【スクープ】トランプ氏、ミサイル防衛推進へ「ゴールデンドーム」長官任命か

(2025年5月16日)

2021年2月12日、カリフォルニア州トラビス空軍基地で行われた、米空軍飛行士が米宇宙軍の守衛に任命される式典で、米宇宙軍の制服を着用する兵士。(AP Photo/Noah Berger, File)。

By Ben Wolfgang and Guy Taylor – The Washington Times – Sunday, May 11, 2025

 トランプ大統領は、米本土全体を守る次世代ミサイル防衛網の整備を求める機運が政権内で高まっていることを受けて、ハイレベルの「ゴールデンドーム担当長官」の任命について検討している。複数の情報筋が明らかにした。

 これが実現すれば、ゴールデンドームの設置がいかに急がれ、複雑な取り組みであるかがより明確になるはずだ。それには、ホワイトハウスや議会、米宇宙軍、ミサイル防衛局など、連邦政府のさまざまな部門が、宇宙ベースのミサイル迎撃ミサイルや高度な指揮統制インフラを設計・建造する民間の防衛企業と連携して働くことが必要となる。

 政権はここ数週間、ゴールデンドーム計画へのコミットメントを改めて表明している。トランプ氏の2026年度予算要求では、ミサイル防衛の推進を求め、国防費は前年度比13%増の1兆ドルという記録的な増加を提案している。ホワイトハウスは、この予算は「米国のためのゴールデンドームの開発と配備のための頭金になる」と述べた。

 しかし、この構想には答えよりも多くの疑問が渦巻いている。最終的にどのようなシステムが構築されるにせよ、その実装と運用を主導するのはどの省庁になるのかもまだ分からない。また、国防総省の調達プロセスは長い時間がかかり、ゴールデンドームを数十年ではなく数年で完成させるには、大規模な調整や変更が必要になるだろうというのが、国家安全保障コミュニティー全体の感覚だ。

 このような疑問に対処するには、ゴールデンドーム担当長官の任命が不可欠となる可能性がある。トランプ政権に詳しい情報筋によれば、米宇宙軍のマイケル・ゲトライン宇宙作戦副部長が検討されているというが、だれが任命されるにせよ、このポストが調達プロセスにどの程度の権限を持つことになるのか正確には不明だ。

 いずれにせよ、防衛業界関係者によれば、ゴールデンドームは弾道ミサイルや極超音速ミサイルの攻撃から米本土を守るために必要だという。

 「中国とロシアがこのような攻撃用の兵器、特に極超音速ミサイルに多額の投資をしている今、トランプ氏の主張は正しい。要するに、先進的なミサイル防衛網が絶対に必要だ」と、先進的なロケット開発で世界的に知られるトップ企業であり、ミサイル防衛の開発競争で重要な役割を果たしているユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のトリー・ブルーノ社長兼CEOは語った。

 ブルーノ社長はワシントン・タイムズへの最近の寄稿で、「幸いなことに、いずれ実現する。実用的なゴールデンドームは、今すぐにでも配備を開始できる。さらに良いことがある。ミサイル防衛局、宇宙開発局、宇宙軍など、既存のいくつかの機関がこの取り組みを監督できることだ」

 ブルーノ氏ら専門家は、このシステムは3つの要素で構成されるべきだと言う。宇宙ベースの迎撃ミサイル、両岸とアメリカ湾沖の海上ミサイル防衛システム、全土の戦略的位置に設置される「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の3層だ。THAADは、最初の2層が突破された場合に主要都市を守るための最終防衛層として機能する。

宇宙からの極超音速ミサイルの追跡

 国家安全保障の専門家らは、中国とロシアが近年、極超音速兵器の開発で米国を上回っているという認識で一致している。これは、ゴールデンドームの設置を推進する大きな要因となっている。

 中国は2021年、極超音速技術を搭載した「部分軌道爆撃システム(FOBS)」の実験を行い、米国の最新鋭ミサイル防衛網を突破可能な能力を示した。

 フロリダ州を拠点とするL3ハリス・テクノロジーズ社の宇宙・空中システム担当社長エド・ゾイス氏によれば、中国のこの実験は「警鐘」となったという。同社は昨年、極超音速ミサイル追跡能力を開発する米軍の構想の一環として、同社が設計・製造した複数の衛星をケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げ、大きな話題となった。

 L3ハリスは宇宙開発・ミサイル防衛の両機関と協力し、極超音速弾道追跡宇宙センサー(HBTSS)衛星を打ち上げた。この衛星は、「機動性があり、現在の弾道ミサイル探知能力ではとらえられない極超音速ミサイル」を追跡できると同社は説明している。

 今年初めにトランプ氏が出した大統領令では、ゴールデンドーム開発の一環として、HBTSS衛星の「配備の加速」を特に求めていた。

 HBTSSは非常に高度なシステムだ。ゾイス氏は、ワシントン・タイムズの動画シリーズ「スレット・ステータス・インフルエンサー」の最近のインタビューで、このシステムは赤外線技術を使ってミサイルを追跡すると語った。

 「この衛星の目標は、極超音速兵器の弱い熱源を見つけ、それを追跡することにある。私たちはこの13カ月間で、宇宙からそれが可能であることを実証した」

 このような多層的なシステムで、ほとんどの弾道ミサイルの脅威を打ち負かすことができると専門家は言う。しかし、さらに進化した極超音速兵器が今後、出現すれば、指向性エネルギー兵器のようなさらに高度な防衛能力が最終的に必要となるかもしれない。

自律型衛星

 ゴールデンドームの核となるアイデアは、レーガン政権時代と、俗に「スター・ウォーズ」計画として知られる戦略防衛構想(SDI)にまで遡ることができる。

 ブーズ・アレン社のグローバル・ディフェンス部門社長アンドレア・インセラ氏は、「現在の技術は、レーガン大統領の時代にはなかった。レーガン氏は同じような構想を持っていたが、当時はそのための技術がなかった」と述べた。

 同社は最近、ゴールデンドームがどのようなものになるかについての未来的な計画を発表した。「ブリリアント・スウォーム(優れた群れ)」と呼ばれるこの計画は、ミサイル追跡で完全な自律性を達成するために、機械学習による人工知能(AI)を搭載し、相互に接続された2000基もの衛星群を特徴としている。

 インセラ氏は最近の「スレット・ステータス・ウィークリー・ポッドキャスト」での独占インタビューで「この業界の人々にとって、私たちが今日持っている宇宙資産、(コンピューター同士が直接やり取りする)ピアツーピアネットワークの組み合わせ、そして(AIの)組み合わせについて考えると、これら3つの能力を一緒にすれば、レーガン時代には不可能であった…米国の宇宙多層ミサイル防衛能力を実際に作り出すことができる」と語った。

 元ミサイル防衛局長で、現在はブーズ・アレン社に所属するヘンリー・「トレイ」・オベリング3世退役空軍中将は、ワシントン・タイムズとの最近のインタビューで、このようなシステムはおそらく、多くの人が考えているよりもはるかに低コストで実現するだろうと付け加えた。

 オベリング氏によれば、米国は約200億ドルで、1000基もの宇宙ベースのミサイル迎撃ミサイルを軌道に乗せることができるという。これは、20年前にジョージ・W・ブッシュ政権が、北朝鮮からの西海岸への潜在的なミサイル脅威に対抗するために行った大規模なTHAAD構想の費用の3分の1にあたる。

 より多くのTHAADや海上ミサイル防衛システムを含むシステム全体のコストは、特に長期的なメンテナンスやアップグレードを考慮すると、それよりも大幅に高くなる可能性がある。

防衛関連企業の争奪戦

 トランプ氏の大統領令を受けて、大小さまざまな防衛関連企業は、ゴールデンドーム予算をめぐる競争と協力の火花を散らしている。

 どの企業がトランプ政権の計画に最も大きく関与するかはまだ分からない。ホワイトハウスに近い情報筋によると、大統領の顧問らの間では、どの防衛関連企業を主導的立場に置くかについて熱い議論が交わされているという。

 ロイター通信は先月、イーロン・マスク氏のロケット・衛星会社スペースX、ソフトウエアメーカーのパランティア、ドローンメーカーのアンドゥリルが、ゴールデンドームの契約獲得競争で、トランプ氏の国家安全保障チームの一部メンバーの間で有力候補に浮上していると報じた。

 業界筋は、次世代ミサイル防衛網が推進される中、他の新興防衛技術企業も潜在的なプレーヤーとして挙げている。

 しかし、最大手の軍需企業もまた、参入に備えている。

 ロッキード・マーチンが公開した「米国のためのゴールデンドーム」のウェブサイトには「このミッションは、実績のない技術に任せるわけにはいかない。このミッションは、最大のイノベーションを、高い信頼性で、規模を拡大し、ニーズを先取りして提供できる、実績のあるプロバイダーによって達成されなければならない」と書かれている。

 「地上から宇宙まで、ロッキード・マーチンは戦闘実績のある重層的な防衛ソリューションを提供している。ロッキード・マーチンの統合防空・ミサイル防衛システムは、世界で最も先進的なレーダーとセンサー、指揮統制ネットワーク、衛星、標的、迎撃ミサイル、指向性エネルギーシステムを提供している」

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