空・宇宙軍が大規模な再編計画 台頭する中国に対抗
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, February 13, 2024
米空軍の上級幹部が今週発表したところによると、空軍とその隷下にある新たな宇宙軍は大幅に再編され、空軍の戦闘部隊は中国との戦争をより効果的に戦うための「行動部隊」に転換される。
この包括的な再編計画は、空軍と宇宙軍の即応性と戦力投射能力の向上を目指している。新たな兵器を開発し、ハイテク戦闘能力を強化することが計画され、これらすべては東アジアで台頭し、覇権拡大への野心を隠さない中国に対抗するためのものだ。
空軍は12日に公表された報告書で「中華人民共和国 (中国、PRC)の軍事的進出によって、米軍が想定してきた戦争計画は実施が困難になり、中国が攻撃的な戦略を取ることで、米軍のコストは増え、戦力投射能力が削がれている」と指摘。ロシア、北朝鮮、中東のテロリストによる脅威が増している中、中国の軍事的進出は「明白で切実な脅威」と主張している。
再編で作戦航空団は、「ディプロイアブル・コンバット(派遣可能な戦闘)」航空団、「インプレイス・コンバット(現地で戦闘)航空団、「コンバット・ジェネレーション(戦闘力を提供)」航空団と呼ばれるようになる。
再編の目標は、より機敏で迅速な動きをする部隊を作ることにある。戦闘航空団は戦闘への即応能力を強化し、基地司令部は航空団への支援を強化する。
空軍はまた、サイバー戦の遂行と、サイバー攻撃に対する防衛を専門とする独立した軍団を創設する。
核戦力は老朽化が進んでおり、再編によって強化される。その3分の2は、空軍の地上配備ミサイルと核爆撃機が占めている。
ミニットマン3ミサイルとB52戦略爆撃機の戦略指揮統制を担当する「核兵器センター」は拡充される。
デービッド・オールビン空軍参謀総長は計画発表の際、「時代遅れの構造にしがみついて自己満足していることはできない。古い時代のために構築された空軍は、もはや現在の戦略的現状にとって最適ではない」と述べた。
「(軍の改革は)選択肢ではない。必ずしなければならない。われわれは適応し、抑止への準えと能力があることを効果的に示さなければならない。必要であれば、戦い、勝利しなければならない」
中国政府は、国防総省が空と宇宙空間での能力向上に取り組んでいることに注目している。
中国共産党系の環球時報は、空軍の再編計画は、米国との直接的な競争で中国の「優位性が高まっている」という国防総省の認識が強まっていることを反映していると指摘した。
「しかし、米国は中国とのパワーバランスを比較するとき、必ず米軍の『優位性は揺らがない』と考え、不利な部分を見ないようにしているようだ。米軍は将来の戦争に備えているが、そのような戦争は無意味であり、回避可能だ」
中国に苦戦
米軍は最近、演習で中国軍に苦戦したことが報じられた。
中国共産党に関する下院特別委員会は4月、中国による台湾侵攻のシミュレーションを行った。その中で、米軍が侵攻を阻止するために介入すると、長距離ミサイルを大量に失い、保有量は大幅に減少することが明らかになった。
空軍は、この改革の下でどのような新しい兵器や能力を獲得しようとしているのかについて詳細を明らかにしていない。現在、約450機のステルス戦闘機F35が配備されており、今後、2500機を推定1兆7000億㌦で調達することが計画されている。
発表された改革からは、F35が今後も空軍の戦力投射の主力であり続けるかどうかは分からない。
現在、大陸間弾道ミサイル「センチネル」、空対地スタンドイン攻撃兵器(SiAW)、空対空統合先進戦術兵器、長距離スタンドオフ巡航ミサイルなどが開発の途上にある。
中国が配備している高速ミサイルに対抗するために空軍が開発した極超音速ミサイル、空中発射即応兵器 (ARRW) のテストは難航している。
有人機と連携する空軍の無人機「共同戦闘機(CCA)」も開発されている。この無人機は爆撃、監視、電子戦、欺瞞に使用される。戦闘無人機XQ58Aバルキリーは7月に初めて飛行した。
これらの改革の下で、武器開発を向上させ、煩雑な武器取得手順を合理化することで、 「より機敏で技術的に進んだ戦闘態勢」が実現されると報告書は述べている。
空軍のフランク・ケンドール長官は、再編計画を発表する際に、変革が今必要だと述べた。「迅速に部隊を最適化し、大国が競い合うこの時代の戦略的脅威に対処しなければならない」
ケンドール氏は9月の覚書で再編の概要を示し、中国の脅威に対処するために空軍の態勢を改善する必要性を受けた再編であることを明らかにした。
「中国が西太平洋に部隊を展開して侵略を行い、介入する米国を圧倒し、勝利することを目指していることは10年以上前に明らかになっていた。中国は、必要と考える地域で通常戦力の構築に注力する一方で、核戦力と宇宙軍事能力を劇的に拡大している。立ち止まっていては抑止力を維持できない」
老朽化した兵器
空軍・宇宙軍の再編は、人員の向上、軍事即応性の向上、戦力投射、能力の構築という4分野に焦点を当てている。
航空戦闘軍団は再編され、戦闘指揮官らが大きな破壊力を持ちやすくする。大規模な軍事演習が計画されており、即応性をテストするための検査が増やされる。情報優勢システムセンターが、指揮統制、戦闘管理、サイバー・電子戦能力を向上させるために設立される。
デービッド・デプトゥラ元空軍情報部長(退役中将)は、公表された再編計画から、空軍が戦闘指揮官から与えられた任務を遂行できるだけの十分なリソースを保有していないことが分かると述べた。
デプトゥラ氏は、再編計画から「(空軍は)老朽化した航空機の在庫を近代化するだけでなく、訓練、開発、組織化の方法を最適化して、きょうとあしたの脅威に最適に対応するためにすべての活動を統合する必要がある」ことが分かると述べた。
「空軍は今、過去30年間にわたる慢性的な資金不足のため、かつてないほど老朽化し、小さく、即応能力を欠いている」
空軍指導部は、不足を是正し、限られた資源に対処しようとしている。
誕生したばかりの宇宙軍は、宇宙での作戦に「行動部隊」を派遣し、敵が、ミサイル警報、ナビゲーション、通信に使用される衛星システムを攻撃したり、損傷させたりするのを阻止する。
宇宙軍の再編に関する報告書は、中国には言及していないが、 「大国間競争(great power competition)」を意味する「GPC」の文言を使って脅威に言及している。
中国は、衛星を破壊できる数種類の地上発射ミサイル、電子ジャマーやレーザー兵器、衛星をつかんで破壊できるロボット衛星など、高度な宇宙戦争能力を持っていると考えられている。
宇宙軍は、自らを戦闘部隊と称しているが、発表によると、配備されているのは地上の電子衛星ジャマーだけだ。
宇宙軍の作戦部長チャンス・サルツマン大将は報告書の中で、大国の軍隊は「敵勢力との長期にわたる日常的な競合に対処できる能力を備えていなければならない」と述べた。
サルツマン氏は依然として「(宇宙軍の)組織構造、プロセス、ポリシーは、大国の安全保障環境に最適化されていない。したがって、全体を変革し、空軍がこの種の課題に対応できるようにしなければならない」と述べた。