中国の新型ステルス機か ネットで画像公開も米中は沈黙

(2025年1月2日)

新華社通信が公開した写真で、中国南部の広東省珠海市で開催中の第14回中国国際航空宇宙博覧会でアフターバーナーを行うJ-20ステルス戦闘機(2022年11月8日火曜日)。米国防総省と中国政府は、中国のソーシャルメディアサイトで発見された2機の新型戦闘機(写真なし)について、今のところ沈黙を守っている。(Deng Hua/Xinhua via AP)

By Bill Gertz – The Washington Times – Monday, December 30, 2024

 米国防総省と中国政府は、中国のソーシャルメディアに投稿された2機の新型戦闘機について、今のところ沈黙を守っている。国防アナリストらはこの機体について、中国初の第6世代ステルス戦闘機との見方を示した。

 一方、空軍当局者は、空軍は中国の先進的戦闘機開発を注視していると強調。空軍は、先週公開されたこの2機のプロトタイプ(試作機)を、中国の戦略目標と長距離戦力計画に沿ったものとみていると述べた。

 「新しい兵器システムを導入することで(人民解放軍は)さらに複雑さが増す。これらのシステムを最大限に活用するには、高度な技術を持つ要員が必要になる」

 尾翼のないデルタ翼の画像と動画が、26日に中国のソーシャルメディアに突然掲載された。その数時間後、似たような形状の2機目が飛行している映像が公開された。

 国防総省のサブリナ・シン副報道官は30日、報道を見たと記者団に語ったが、この試験飛行についてのコメントは避けた。別の国防総省報道官は、国防総省は中国の新型戦闘機開発について、最近発表された中国軍に関する年次報告書以上のことは話せないと述べた。

 中国大使館の報道官もコメントを避けた。

 中国の国営メディアは、この2機について直接コメントする記事を掲載していない。中国の国防省と外務省は、インターネット上で世界的に拡散されている機体の外観について、今のところ沈黙を守っている。

 中国メディアの唯一のコメントは、成都を拠点とする「国防時報」という国営の地方メディアからのものだった。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙が報じたところによると、同紙はソーシャルメディア・微博(ウェイボー)上で、最初に公表された戦闘機について「木の葉のようだ」と述べたという。このコメントは拡散され、中国軍が最新鋭機の存在を暗黙のうちに公式に確認したものとみられている。

不鮮明な画像

 両機の不鮮明な画像と動画は、中国製のステルス戦闘機の試作機とみられており、従来の航空機が飛行中の機体を制御するために使用している尾翼がない。

 空軍のB2爆撃機と開発中のB21爆撃機は、同様に無尾翼機で、コンピューターで飛行制御を行っている。

 最初の機体の動画は12月26日に公開され、中国四川省成都近郊の上空を日中に飛行している。三つのエンジンを搭載し、赤外線の排出を抑え、レーダー断面積を小さくする排気ノズルを備えている。

 複座の「殲20(J20)」戦闘機が追随し、その位置から、戦闘機メーカーの成都飛機工業公司が開発していることがうかがえる。

 その数時間後、別の少し小型のデルタ翼戦闘機の画像が投稿された。防衛アナリストによれば、瀋陽近郊を飛行しており、ここには中国2位の大手航空機メーカー、瀋陽飛機工業集団が拠点を置いている。ロシアのスホイ27の派生型で、瀋陽で製造された「殲11(J11)」戦闘機が随行していた。

 両機が公開された日は、中国の指導者、故毛沢東の誕生日でもあった。毛沢東は、1960年代から1970年代にかけて実施した政策で大量の死者を出したにもかかわらず、支配政党中国共産党の創設者として中国では今も愛されている。

 オンライン航空ニュースレター「アビエーショニスト」によると、殲20の試作機も約10年前の12月26日にネット上で公開された。

 中国はまた、公式名称がまだない新しい航空機を披露するために、過去にも同様の非公式な情報公開をオンラインで行っている。

 最初の機体には3601という数字が記されており、「殲36(J36)」の試作機ではないかとの見方も出ている。

 米太平洋軍の元情報当局者、カール・シュスター退役海軍少佐は、これらの試作機の飛行は、西側諸国軍や中国の主要な戦略的敵対国、米国と同等かそれ以上の軍事力を構築するという中国の決意を浮き彫りにしていると述べた。

 同氏は、今回の飛行は、中国の航空産業と軍隊が技術的に米国と拮抗しており、なおかつ発展し続けていることを示していると言う。

 「私見では、試作機の飛行とそれに関連する計画は、中国が技術的に劣っているという考えを払拭するものだ」

 「劣っているどころか、対等とは言わないまでも、そこに近づいている。ドローンや艦艇、極超音速兵器など、他の軍事システムも含めればなおさらだ」

開発の苦悩

 一方の米軍では、「次世代航空優勢(NGAD)」戦闘機と呼ばれる空軍独自の第6世代戦闘機開発計画が進められているが、障害に直面している。

 NGADの開発は、2022~2024年の間に51億ドルを費やしたものの、コストを巡る懸念から空軍当局によって11月に一時停止された。

 米議会調査局の報告書によると、空軍は、新型爆撃機B21と新型大陸間弾道ミサイル「センチネル」の開発に取り組んでおり、NGAD計画を中断したのは、新戦闘機を同時に導入する予算があるかという懸念からだという。

 NGADはまた、トランプ次期大統領の反対に直面する可能性もある。トランプ氏の政府効率化アドバイザーであるイーロン・マスク氏が11月にXで「ドローンの時代に有人戦闘機は時代遅れだ」と指摘したからだ。

 中国軍の専門家であるリック・フィッシャー氏によると、最初の第6世代戦闘機とみられる中国の新戦闘機は、そのトルティーヤチップのような形状から「空飛ぶドリトス」と呼ばれているという。

 国際評価戦略センターの研究員であるフィッシャー氏は、「60トンから70トンの重いステルス制空戦闘機は、長距離精密空中発射弾道ミサイルで米海軍空母群を脅かす存在となる可能性がある」と述べた。

 殲36の試作機はおそらく、燃料消費量の低減によって「超音速巡航」能力を備え、高度6万フィート(約1万8000メートル)を飛行し、精密誘導長距離空対空ミサイルPL17で新型のB21ステルス爆撃機を攻撃することが可能だとフィッシャー氏は言う。

 中国の情報筋によれば、殲36はまた、人民解放軍の侵攻から台湾を守るために集められた米軍の海空軍を、現在の航空機よりも中国沿岸から遠く離れた場所で攻撃することができるようになるという。

 フィッシャー氏によれば、2機目の小型の機体は、空母で使用するために設計されたものだという。

不均衡

 中国が新型戦闘機の試験飛行を行い、2、3年で生産できる可能性がある一方で、バイデン政権はNGADの開発を中止し、数年の遅れにつながったとフィッシャー氏は言う。

 「これによって中国に対し空軍力で致命的なアンバランスが生じる。中国が300機から400機と推定される成都飛機製の殲20大型第5世代戦闘機を配備しているのに対し、米空軍が世界的な抑止力を確保するために投入できるのは、理論上、F22A戦闘機120機だ」

 2010年当時にオバマ大統領とロバート・ゲーツ国防長官はF22戦闘機の生産機数を186機にとどめることを決定したが、この決定が、中国の指導者たちを2027年までに台湾をめぐる戦争へと向かわせる可能性があるとフィッシャー氏は言う。

 「中国の目標は、核、海軍、侵攻能力で米国を凌駕することにあり、今や航空戦力でも米国を超えることを目指している。そうすることで、米国を従属させ、世界の指導的地位を放棄させ、日本、フィリピン、韓国、台湾のような同盟国を引き渡させることを目指している」

 国防総省の中国軍に関する最新の年次報告書には、殲36やもう一つの新型戦闘機についての言及はない。

 中国は殲35を艦載機として開発中とされている。

 人民解放軍空軍は現在、225機以上の第4世代戦闘機、殲16と殲20を含む1300~1900機の戦闘機を保有している。

 2機の新型機に加え、12月27日には中国のソーシャルメディアの投稿で、新しい空中警戒管制機「空警3000(KJ3000)」が公開された。これは、輸送機「運20(Y20)」の派生型で、米当局者によると、米軍の戦略輸送機C17の技術を盗んで製造された。

 投稿された写真では、空警3000の大きなロートドームと、レーダーと通信に加えて電子戦に使用できる装備のための尾翼の膨らみが写っていた。

 中国国営メディアはまた、12月27日に新型の076型強襲揚陸艦の進水式を発表した。この大型でフラットな甲板を持つ艦艇はヘリコプターの離発着に対応し、電磁カタパルトと着艦時に使用するアレスティングワイヤーを装備しているとされ、固定翼戦闘機が発進可能となっている。

 ある国防当局者によると、人民解放軍空軍での最近の大きな変化の一つは、第5世代機、特に殲20の急速な拡大だという。

 「その航空機を製造している生産ラインは、現在フル稼働しているようだ」。この発言は、中国の二つの新型機がネットで公表される前のものだ。

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