航空優勢確保に腐心する米軍 強まる中露空軍力の脅威

2025年2月12日(水)、インド・ベンガルールにあるイェラハンカ空軍基地で開催された隔年行事「エアロ・インディア2025」の3日目、米空軍の戦闘機F-35がアクロバット飛行を披露した。(AP通信/アイジャズ・ラヒ、ファイル写真)
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Friday, October 3, 2025
米国とその同盟国が紛争時に容易に制空権を掌握できると考えることが難しい時代となった。
21世紀に制空権を獲得し維持するには、最先端の戦術ドローン、人工知能(AI)を搭載した監視機、数百万ドルもする戦闘機、ステルス爆撃機を組み合わせる必要がある。
国防総省当局者や主要軍需企業は、冷戦後の時代――サダム・フセイン率いるイラク軍やタリバン支配下のアフガニスタン軍など、米国の空軍力が容易に敵を圧倒できた――が終わったことを認めている。中国やロシアといった大国は、空軍力強化に巨費を投じることでその差を縮めてきた。
同時に、安価で操作が容易なドローンの普及が戦争の様相を変え、制空権がどういうものなのかを巡って根本的な疑問が生じている。
この急速な変化のもとで、米国防総省や欧米の主要軍需企業は、米国の制空権獲得は当然の前提ではなく、守り抜くべき理想であるとの認識を持って意思決定を下すことを求められている。
ボーイング防衛・宇宙・セキュリティー部門上級顧問を務める退役空軍大将ジェームズ・ホームズ氏は、メリーランド州ナショナルハーバーで開催された航空宇宙軍協会主催の「航空・宇宙・サイバー会議」パネル討論で「9.11以降、われわれは『戦いは既に終わった』と思っていた。イラクの航空戦力を長年にわたり飛行禁止区域で制圧し、アフガニスタン空軍は数時間で壊滅した。こうして空軍として、統合軍として、それを当然視するようになっていた。全軍が最大限、その能力を発揮できるよう制空権を確保せねばならなかった」と述べた。
ホームズ大将は、状況は変わり、空軍は「中国がもたらす脅威に対抗する」ために活動していると述べた。
さらに「今やわれわれは戦闘について考え続けることに慣れる必要がある世界に戻った」と強調した。
中東、欧州、共産中国と対峙する太平洋のどこであれ、どのような紛争であれ、米国の航空優勢を確保できるよう、米軍・企業全体で取り組みがなされている。おそらくこの任務に最も熱心に取り組んでいるのは、空軍未来戦略局だろう。
未来戦略局のデービッド・ハリス局長(空軍中将)は、21世紀の急速に変化する脅威に対処するための空軍戦略を監督する軍幹部の一人だ。ハリス氏は最近の独占インタビューで、司令官らは数年先の未来を見据えて任務を遂行していると述べた。
未来戦略局は、さらにはるか先を見据えていると同氏は説明する。
ハリス氏は、ワシントン・タイムズ「スレット・ステータス・インフルエンサー」動画シリーズの最近のインタビューで、「戦闘軍司令官、つまり担当地域の指揮権を持つ司令官は、同様な課題に対しても、通常は2~3年先までの展望を持つ。つまり、空軍や他軍が今、提供できる装備で戦う」と語った。
「注目しているのは、その傾向が3~7年後にどこへ向かうかだ。それが長期戦略の要素となる。というのは、白紙から新たに設計するのは、それなりに時間を要するものだからだ。もし現在の能力にわずかな改良が必要なだけなら、即座に対応できる優れた企業パートナーが存在する。そして翌年には、既存の航空機に新たな装備を搭載し、米国や同盟国が直面する脅威を無効化できる」
ドローン時代
ハリス氏は、高度5000フィート(約1500メートル)以下とそれ以上の領域で制空権に差異はないと述べた。
「ここで言いたいのは、(高度がいくつであれ)制空権は制空権ということだ」
これは極めて重要な点だ。ウクライナ戦場で戦況を一変させた小型攻撃ドローンの多くは、有人機よりもはるかに低い高度を飛行する。
電子戦や信号妨害といった対ドローン対策の影響を受けやすい半面、航空戦力として新たな可能性を切り開いた。小型ドローンは大型機では不可能な方法で戦車や艦船を攻撃できる。
司令官らは、数十機あるいは数百機の無人機が連携して行動する「ドローン群」が低高度の空を支配し、地上部隊や装甲部隊に大混乱をもたらす世界を想定している。
こうしたドローン群は、米インド太平洋軍司令官のサム・パパロ大将が描いた「ヘルスケープ(地獄絵図)」モデルの核心を成す。パパロ氏は、これによって中国人民解放軍などの敵を拘束し、その間に米国がより多くの航空・海軍戦力を地域に展開できる十分な時間的余裕を生み出すことができるようになると述べた。
国防総省はドローンの大量生産計画を推進中だ。これは、ドローンが戦術レベルで日常的に使用される現代戦争の標準装備となりつつあるという軍需産業内の共通認識を反映している。
防衛関係筋がワシントン・タイムズ紙に明かしたところによると、小型ドローンは特に弾薬のような存在になりつつある。つまり、ほぼ全ての兵士が近いうちに装備品として携行する基本的な戦闘装備品になるという。
ドローンの登場によって世界中で、イエメンの反政府勢力フーシ派のような弱小な勢力が、世界最強の軍隊と対峙する際のように、格上の相手を圧倒することが可能になっている。
この新たな枠組みは、ドローンが唯一の答えという意味ではない。一部の航空宇宙業界関係者は、国防総省がすべての時間、関心、資金をドローンに注ぐことに警鐘を鳴らしている。
ミッチェル航空宇宙研究所の所長で、退役空軍中将のデービッド・デプトゥラ氏は「どちらか一方という問題ではない。両方とも重要だ」と述べている。
デプトゥラ氏は最近、スレット・ステータスの週刊ポッドキャストの独占インタビューで「軍はドローンを、いわば特効薬のように見なす誘惑に抵抗しなければならない。これらのシステムはツールであり、包括的な空軍戦略の代わりになるものではない」と述べた。
デプトゥラ氏ら航空宇宙分野のリーダーは、空軍戦略でロッキード・マーティンの戦闘機F35のような有人機に代わりうるものは依然として存在しないことを示す証拠として、今年イスラエルがイランに対して行った空爆を挙げた。イスラエルのF35による作戦はイランの防空網を破壊し、米空軍のB2爆撃機によるイランの核施設を破壊する作戦の成功に重要な役割を果たした。
その他の有人航空機も、制空戦略の中心的な役割を担い続ける。空軍当局者は最近、ボーイング社が製造する戦闘機F47が2028年までに飛行可能になる見通しであることを明らかにした。
空軍はノースロップ・グラマン社の爆撃機B21レイダーを試験中であり、これは同軍の近代化計画の重要な要素となる。同社はB21を「比類なきステルス爆撃機」と位置付け、極限気象下やほぼあらゆる環境下での運用能力を有すると説明している。