米、宇宙兵器の構築急ぐ 軌道上の支配確立へ中露に対抗
(2026年2月15日)

中国新華社通信が提供した写真。2025年11月25日(火)、中国北西部の酒泉にある酒泉衛星発射センターから、長征2F Y22ロケットに搭載された神舟22号宇宙船が打ち上げられた。(連振/新華社=AP通信)
米宇宙軍は、将来の軌道上の紛争で中国やロシアに対する米国の優位を再確立することを狙ったトランプ政権の新方針の下、対宇宙兵器の配備を加速している。
宇宙軍は3種類の電波妨害装置(ジャマー)を配備し、衛星破壊兵器などの高度な宇宙戦能力を持つ中国、ロシアに追いつこうとしている。
宇宙軍のB・チャンス・サルツマン作戦部長(大将)は、ピート・ヘグセス国防長官が最近、宇宙で米軍が優位に立つためこの目標を設定したことを明らかにした。
サルツマン氏はワシントン・タイムズに「宇宙軍はまさにそのために創設された。宇宙での紛争を抑止し、必要とあれば完全に敵をたたきつぶすため、あらゆる対宇宙能力に投資してきたし、今後も続ける」と語った。
「実戦能力を備えた『ガーディアンズ(宇宙軍兵士)』を継続的に訓練し装備することが、戦闘即応態勢の維持に不可欠だ」
ヘグセス氏は先週、宇宙企業ブルー・オリジンでの演説で、国家ミサイル・ドローン防衛構想「ゴールデンドーム」に250億ドルを投じることで、「今後、必要となる最先端の宇宙配備の能力」を獲得すると述べた。
ヘグセス氏は、地球上のどの場所から発射されても、敵ミサイルを探知し、標的とする先進的な衛星センサーを開発中だと語った。
同氏によると、これらを「弾道ミサイルや極超音速兵器、ドローンの脅威が米本土に及ぶ前に無力化できる」宇宙配備型迎撃システムと組み合わせるという。
「それが完全な軌道上優勢を確立する方法だ」
ゴールデンドームの各種システムは、宇宙軍の対宇宙能力を支援するとみられる。
宇宙軍報道官はサルツマン氏の具体的な対宇宙兵器計画の詳細を明らかにしていない。2019年に第1次トランプ政権下で創設された宇宙軍は、現時点で対宇宙分野の能力が限定的で、敵のシステムに対抗するには課題がある。
◆不安定な立場
現在の米国の宇宙兵器には、「通信妨害システム(CCS)」がある。宇宙兵器としては最初に配備されたシステムだ。2020年から運用されている電子妨害装置で、中国、ロシアの衛星通信を一時的に妨害することができる。
これに加え、「メドウランズ」と「リモート・モジュラー・ターミナル」の2種類の電子妨害装置が導入される予定だ。
宇宙軍によると、L3ハリス・テクノロジーズ製のメドウランズは最終段階の訓練および実戦的な演習を実施中で、今年中の配備が予定されている。
メドウランズはCCSの軽量・小型版で、戦術的な電子戦兵器と位置付けられている。
リモート・モジュラー・ターミナルは、ノースストラットおよびCACIインターナショナルが製造し、限定的な初期運用段階にある。試験段階だが、すでに実際に使用可能な状態にある。
ブルームバーグ通信によると、宇宙軍はメドウランズ32基、リモート・モジュラー・ターミナル24基の調達を計画している。
最近成立した総額8906億ドルの国防権限法の対宇宙兵器予算は比較的少額で、宇宙優勢政策を支える水準には見えない。
同法によると、現会計年度の対宇宙兵器の調達費は200万ドル、研究・開発・試験・評価費は3120万ドルとなっている。
国防総省が宇宙兵器開発を優先課題とするのは、軍事作戦での全地球測位システム(GPS)を使った誘導や航法に用いられるGPS衛星、ミサイル警戒衛星、主要な画像・通信システムなど、米国の宇宙システムが宇宙での戦闘を想定して設計されていないためだ。
宇宙軍指導部は、かつては脅威が存在しなかった宇宙環境が、今は米中露にとっての戦闘領域となっていると認識している。
現在の大半の衛星は、敵の妨害電波、レーザー、誘導可能なキラー衛星、対衛星ミサイル、サイバー攻撃に対して脆弱だ。
国防情報局(DIA)のスコット・ベリエ局長(中将)は2022年、米国の衛星の脆弱性について議会で警告した。
ベリエ氏は「宇宙に配備されている通信・航法サービスを失えば、紛争時の戦闘部隊に壊滅的な影響を及ぼしかねない。想定しうる中でもかなり深刻なシナリオだ」と述べた。
米情報機関の最新の年次脅威評価は、中国が宇宙での中心的脅威と断定している。
昨年公表された同評価によると、「中国はすでに、標的とした衛星の妨害、損傷、破壊を目的とした(電子戦)システム、指向性エネルギー兵器、対衛星ミサイルを含む地上配備型の対宇宙能力を実戦配備している」。
「中国はさらに、軌道上技術実証試験も実施した。これは、対宇宙兵器の試験ではないものの、将来の宇宙配備型対宇宙兵器を運用する能力を中国が持っていることを示している」としている。
米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は年次報告で昨年11月、宇宙軍が宇宙兵器の追求に消極的だと批判し、中国の宇宙兵器の危険性を指摘した。報告は、中国も宇宙での優位性獲得を目指しているとした上で、中国軍が米衛星を破壊・妨害可能な複数の宇宙戦システムを配備しているにもかかわらず、それに対抗する兵器の構築で宇宙軍は制約を受けていると指摘した。
同委員会は、バイデン政権下で課された長年の政策的制約を撤廃するよう求めた。同政権は宇宙の兵器化への懸念から宇宙兵器を阻止してきたが、中国とロシアが開発を進めている証拠は数多く見つかっている。
報告は「こうした制約には、ASAT(衛星破壊)兵器、電子妨害、サイバー作戦といった攻撃的対宇宙能力の開発・使用の制限や、既存システムの更新や新能力構築のためのリソースへの制限がある」としている。
一方で委員会は、中国軍が衛星を破壊・妨害し、米国の通信、情報収集、ミサイル警戒能力を無力化し、合同作戦や戦力投射能力を弱めるために、宇宙兵器に多額の投資を行っていると警告した。
中国の宇宙兵器には、3種類の地上配備型衛星破壊ミサイル、デブリを生じさせずに衛星を捕捉・破壊できるロボット衛星群、電子・指向性エネルギー型衛星破壊兵器がある。
委員会は「急速に拡大する中国の宇宙および対宇宙能力に対抗する宇宙優勢の確立」を求めており、政権はこの要請に応じたものとみられる。
報告は「直接上昇型衛星破壊兵器や共軌道妨害システムなど、中国の対宇宙システムへの投資は、紛争初期段階で米軍を盲目化し混乱させる戦略を持っていることを示している」と主張している。
退役宇宙軍大佐のチャールズ・ガルブレス氏は、ヘグセス氏の宇宙優勢に関する発言について「宇宙領域での紛争に関し、公然とこれほど攻撃的な表現を聞いたのはおそらく初めてだ」と述べた。
ガルブレス氏は現在、ミッチェル航空宇宙研究所に所属し、宇宙軍はまだ必要な水準に達しておらず、中国、そして程度は劣るがロシアが対衛星(ASAT)ミサイルや地上配備型レーザーで米国を先行していると指摘した。
同氏は、地上配備型妨害装置では米国は中露と同程度ではないかとの見方を示した。
またあるインタビューで、「対宇宙の観点から見ると、中国の軌道上能力は米国を上回っているように見える」と語った。
現在の宇宙軍の軌道上戦闘能力は、「周囲を監視する」静止軌道宇宙状況認識計画(GSSAP)衛星に限られ、これは対宇宙兵器システムではないと述べた。
さらに同氏は、2年以上前に指摘したように、任務遂行に必要な兵器を持たずに新たな軍種を創設するのは「自己矛盾だ」という見解は今も当てはまると語った。
現在の宇宙兵器の詳細は、情報公開によって将来的に対宇宙兵器が無効となる恐れがあり公開すべきでないとしつつも、抑止のためにはいずれ一定の透明性が必要だと指摘。「自らの軍事的優位を公に認めさせることで敵を抑止するのが目的なら、その能力の一部について話すことも必要だ」と述べた。
世界の対宇宙兵器に関する年次報告を発表しているセキュア・ワールド財団は、過去の米国の兵器体系はこれら3種類の妨害装置よりもはるかに大きな宇宙戦能力を提供していたと主張する。
同財団の最新報告によれば、冷戦期に米軍は核弾頭搭載ミサイルからF15戦闘機発射型の通常弾頭衛星破壊ミサイルまで、複数の対宇宙兵器を開発していた。
戦闘機発射型ASATミサイルASM135は1985年に試験されたが、反対する軍備管理派の圧力を受けて後に放棄された。
米国は軌道上で他の物体に接近・機動できる衛星能力を保有しており、2003年には技術実証衛星XSS10で軌道上のロケット上段付近での近接機動が可能であることを実証した。
同財団の報告はまた、無人宇宙往還機X37Bが対宇宙兵器として利用可能であり、中国とロシアはこれを軌道爆撃機や秘密の宇宙兵器実験機と呼んでいると指摘した。
そのほか、GSSAP衛星、3種類の既存の妨害装置、過去に試験されたレーザーや粒子ビーム、高周波ビームなどの地上配備型指向性エネルギー兵器も、米国の対宇宙システムに該当し得るとしている。
この最新報告の著者ビクトリア・サムソン氏は、中国やロシアが宇宙兵器で米国を上回っているとは考えていないと述べた。
同氏は電子メールで「米国が公式に実戦配備している攻撃的対宇宙兵器は3種類にすぎないが、共軌道(コオービタル)型および直接上昇型ASAT兵器の試験に成功し、低軌道と静止軌道の双方で高度な接近・近傍運用を行い他国衛星を監視・追跡し、世界最先端の宇宙状況認識能力を保有している。さらにゴールデンドームの開発が進めば、迎撃ミサイルを軌道上ASATとしても利用可能な形で宇宙を兵器化することになる」と述べた。
ロシアが米国に対して持つ最大の優位は、衛星攻撃に用い得る軌道上核弾頭の開発とされる。一方、中国は役目を終えたり、寿命を迎えたりした衛星を捕捉し、「墓場軌道」へ移動させる衛星の運用で先を行っている。
「米国はそのいずれも実施していないが、補給や、修理などの衛星サービスは行っている」と同氏は述べた。
◆軌道上の戦いの指針
宇宙での戦闘遂行に関する宇宙軍の計画は、2025年3月に公表された報告書「米宇宙軍の用兵-作戦立案者のための枠組み」に示されている。
報告は、攻撃および防御の双方による宇宙の支配について、対宇宙作戦の3つの主要類型を定義している。
報告は「対宇宙作戦は、宇宙アーキテクチャーの軌道、リンク、地上の各セグメント全体で実施される」とし、「宇宙優勢」の獲得で効果を発揮するとしている。
戦闘には、火力、機動、運動を用いて宇宙を統制する「軌道戦」が含まれる。
また、敵の宇宙および対宇宙の脅威を打ち破るため、電磁戦も用いられる。
サイバー戦も宇宙戦闘の重要な要素となり、攻撃やその他の行動を通じて宇宙の支配権獲得を図る。
攻撃的な宇宙戦闘には、軌道攻撃、衛星の追跡と護衛、スタンドオフ攻撃、宇宙通信リンクの遮断、敵システムを捕捉・破壊可能な機動型キラー衛星の運用が含まれる。
軌道攻撃では、攻撃側システムが敵宇宙機に機動接近した上で兵器を使用する「追跡作戦」を実施する。あるいは、宇宙軍は近接遭遇を伴わずに攻撃する宇宙配備型または地上配備型の長距離ミサイルによるスタンドオフ作戦を用いる。
宇宙リンクの遮断には、電磁的攻撃やサイバーネットワーク攻撃が用いられる。
地上からの攻撃では、敵宇宙機の打ち上げ前または直後にミサイルなどで攻撃するほか、敵の地上配備型対宇宙部隊、発射インフラ、指揮統制施設、アンテナ、地上配備型宇宙状況認識センサー、任務ネットワークなども標的とする。
報告は「地上攻撃作戦の目的は、敵が宇宙能力または対宇宙能力を獲得、支配、活用しにくくすることにある。地上攻撃作戦は、空中発射型、地上発射型、海上発射型、宇宙発射型の火力によって実施され得る」としている。
防御行動もまた、米国と同盟国の宇宙システムを攻撃、妨害などの危険から守ることを目指す。報告は「能動的宇宙防衛は、安全で、高度な即応性を備えた指揮統制システムに支えられた兵器およびセンサーを組み合わせて、宇宙の脅威を探知、特定、追尾、標的化し、破壊または効果を低減させるために実施される」と述べている。
さらに報告は「対宇宙作戦は統合作戦に不可欠であり、宇宙優勢を確保することは、それを達成した側に決定的な優位をもたらす」と強調している。
◆今後の任務
サルツマン宇宙軍作戦部長は昨年3月の演説で、宇宙軍には1万5000人以上が所属し、予算は国防総省全体の3.3%を占めていると述べた。
宇宙軍の優先事項は3つあり、対宇宙システムはそのうちの1つ。他の2つは、宇宙で起きていることを把握する「宇宙状況把握」と、宇宙紛争を生き残る強靭な衛星システムである。
サルツマン氏は、対宇宙兵器を6つのカテゴリーに分類している。宇宙配備型が3種類、地上配備型が3種類で、それには、妨害装置、指向性エネルギー兵器、ミサイルなどが含まれる。宇宙軍はまた、「ゴールデンドーム」でも主要な役割を担うと述べた。
対宇宙兵器はいくつかに大別される。運動エネルギーで破壊するミサイルのほか、可逆的、不可逆的な電子攻撃やサイバー攻撃がある。ハードキル型システムは、ミサイルなどの投射体で衛星を攻撃する。
中国とロシアは、衛星を破壊可能な地上発射型の対衛星ミサイルを複数試験・配備してきた。
その中でもよく知られているのは2007年の中国による対衛星ミサイル実験だ。ミサイルが気象衛星を破壊し、それによって高速で軌道上を飛行する数千個もの宇宙ごみ(デブリ)が発生し、現在も宇宙機に脅威を与え続けている。
2021年には、ロシアが対衛星ミサイルの実験を実施し、1500個以上のデブリが発生した。
同一軌道上を周回する共軌道(コオービタル)型の衛星対システムも、対宇宙兵器の一分野である。修理衛星を装ったロボット衛星に機械アームを装備し、他の衛星をつかんで破壊することが可能とされる。
中国はこうしたシステムを複数保有し、試験を実施してきた。2021年に打ち上げられた衛星「実践21号」は、測位衛星「北斗」を捕捉してより高い「墓場軌道」へ移動させた。米当局は、これを軍民両用の対衛星能力とみている。
ロシアの共軌道型キラー衛星については、米情報機関が「ニベリル」システムとして把握している。いわゆる入れ子式の子衛星を展開し、調査や運動エネルギー攻撃を行う能力を持つとされる。ロシアはまた、低軌道および高高度静止軌道の衛星攻撃を想定したミサイル「ブレベスニク」の開発も進めている。
このほかロシアには、過去に米偵察衛星に接近・追尾した「コスモス」シリーズの機動衛星がある。
電子攻撃の分野では、高出力レーザーやマイクロ波兵器の開発が進められている。一部報道によれば、デブリを発生させずに衛星の電子機器を損傷させる電磁パルス兵器の使用も想定されている。
エミル・マイケル国防次官(研究・工学担当)は、Xへの投稿で、国防総省が現在、指向性エネルギー兵器を保有していると明らかにした。
同氏は「そうだ。戦争省は指向性エネルギー兵器を保有している。その通り、拡大している」と述べた。投稿では政権側が用いる「戦争省」の呼称を使用していた。
この投稿には、艦艇搭載型の指向性エネルギー砲のグラフィック画像も含まれていた。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは今月、中国の研究者が、スペースXの「スターリンク」のような低軌道衛星群を破壊可能なトラック搭載型の高出力マイクロ波砲を開発したと報じた。
宇宙ベースのインターネット接続を提供するスターリンクについて、中国共産党当局は、技術的統制や検閲を突破する手段として利用される可能性を警戒している。
対衛星サイバー攻撃では、軍のハッカーがデータの傍受や改竄、さらには宇宙システムの掌握など、悪意のある目的のためにサイバー手段を活用する準備をしている。
すべての衛星はデータリンクに依存しており、十分に保護されていなければハッキングされ、妨害攻撃や場合によっては衛星の恒久的喪失につながる恐れがある。
米中経済安全保障調査委員会の報告書は、米国が宇宙分野での主導的地位を中国に奪われる危険に直面していると警告した。
中国との競争は、宇宙領域の将来を規定する重要インフラやルール形成の仕組みを誰が掌握するかを巡る争いだ。
報告書は「軍事、商業、民生・外交の各分野にわたる中国の宇宙能力の急速な拡大と、米国を世界最高の宇宙大国の座から退けようとする意図は、すべての米国人にとって懸念すべきものだ」と指摘した。
さらに「この競争に勝つことは、単に軌道上での優位を確保することだけを意味しない。重要インフラを保護し、運用の強靭性を維持し、宇宙統治における民主的価値を守り、宇宙のルールや規範の形成において米国の基準が指針となるよう確保することでもある。さもなければ、中国は宇宙を自国の戦略的利益のために利用し、米国に不利益をもたらすだろう」とした。
同委員会は、米国が新たな宇宙開発競争に勝利し、長年にわたり米国の軍事的・経済的指導力を支えてきた戦略的優位を維持するため、政策決定者が緊急の行動を取らなければならないと結論付けている。

