ミサイル防衛で敵国に遅れ 米専門家ら警告

(2025年5月15日)

L3ハリス・テクノロジーズの宇宙・空中システム担当社長エド・ゾイス氏

By Mike Glenn – The Washington Times – Tuesday, May 13, 2025

 米国は10年前、極超音速ミサイルなどの高度な兵器に対する防衛に関して行き詰まっていたが、事態はさらに深刻になっている。アナリストらが13日、指摘した。

 国防総省の元近代化研究・技術部長は2015年、空軍の依頼を受け極超音速ミサイルのようなハイテク兵器による米国の安全保障への脅威を調査する委員会の議長を務めた。この委員会は、米国は問題を抱えていると結論づけていた。

 現在パデュー大学応用研究所のCEO、マーク・ルイス氏は、「メンバーの一人は、この研究のタイトルを『どうしようもない事態』にしたがっていた。10年前のことだ。私たちは競争の中にいると警鐘を鳴らした。まだ競争の中にいて、さらに遅れをとっている」と言う。

 ルイス氏は、ワシントン・タイムズの「スレット・ステータス」が主催したイベント「米国のためのゴールデン・ドーム」で、トランプ大統領のミサイル防衛構想に必要な技術に関するパネルディスカッションに参加した。

 ルイス氏は、敵対国からのミサイルの脅威に対抗するため、米国は攻撃力と防御力の強化を加速させなければならないと述べた。

 「私が国防総省にいた頃、さまざまなシナリオを想定した演習を行ったが、高度なミサイル能力を持つ敵に直面し、効果的なシステムや独自の攻撃システムを持っていない場合、ことごとく負けた。力が拮抗する潜在敵国と競争するためには、こうした能力が必要だ」

 クリストファー・ボグダン退役空軍中将は、敵の大量の弾道ミサイルを迎え撃つには、地上の迎撃ミサイルに頼るのでは不十分だと述べた。

 現在ブーズ・アレン・ハミルトン社の執行副社長であるボグダン氏は、「全地球をカバーする宇宙ベースの小型衛星群を配備することで、これらのミサイルをはるかに早く迎撃することが可能になる。これらの小型衛星はそれぞれ、いろいろなことができる。衛星群内のすべての衛星は、他のどの衛星とも通信でき、情報を得ることができる」

 L3ハリス・テクノロジーズの宇宙・空中システム担当社長エド・ゾイス氏は、米ミサイル防衛局は2020年に、ミサイル防衛システムには新しい火器管制アーキテクチャが必要だと指摘したと語った。

 「見えなければ撃ち落とすこともできない。このような新しい脅威の何が難しいかというと、地上や海上のレーダーから見えなくなってしまうことだ。自ら移動する能力を備えているからだ」

 米国が敵の弾道ミサイルを十分に監視する唯一の方法は、「火器管制の計算を宇宙空間で行うようにする」ことだとゾイス氏は言う。

 委員会によれば、対弾道ミサイル衛星は米領土をカバーするのに40~50基、全世界をカバーするには100基程度が必要だという。ボグダン氏は、衛星は敵のミサイルを排除する「ヒット・トゥ・キル(直撃破壊)」ビークルとして使用できると述べた。

 「機動を開始し、弾道ミサイルに照準を合わせ、ブースト上昇段階で打ち負かす能力を持つことになる」

 ゴールデン・ドームが弾道ミサイルに対する盾となるには、まだ埋めなければならない隙間がある。レーガン政権時代の戦略防衛構想(SDI)が失敗した理由の一つは、何千もの衛星を宇宙に送り込むコストが高すぎたからだとボグダン氏は言う。

 「しかし、大規模な小型衛星群を打ち上げるコストは大幅に下がっている」

 ワシントン・タイムズのスレット・ステータスが企画・主催した「米国のためのゴールデン・ドーム」では、引退した軍高官、主要議員、学術研究者、防衛産業のリーダーらが、提案されているミサイル防衛網、その目標、実現へのハードル、プロジェクトをめぐる政治について、1日かけて徹底的に議論した。

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