胚ランク付けサービス 子供の商品化と批判

医療分野の伝統的なシンボル: 聴診器と情報カード。(ファイル写真クレジット:Garsya via Shutterstock)
By Emma Ayers – The Washington Times – Thursday, June 19, 2025
胚の遺伝子検査・選別を行うスクリーニングサービスが、科学者、倫理学者、宗教指導者らから激しい批判を受けている。彼らは、この技術が親を消費者、子供を商品に変えてしまうと主張する。
マンハッタンのバイオテクノロジースタートアップ企業ニュークレアス・ゲノミクスは、遺伝的「最適化」のためのツールとしてソフトウエア「ニュークレアス・エンブリョー」を販売している。このソフトでは、体外受精を受けるカップルが、最大20個の胚のDNAをアップロードし、知能、不安症、依存症のリスクなどに基づいてランク付けできる。
胚は、その際に使用された卵子と精子のいずれのソースからも取得できる。
最低5999ドルで、親は「ポリジェニックリスクスコア」を受け取ることができ、これによって将来の子供がアルツハイマー病や糖尿病を発症する可能性や、高いIQ、低いBMI、不安耐性、特定の目の色などの特性を有する可能性を推定できる。
ニュークレアス・ゲノミクスはX(旧ツイッター)に「すべての親は、子供に自分たちよりも多くのものを与えたいと考える」と投稿し、ユーザーが予測される特性に従って胚を並べ替えるダッシュボードを示すプロモーション動画を公開した。
しかし、一部では、このツールの根本的な目的は愛よりもコントロールすることにあると批判されている。
ヘリテージ財団のテクノロジーと人間性センターで政策アナリストを務めるエマ・ウォーターズ氏は、「一部の親にとって、それは、糖尿病の可能性や、聴覚障害の可能性といった、現代の医療で治療または回復が可能な状態を調べるもののように映る」とワシントン・タイムズに語った。
「しかし、多くの他のケースでは、親が積極的にこの技術を利用して、最も賢い子供、特定の性格を持つ子供、適切な性別、または親の理想の子供像に合う子供-青い目や金髪など-を選択している。これらのケースは、同様に、あるいはより深刻な問題だ」とウォーターズ氏は述べた。
ヌクレウス社の創設者キアン・サデギ氏(25)は、このソフトを「親が、生まれる前の子供に幸せな人生の最高のチャンスを与えるための生殖の自由の進化」と称賛した。
サデギ氏はウォール・ストリート・ジャーナルに「これはより長く、より健康な人生を送るかどうかの問題だ」と語った。彼は、胚の遺伝子検査は成人自身がリスクマーカーを検査するのと何ら変わらないと述べた。
未来予測専門の調査・広報コンサルティング会社フューチャープルーフのディレクター、ダミアン・モリス氏は、このサービスに懐疑的な人々がこれを論破するのは難しいと述べた。
モリス氏は先週Xに「第一に、権利に基づく主張に反論するのは結果論からでは難しい。同様に、競合する権利を根拠に権利に基づく主張を否定するのも難しい」と投稿した。
「さらに、リベラル派は胚の選別に反対しても、親の選択する権利を効果的に否定することは難しい。それが中絶問題での自身のプロチョイス(中絶支持)の立場に反する可能性があるからだ」
ワシントン・タイムズはヌクレウスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
ナショナル・カトリック・バイオエシックス・センターの上級倫理学者タッド・パホルチク神父は、子供の質を測定しようとする試みは、どのような方法であれ、道徳的に許されないと述べた。
パホルチク氏はカトリック・ニュース・エージェンシーに「カップルは、脆弱で声なき子供たちの質をコントロールしたり、優生学に基づく措置を取ったりしたくなるものだ」と語った。
彼は、この技術が「生殖に対する指揮・統制のメンタリティー」の表れであり、人間の胚を「原材料のように扱っている」と警告した。
ソーシャルメディアでの反発の多くは、ヌクレウスの発表を「ディストピア的」と評している。
あるベンチャーキャピタリストはXに「ノアのように将来を見越して、船を用意しようと思っていた。だが実際にこの現実を見ると吐き気がする」と投稿した。
他のユーザーは同社を「胚のアプリストアを作ろうとしている」や「ランキングアルゴリズムで神を気取っている」と非難した。
「しゃれたUIを備えた優生学だ」と主張する別のポストは多くの人に読まれた。
遺伝学vs環境
ニュークレアス・ゲノミクスがサービスの基盤として掲げる「ポリジェニックスコア」は、複数の情報源によると医療ではそれほど広くは受け入れられていない。
コーネル大学の2024年の研究では、ポリジェニックスコアには統計的に大きな不確実性があり、真のばらつきを過小評価し、信頼性の低い予測をもたらすことが明らかになっている。
コロンビア大学の生命倫理学者ロバート・クリッツマン氏は月刊誌「Inc.」に、「人が病気にかかるかどうかには、非常に多くの要因が関わっている。同社が実施しているような検査が、必ずしも臨床的に有効で信頼性があるとは限らない」と指摘した。
ニュークレアスが評価対象としている疾患の一つ、乳がんについても、遺伝と関連があるのは4分の1だけだ。クリッツマン氏によると、その大部分は環境要因に起因している。
それにもかかわらず、この技術が、それを購入できる親たちの間で「新しい標準」となることを倫理・公共政策センターの研究員パトリック・ブラウン氏は懸念していると述べた。
ブラウン氏はワシントン・タイムズに「もちろん、自分の子供が健康、成功、IQ、富、運動能力、美しさなどのすべてにおいて最高のチャンスを得られるのなら、親は実行しようとするはずだ。つまり、これらのことをしない親は悪い親ということになるのか。私は、高所得者層の間で、これが新たな標準となる可能性があると考えている」と述べた。
一方で、このような選別システムがバイオテクノロジー界を間違った方向へ導いているとの批判もある。
ウォーターズ氏はワシントン・タイムズに「病気や有害な症状が発生するリスクを排除する技術が進むと、その意図が何であれ、命を救う研究や治療に取り組む科学者の意欲を削ぐことになる。したがって、特定の条件を持つ胚を単に破壊することに優先順位を置くほど、将来の子供たちにとってその研究分野での真の革新や進展が見られる可能性は低くなる」と語った。
ティール奨学生で、ペンシルベニア大学を中退後、ヌクレウス・ゲノミクスのために3400万ドルを調達したサデギ氏は、この議論を歓迎している。
最近公開されたプロモーション動画で彼は、遺伝子スクリーニングを体外受精(IVF)に例えた。つまり、かつては議論の的だったが、今では一般的になった。
「遺伝子最適化も同じ。技術は既に存在し、今後も進歩し続ける」
実際、バイオテクノロジー業界に近い関係者はワシントン・タイムズに、このような製品を発表する企業は今後、ニュークレアス・ゲノミクス以外にも出てくると述べた。
「子供は授かりものとして見るべきで、商品として扱われるべきではない」と考える人々は、サデギ氏が間違っていてほしいと思っている。
パホルチク神父はカトリック・ニュース・エージェンシーに「神の創造物の中で最も脆弱な存在である人間の胚は、無条件に愛をもって受け入れるよう私たちに委ねられている。私たちの家族としてやってくる子供は、そのままで尊く、善く、美しい存在だ」と述べた。
ブラウン氏は、この技術が開発される前に「哲学的な質問が十分に問われなかった」ことは明らかだと述べた。
「『ジュラシック・パーク』にこんなせりふがあった。『あなたの科学者たちは、それができるかどうかばかりに気を取られて、すべきかどうかを考えなかった』。今がまさにその状態だ」