技術の進化とともに低下する学力 古典教育に立ち返るべし-キャスリーン・オトゥール

(2026年4月14日)

より賢い人工知能(AI)と、より愚かな人類 イラスト:アレクサンダー・ハンター/ワシントン・タイムズ

By Kathleen O’Toole – Thursday, April 9, 2026

 「私たちの子供たちは、同じ年齢だった頃の私たちよりも認知能力が低い」――。

 これは、神経科学者ジャレッド・クーニー・ホーバス氏の指摘だ。今年、上院商業・科学・運輸委員会で語った。

 教育と発達に対する取り組みを抜本的に変えなければ、次世代は知的潜在能力を十分に発揮できなくなる。

 子供たちが弱体化する一方で、私たちの道具はより賢くなっている。人工知能(AI)モデルは毎週のように新たな限界を突破し、複雑な問題を解決し、数年前には考えられなかった速度で進化している。

 世界はこの機械の知能の高さに目を見張るが、その陰で人間の知能は低下しつつある。

 こうした傾向は歴史的に見てあまり例がない。20世紀には教育の普及と質の向上に伴い、認知能力は向上していた。

 しかし21世紀に入って数年後、状況は変わった。読解力、数学力、問題解決能力、創造性、科学的理解はいずれも低下し、小学4年生の読解テストでは全ての成績層で点数が下がった。

 大学レベルでは、チャールズ・ディケンズの文章を理解し、平易な英語で説明できる学生はわずか5%にとどまる。

 一流大学でさえ新入生に数学の補習授業を課さざるを得ず、成人の半数は小学6年生未満の読解力しか持たない。

 何が起きたのか。

 新型コロナウイルスが原因とされがちだが、教育水準の低下はパンデミック(新型コロナの大流行)以前から始まっていた。学習基準の引き下げも一因だが、それだけではこの低下を説明できない。

 真の原因はテクノロジーにある。ホーバス氏は「授業でのモニター使用が増えるほど、学習成果は上がるのではなく下がる傾向がある。多くの基礎学習の場面で、モニターは学習速度を遅らせ、理解は浅くなり、記憶の定着を弱める」と述べている。

 教師の力量や生徒の意欲、学校の資金力に関係なく、モニターに費やす時間が長いほど成績は悪化する。

 データは明白だ。それにもかかわらず、生徒や保護者、教育関係者は再び、より危険な技術のわなへと無自覚に踏み込もうとしている。AIの授業への導入だ。

 メラニア・トランプ大統領夫人は最近、ホワイトハウスで開かれたAIと教育のイベントに、人型ロボットとともに登場した。「『プラトン』という人型教師を想像してほしい。古典学へのアクセスは瞬時に可能になる。文学、科学、芸術、哲学、数学、歴史―人類の知の全てが自宅で手に入る」と語った。

 この約束は魅力的だが危険でもある。

 過去15年以上、社会全体で教育にテクノロジーを導入する実験を行ってきたが、その結果は惨憺たるものだった。それでもなお、「AIならうまくいくかもしれない」と言う。

 どこかで立ち止まらなければならない。新しい、効果が実証されていない手法ではなく、実績のある古典教育に立ち返るべきだ。先人を見れば明らかだ。スマートフォンというポケット百科事典もない時代、良書と読み書き計算の基礎だけで、人々は今日では想像もできないほどの知的成果を挙げてきた。

 1858年のリンカーン・ダグラス討論では、3時間に及ぶ高度で緻密な議論を何万人もの人々が集中して聴いた。現在では多くの学生が全文を読み切れず、一流大学でも取り上げるのはその一部だけだ。

 詩人ロバート・フロストの朗読を聞くために、講堂に人があふれた時代もあった。今ではテレビ番組を見ながらスマートフォンを操作せずにいられない人が多い。

 先人たちはコンピューターなしでピラミッドやロケットを造り、日食を予測し、海を航海し、地球の大きさを計算し、物理法則を導き出した。

 人間の精神を極限まで鍛えれば、どれほどの能力に到達できるのか想像してみるべきだ。

 教育でのテクノロジー依存の最大の問題は、成績低下ではない。思考を機械に委ねることで、人間が本来持つ能力そのものが奪われる点にある。

 テクノロジーはあらゆることを代行すると約束するが、それこそ知的営みには不要なものだ。思考を肩代わりし、誤りを訂正し、記憶を置き換え、活動をゲーム化する道具は、成長に必要な試行錯誤の機会を奪う。

 SFの古典「デューン」では、人類は思考する機械に対して聖戦を起こし、人間の自律性を損なう機械を排除する。その結果、精神能力は飛躍的に向上する。

 この教訓をそのまま受け取る必要はない。コンピューターやモニターは大きな利点ももたらすし、それらを排除すれば自動的に知能が向上するわけでもない。

 しかし一つの真理はある。機械が私たちに代わって考え始めたとき、それは優位性の獲得ではなく、思考力の喪失にほかならない。

    ◇

キャスリーン・オトゥール ヒルズデール・カレッジ(米ミシガン州)の副学長補佐(K12=幼稚園から高校=教育担当)。ヒルズデール・アカデミーの高校教員。

この1972年のファイル写真は、ロックンロールの王様、エルヴィス・プレスリーがパフォーマンスをしている様子を捉えたものです。(AP通信/ファイル写真)

冷蔵庫からロックンロールまで―米国、知られざる発明の250年

(2026年07月08日)
2021年9月21日、ニューヨークで開催された第76回国連総会の期間中、総会議場内から見た国連本部ビル。(エドゥアルド・ムニョス/AP通信提供)

中国「民族団結法」施行に抗議、チベット人が米で焼身自殺

(2026年07月07日)
ヴァンダービルト大学、テネシー州ナッシュビル - 2022年5月10日。写真提供:Fotoluminate LLC(Shutterstock経由)。

人文科学のリベラル偏向に警鐘 大学の報告書に教育界が反発

(2026年07月06日)
メラット・キロス氏は、2026年5月28日、デンバーのモントビュー長老派教会で開催された女性有権者連盟主催の第1選挙区候補者フォーラムに参加した。(RJ Sangosti/The Denver Post via AP)

民主党内で社会主義派に勢い コロラド州予備選でも勝利

(2026年07月05日)
2026年6月30日火曜日、ワシントンD.C.の連邦議会議事堂前で、トランスジェンダーの少女や女性が学校の運動部でプレーできるかどうかに関する最高裁の判決を前に、人々が祈りを捧げている。(AP通信/ホセ・ルイス・マガナ)

保守派「まだすべきこと多い」 トランスジェンダーの女子スポーツ参加禁止を最高裁が容認

(2026年07月04日)
フィッシャー上院議員、中国に対抗するため核戦力三本柱の見直しとゴールデンドーム建設を推進

「戦略環境の変化に備えよ」中国視野に核戦力増強を訴え 米上院議員

(2026年07月02日)
トランプ大統領は、2026年6月26日(金)、ワシントンD.C.のホワイトハウス大統領執務室で撮影された。(AP通信/ジュリア・デマリー・ニキンソン)

トランプ氏「宗教を復活させる」 ホワイトハウス宗教自由委、信教の自由推進へ提言書

(2026年07月01日)
2025年5月30日(金)、カリフォルニア州クロービスで開催されたカリフォルニア州高校陸上競技選手権大会の会場外のポールに、「Gooo Girls Honor Title IX」と書かれた手作りの看板がテープで貼り付けられている。(AP通信/ジェイ・C・ホン)

トランプ政権、メリーランド州の学校を調査 女子施設の男子利用容認で

(2026年06月30日)
民主党下院議員候補のクレア・バルデス氏が、2026年6月18日木曜日、ニューヨーク市ブルックリン区で行われたニューヨーク州予備選挙に向けた投票促進集会で演説を行った。(AP通信/ライアン・マーフィー)

予備選で民主社会主義候補が相次ぎ勝利 民主党内で存在感

(2026年06月29日)
ホワイトハウス行政管理予算局長ラッセル・ヴォート氏が、2026年6月24日、ワシントンD.C.の米国海軍記念碑で開催されたワシントン・タイムズ紙主催の脅威状況に関するイベントで、同紙の国家安全保障担当編集者ガイ・テイラー氏と会談した。写真提供:エレノア・カウフマン(ワシントン・タイムズ特別寄稿)。

造船業立て直し、海軍増強へ 中国への遅れ逆転する 米予算局長官

(2026年06月27日)
→その他のニュース