しかし、他の人々は、そうすることはASDを動揺させ、ツイッターに政治的リスクをもたらす危険性があると警告した。
ツイッターの当時のグローバルポリシーコミュニケーションチーフで、後にバイデン政権でホワイトハウスと国家安全保障会議の報道官になったエミリー・ホーン氏は、「ASDにどの程度対抗できるかについては慎重でなければならない」と述べている。
ASDの顧問弁護士には、元駐ロシア大使のマイケル・マクフォール氏、クリントン政権の元大統領首席補佐官のジョン・ポデスタ氏、中央情報局(CIA)、国家安全保障局、国土安全保障省の元高官らを含む、多様で、広い人脈を持つ人々が名を連ねている。
ツイッターの当時の公共政策ディレクター、カルロス・モンジェ氏は、「私もハミルトン68をもっと公の場で非難しないことに非常に不満を持っているが、長丁場であることも理解している」と書いている。モンジェ氏は後にピート・ブティジェッジ運輸長官の上級顧問に就任した。
最新のツイッター・ファイルは、話題となった2016年の選挙へのロシアの干渉に依然、怒っている民主党議員からの激しい脅迫を受けて、ツイッターがどのようにして米政府にコンテンツの抑制を認めるようになったかを示す前回の内容を基にしている。
以前公開された内部文書では、フェイスブックが「ロシアのものと疑われる」300のアカウントを停止した後、ツイッターが上院情報特別委員会の民主党トップであるマーク・ワーナー上院議員(バージニア州)から圧力を受けたことが明らかにされている。
ツイッターの職員らは、フェイスブックのデータを確認した後、ツイッター上ではロシアと関連のあるアカウントと同様のパターンを見つけることはできなかった。
ツイッターはワーナー氏に、ロシアとつながっている疑いがある22のアカウントを停止し、ロシアとの「つながりの可能性がある」他の179のアカウントを特定したことを知らせると、ワーナー氏は記者会見を開き、ツイッターの検証は「はっきり言ってあらゆるレベルで不適切だ」と非難した。
ツイッターの公共政策担当副社長であるコリン・クロウェル氏は、ワーナー氏の会見後、社内メールで、「(ワーナー氏には)この問題をニュースのトップに据えておき」「ツイッターや他のソーシャルメディア企業に『資料を作り続けろ』と圧力をかけ続けたいという政治的動機がある」と主張した。
クロウェル氏はまた、2016年の大統領候補ヒラリー・クリントン氏から民主党は「手がかりを得た」としている。クリントン氏は自著「WHAT HAPPENED~何が起きたのか?」の販促ツアーで、ドナルド・トランプ氏の大統領選出を助けたのはロシアのプロパガンダとソーシャルメディア上の汚い手口だと非難した。クリントン氏は、トランプ氏を正当性のない大統領と呼んだ。
ツイッターは、議員や報道機関からの反発が強まる中、外国の影響に関する主張をさらに調査するため、「ロシア・タスクフォース」を結成した。
2017年10月13日の社内メモで、ツイッターの従業員は、ツイッター・ユーザーに影響を与えたロシアのアクターによる「協調的なアプローチ」は見つからなかったと主張、ロシアとの関係が疑われるアカウントの大半は「ローンウルフ(一匹狼)」のようだと指摘した。
ツイッター社員はその後のメモで、クレムリンが支配する英語ニュースチャンネル「ロシア・トゥデー(RT)」に言及、「ロシアに関する調査の第一弾…15個の高リスクアカウント、うち3個はロシアとのつながりがあるが、2個はRTだ」と指摘した。
タスクフォースは、ロシアに関連するアカウントをさらに突き止めようとデータモデルを改良し続けたが、ほとんど効果はなかった。
10月23日までに、タスクフォースは大量の予算を投入して2500のアカウントを手作業で検証し終えたが、32の疑わしいアカウントと17のロシアに関連するアカウントが見つかっただけで、ロシアに関連するアカウントはわずか二つしかなく、そこにはRTも含まれていた。