コロナ起源は研究所か動物か 専門家らが情報の公開を要求-米上院
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, June 18, 2024
新型コロナウイルスが中国・武漢で最初に発生してから4年以上が経過した。パンデミック(世界的大流行)を引き起こしたウイルスの起源は依然、不明だ。18日の上院公聴会でも激しい議論が交わされ、その不透明性にいら立ちが強まっている。共和、民主両党議員らは、中国政府と米政府がパンデミック発生を巡る重要な情報を隠蔽していると非難した。
4人の科学者が上院国土安全保障・政府問題委員会で、パンデミックの始まりは武漢ウイルス研究所の実験室からの流出か、武漢の市場にいた野生動物からの自然「流出」のどちらかだと証言した。
パンデミックで、米国内で100万人以上、全世界では推定700万人が死亡し、約20兆ドルの経済的損害をもたらした。
米情報機関はこの問題を調査したものの、ウイルスの起源を特定できていない。大部分の情報機関は自然発生とみているが、エネルギー省と連邦捜査局(FBI)の情報部門は、武漢の研究所から流出した可能性が高いと報告している。
中国政府は実験室からの流出説を強く否定し、国外の専門家らによる発生源の調査を妨害している。公聴会に出席した科学者らによれば、中国政府は、発生源の解明につながる可能性のある武漢ウイルス研究所のオンラインデータベースを削除した。
上院議員らは。バイデン政権も、議員が新型コロナの起源に関連する記録や文書から情報を得るのを妨害していると訴えた。
同委のゲーリー・ピーターズ委員長(民主党、ミシガン州)は、パンデミックの原因究明は国家安全保障に関わる問題であり、政府は、今後、同様の事故が起きた際に国民をしっかり守れるよう備える必要があると述べた。
ランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)は、解明されるべき重要な問題は、新型コロナウイルスが実験室で発生したかどうかだと述べた。
「研究所が発生源かどうかは確かではない。しかし、研究所から出た可能性を示す証拠は無数にある」
ポール氏によれば、パンデミックの初期、アンソニー・ファウチ博士ら米国の科学者グループは、研究所からの流出説は全く根拠がないと強く主張してきた。ファウチ氏は最近まで、ウイルス専門家として政府機関を率いてきた。今では、武漢ウイルス研究所からウイルスが発生したという説は、2つの有力な説のうちの1つとなっている。もう1つは動物由来説だ。
ポール氏によると、パンデミックの初期の数週間、連邦政府の保健当局の間で交わされた私的な電子メールによれば、多くの科学者が、武漢の研究所が起源であるという公の議論をすべて否定するために、医学雑誌やソーシャルメディアで水面下で動いていたことが分かる。
ポール氏は「隠蔽工作は公的な発表だけにとどまらなかった。連邦政府機関や主要な政府当局者らは、議会にも国民にも重要な情報を隠し、今も隠し続けている」と非難した。
スタンフォード大学のウイルス専門家だったスティーブン・クエイ氏とラトガース大学のウイルス専門家リチャード・エブライト氏は、このウイルスが中国で動物から発生したという説を支持する証拠はないと議員らに語った。2人は、ウイルスが武漢ウイルス研究所が起源であることを示す圧倒的な証拠があり、研究所から流出したと確信していると主張、研究所には収集した大量のコウモリ・コロナウイルスが保管され、ここで行われていた危険性の高い「機能獲得」実験で発生したと主張している。
新型コロナ感染症を引き起こすコロナウイルスはコウモリ・コロナウイルスだ。
しかし、18日に証言した他の2人のウイルス専門家、ジョージ・メイソン大学のグレゴリー・コブレンツ氏とチューレーン大学のロバート・ギャリー氏は、ウイルスは武漢の華南野生動物市場から始まった可能性が高いと確信していると述べた。コブレンツ氏は、研究に関連した事故も否定できないが、入手した証拠は動物由来を最も強く示していると主張、中国共産党政権が重要なデータを共有しなかったことを批判した。
「中国政府に透明性がないことが、主要な障害となり、これ以上の明確な結論を得ることができない。中国政府が、パンデミックの原因がどちらなのかの評価を難しくしている。独立した国際的な透明性のある調査が行われるまでは、より明確な結論を出すことはできないだろう」
コブレンツ氏によると、感染拡大の起源を突き止めるのは難しく、その調査には何年もかかることが多いという。
一方、ギャリー氏によれば、2004年に中国で最初にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生したのは野生動物の取引からであったため、今回のパンデミックは武漢の華南海鮮市場の動物から始まった可能性が高いという。
また同氏は、市場の南西の角で得られたサンプルには、新型コロナウイルスと「混ざった」タヌキとヤシハクビシンの遺伝物質が含まれており、これは「研究所からの流出とは符合しない」と主張した。
研究所を疑う6つの理由
クエイ氏は証言の中で、野生動物市場で患者が発生する数カ月前に、新型コロナウイルスが武漢や世界の他の地域に拡大していたことなど、新型コロナが実験室を起源とする6つの理由を挙げた。
「その証拠とは、最も新しい共通祖先までの時間、武漢の病院の受け入れ能力を超える患者の急増、米国内のイタリア、スペインからの抗体と患者、ブラジルの下水サンプル、10月に武漢で開催された軍人競技大会の選手の罹患、武漢の学校閉鎖、数十人の患者などだ。これでは、市場が発生原などあり得ない」
エブライト氏は、一般に入手可能な文書、報道、科学論文、また、病原体を扱う作業に関するバイオセーフティー、バイオセキュリティー、バイオリスク管理に関する経験と研究を基に研究所流出の可能性が高いとみていることを明らかにした。
同氏の見方を支持する4つの重要な事実がある。そのうちの1つは、新型コロナが武漢で発生したことだ。武漢は、実際のパンデミックの原因となった可能性のある新型コロナに似たウイルスが存在する最も近い地域から約1300㌔離れている。武漢ウイルス研究所はまた、SARSに似たウイルスに関する世界最大の研究プログラムを実施しており、保有している新型コロナに似たウイルスは世界最多で、その中には実際の新型コロナウイルスに非常に似ているものがある。
エブライト氏は、「(証拠は)新型コロナが自然発生でない」ことを示しており、「武漢がコウモリSARSウイルス研究の世界的な中心地であることは、新型コロナが研究由来であることを示している」と述べた。
また同氏は、ある企業によって米国立衛生研究所(NIH)と国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)に提出されたウイルス研究提案書も、「研究由来であることを強く示しており、決定的な証拠だ」と主張する。
ギャリー氏は、新型コロナ発生の初期に医学雑誌に掲載された研究室流出説を否定する記事の執筆に関与していたとして、公聴会で共和党議員から非難を浴びた。
ジョシュ・ホーリー上院議員(共和党、ミズーリ州)は、ギャリー氏が2020年の「ネイチャー・メディシン」誌の論文で実験室流出説を否定しようとした科学者グループの立ち上げに関与したと批判した。
「あなたは当時、新型コロナは実験室で作られたものではないと断言した。言うまでもないが、わが国政府の主要機関はそうではないという結論を出している」
ホーリー氏によれば、ファウチ氏は科学誌ネイチャーの記事を利用して連邦政府を「動かして」、研究所流出説を議論する人々に圧力をかけ、ソーシャルメディア上での議論を阻止した。
「この新型コロナ時代に起こった最悪の出来事の一つは、わが国の政府が意図的に国民に伝わらないよう情報を隠蔽し、国民に政府の考えを吹き込もうとし、政府機関を利用してそのプロパガンダに疑問を呈する勇気のある国民に圧力をかけたことだと思う。政府はまだ国民にうそをついている」
ホーリー氏によると、ウイルスの起源に関する情報の機密指定を解除するよう求める法案を議会に提出したが、政府は今のところ情報公開を拒否している。
ギャリー氏は、もっと情報が公開されるべきだという点では一致し、ネイチャーに掲載された記事への関与は間違っていなかったと主張した。
「私たちがしたことは、ネイチャー・メディシン誌に3000字の論文を書いたことだけだ」
ピーターズ氏は、中国は新型コロナウイルスの起源についての情報を「ほとんど何も」提供していないと述べた。コブレンツ氏は、中国はパンデミックの起源を特定するのに役立つさまざまな情報を提供できると主張した。
それができれば、武漢の市場やその他の地域の動物サンプルのウイルスサンプルも提供されるはずだ。
中国は一部の情報を公開しているが、生のデータではない。コブレンツ氏は、中国はそれ以外にも、武漢ウイルス研究所での研究記録、研究者の健康監視記録、ウイルスなどの流出を防ぐバイオ・コンテインメント装置の操作に関するメンテナンス記録も提供すべきだと述べた。
中国政府は武漢ウイルス研究所からウイルスが持ち込まれたことを否定し、米国が武漢で行われた軍人競技大会や冷凍食品を通じて中国にウイルスを持ち込んだと非難している。米国はそのどちらも否定している。