台湾周辺で中国軍機の飛行が減少 トランプ大統領訪中に関連か

(2026年3月13日)

米海軍が提供したこの写真では、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ハルゼー」(DDG 97)が、2024年5月8日(水)、台湾海峡を航行中に定期的な作戦行動を行っている。(AP通信経由、米海軍第3級マスコミュニケーションスペシャリスト、イスマエル・マルティネス撮影)

By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, March 10, 2026

 台湾周辺での中国軍機の飛行が急減している一方、艦船の活動は依然、続いている。一方で、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談が間もなく実施される。

 台湾軍当局は10日、過去10日間のうち9日間、戦闘機や無人機の台湾周辺空域への浸入が確認されなかったと発表した。専門家は、劇的な減少と指摘する。中国軍機や無人機はよく、幅約100マイル(約160キロ)の台湾海峡の中央に引かれた中間線を越えていた。

 米軍情報当局によれば、空域への浸入は、中国政府がこの民主主義体制の島国、台湾に圧力をかける作戦の一環とされる。中国は台湾を自国の一部と見なしている。

 台湾国防部(国防省)が公表した中国人民解放軍機の飛行データによると、2月28日以降、台湾周辺で確認された中国機はわずか2機にとどまっている。

 国防部はX(旧ツイッター)への投稿で、9日から10日朝にかけて、台湾周辺で中国人民解放軍海軍の艦艇計8隻が活動しているのを確認したと明らかにした。

 この投稿で「この期間中、台湾周辺で人民解放軍機の活動は確認されなかったため、飛行経路図は提供しない」と説明している。

 昨年の同時期には、台湾周辺で人民解放軍機が86回、飛行したことが報告されていた。

 台湾周辺での航空機出撃回数は、今年1月と2月には2025年の同時期に比べ約42%減少した。

 一方、台湾周辺を航行する人民解放軍の艦艇数は、1日平均で約6隻前後の水準が続いている。

 軍用機の侵入が減少する一方で、中国は来月のトランプ氏の公式訪中の準備を進めている。

 また、中国共産党は現在、北京で全国人民代表大会(全人代)という重要会議を開催している。

 軍用機の飛行が減少しているもう一つの要因として、ここ数週間に行われた人民解放軍幹部の粛清が指摘されている。制服組トップの張又侠・中央軍事委員会副主席、同委員会の別の高官が失脚した。

 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、トランプ氏の訪中は日程の制約と安全上の懸念から、訪問先は北京だけとなる見通しだ。

 同紙は関係筋の話として、トランプ政権の当局者らが今月初めに北京を訪れ、訪問準備は最終段階に入っていると報じた。

 トランプ氏は3月31日から4月2日まで中国を訪問する予定だ。

 同紙によると、米国のイラン攻撃は、この首脳会談の準備にそれほど大きな影響は与えていないという。

 人民解放軍に詳しい退役米海軍大佐カール・シュスター氏は、軍用機の飛行の減少は、米中会談を前に台湾をめぐる緊張を抑える狙いがある可能性が高いと指摘する。

 シュスター氏は「台湾問題は議題になるだろうが、出撃回数を減らすことで、中国が緊張緩和を模索しているとの印象を与える」と語った。

 その上で「出撃はトランプ氏が帰国してから約30日後には再び増えるだろう」との見方を示した。

 同氏はまた、中国が今はトランプ氏を刺激するリスクを冒す時ではないと考えて、出撃を控えている可能性もあると指摘する。習氏からみたトランプ氏は、予測不能だが、即断できる人物だ

 別の要因として、2月16日から23日の中国の春節(旧正月)休暇も挙げられる。

 この祝祭も、トランプ氏訪中の日程が決まるまで飛行を控える合理的な理由になり得る。

 ただシュスター氏は「これは主要な理由ではない。望ましい取り決めが成立しなかった場合の体面を保つための予防策に過ぎない」と述べた。

 一方、退役米海軍大佐ジェームズ・ファネル氏は、軍用機飛行の減少は、米国のイラン攻撃に対する中国共産党の防御的反応だと指摘する。

 ファネル氏は「中国の習近平主席は、米国のイラン攻撃に明らかに衝撃を受けた。台湾周辺や台湾に対する人民解放軍空軍の活動縮小は重要な出来事であり、米軍の抑止力の重要性を示している」と述べた。

 中国問題の専門家リック・フィッシャー氏は、来年で台湾に対する威圧的行動が始まって10年目を迎えると指摘する。台湾周辺での空海軍による嫌がらせ行動は当初、定期的だったが、やがて日常的になり、今も続いている。

 シンクタンク国際評価戦略センターの研究員であるフィッシャー氏は「米国が台湾海峡で大規模な軍事力の誇示を定期的に行い、中国の攻撃を抑止する意思がないなら、少なくとも言葉で圧力を強める必要がある」と語った。

 その上で「台湾の存続を確保することは、すべての民主主義国が自らの存続のために戦わなければならなくなる日を先送りすることにつながる。また中国のすぐ近くに自由主義の国が存在すること自体が、中国共産党の正統性と権力を弱める」と述べた。

 戦略国際問題研究所(CSIS)の中国軍アナリスト、ブライアン・ハート氏は、軍用機浸入の減少は特に異例ではないと指摘する。

 ハート氏はXに「これは不思議な現象ではない。毎年、全人代など『二つの会議』の時期になると、人民解放軍機の台湾防空識別圏(ADIZ)への浸入はゼロ、またはほぼゼロまで減少する」と投稿した。

 全人代は現在、北京で開かれている。

 ハート氏は「もしこの傾向が会議終了後も長く続けば異例だが、現時点で異常を示す証拠はない」と述べた。

 人民解放軍の監視を行っているオンラインサイト「PLAトラッカー」を運営するベン・ルイス氏は、軍用機活動の減少は通常の行動パターンを乱す重要な変化だと指摘する。

 ルイス氏はAFP通信に対し「活動の空白が長く続くほど、より広い意味での影響が懸念されるようになるだろう。ただ現時点では、中国が大規模な軍事行動を準備している兆候は見ていない」と語った。

 台湾の安全保障当局者はAFPに対し、中国は台湾への圧力を弱めているかのような誤った印象を広め、米国の台湾防衛支援を弱めようとしている可能性があると指摘した。

 この当局者は「警戒を緩めてはならない」と述べた。

 米情報当局者によると、中国軍による台湾周辺での演習や作戦は2020年ごろから増加し始めた。台湾政府に圧力をかける大規模な「圧力キャンペーン」の一環だという。

 習氏はその前年、人民解放軍に対し、2027年までに台湾への軍事行動に備えるよう命じていた。それ以前の目標は2035年までだったという。

 この当局者は「2020年、だいたい2020年後半に、初期作戦能力(IOC)を獲得する軍事装備が急増したことが確認されている」と説明した。

 これらの新兵器には中距離ミサイルや準中距離ミサイルなど複数の弾薬が含まれていた。

 また。この当局者は「軍事開発は2つの主要目標を中心に進められている。1つは台湾侵攻シナリオ、もう1つは介入阻止だ」と述べた。介入阻止とは、台湾防衛に介入する米軍を阻止する作戦を指す。

 「彼らはこの2つの目標に沿って演習を行っている」という。

 これらの演習は軍事行動の「予行演習」であり、部隊訓練の役割も果たしている。また米国への戦略的メッセージとして利用されることも多く、台湾への武器売却や外国首脳の台湾訪問など、中国が嫌う米国の行動への対抗措置として実施されることが多いという。

 同当局者によると、演習は数日間続き、終了後には以前より多くの兵力が現地に残される。

 この当局者は「それが現在、中国軍の新たな『通常状態』になっている。これが戦略だ」と述べた。

 2022年には、当時の米下院議長ナンシー・ペロシ氏の台湾訪問を受け、中国軍は圧力キャンペーンを強化した。

 この当局者は「それ以降、中間線を越える浸入が何度も起きるようになった。以前は年に1、2回程度だったが、その後は年10回、さらに現在では戦闘機が数百回も中間線を越えるようになった。こうして圧力キャンペーンが本格化していった」と語った。

 この圧力キャンペーンは、台湾侵攻作戦に備えた部隊訓練の意味もある。頻繁な飛行は台湾軍の疲弊を狙ったものでもあり、台湾側はそのたびに迎撃機を出さざるを得ない。

 当局者は「これは台湾へのメッセージでもある」と述べた。

 「中国の目標は台湾を降伏させることだ。政治的統一を望んでいる。中国は台湾侵攻を目標としているわけではない。戦わずに達成することを望んでいる。威圧による降伏などの手段で統一を実現することを目指している」

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