太平洋軍司令官、イランへの勝利は中国の台湾攻撃抑止に有効

2024年8月29日(木)、フィリピン北部のバギオにあるフィリピン陸軍士官学校で開催された「相互防衛委員会・安全保障協力委員会」の会合に関する記者会見で、米インド太平洋軍司令官のサミュエル・J・パパロ・ジュニア提督が身振りを交えて説明している。(AP通信/アーロン・ファビラ)
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, April 21, 2026
米インド太平洋軍の司令官は20日、議会で証言し、イランとの戦争で米国が勝利すれば、中国による台湾への軍事攻撃を抑止する効果があるとの認識を示した。
ハワイを拠点とし、アジア太平洋地域の米軍を統括するサム・パパロ司令官(海軍大将)はまた、中国が過去2年間で通常戦力と核戦力の双方を急速に拡大させたことを明らかにした。その上で、国防総省や防衛企業に対し、対中抑止に必要な兵器の開発と配備を加速するよう求めた。
イランでの紛争に関する上院軍事委員会の公聴会でパパロ氏は「戦場で勝利することに代わるものはない」と述べた。
また、インド太平洋軍はイランに対する作戦の一部に直接関与し、イラン海軍艦艇への攻撃や船舶の拿捕阻止などを実施したと説明した。
さらに「中国に見せたいのは、米国が侵略に対して対応する能力と意思を持っているということだ。その点について疑念を抱かせたくない。それが抑止につながる。抑止こそがわれわれの最重要任務だ」と強調した。
中国軍はイランに対する米国とイスラエルの軍事作戦を監視し、高度な意思決定能力から学習していると指摘した。
また、イランが周辺国に対して行ったミサイルやドローン攻撃は、小型で低コストの兵器の有効性を中国に示したとも述べた。
中国の急速な軍拡について同氏は、2024年以降、原子力攻撃型や弾道ミサイル搭載型を含む潜水艦12隻、空母1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦10隻、フリゲート艦7隻、さらに揚陸戦力や戦闘支援部隊を人民解放軍に配備したと明らかにした。
加えて、中国は現在600発以上と推定される核弾頭を、今後5年間で2倍以上に増やす見通しだとした。
こうした大規模な軍備増強は、戦力投射、周辺各国への威圧、中国主導の新たな秩序構築を目的としていると分析した。
パパロ氏は、B21戦略爆撃機やコロンビア級弾道ミサイル原子力潜水艦の増産、極超音速ミサイルや無人機、海洋システム、先進兵器技術の配備加速を議員に求めた。
また、コロンビア級潜水艦の建造数を現行の12隻から16隻に増やし、ミサイル発射管を64基追加すべきだと訴えた。
「これが実行されれば、拡大抑止能力を強化し、戦略兵器、戦術兵器双方の即応性を高めることにつながる。増強を強く支持する」と述べた。
国防総省は同日、新型艦艇や航空機、ミサイル防衛網「ゴールデンドーム」などを盛り込んだ1兆5000億ドルの国防予算要求を公表した。
台湾は依然として米中間の主要な火種であり、中国は武力による台湾併合を放棄しておらず、周辺で威圧的な軍事行動を繰り返している。パパロ氏は、過去には侵攻を想定した演習も行われていたと指摘した。
同氏はまた、ウクライナ戦争で使用されている低コストのドローンから教訓を得ており、中国の台湾攻撃を抑止する取り組みに応用していると述べた。
インド太平洋軍は、低コストの爆弾やミサイル、ドローン戦を組み合わせて中国の攻撃コストを引き上げる「ヘルスケープ(地獄絵図)戦略」を採用しているという。
パパロ氏は「こうした教訓を最大限に生かすことが不可欠だ」と強調した。
中東での戦争により高性能および低コストのミサイルや爆弾の備蓄が減少している点については、防衛企業は迅速に補充を進める必要があると指摘。「生産拡大には1~2年かかるが、それでは遅すぎる。新興の企業も含め、極超音速兵器や低コスト巡航ミサイル、多様な無人システムの導入を急ぐべきだ」と述べた。
また、ロッキードやレイセオンといった企業に対し、兵器の増産を加速するよう要請しており、順調に進展しているとした。
提出された書面証言では、政府に対し「抑止力強化、戦闘即応態勢と戦力配置の改善、重要能力の獲得、同盟・パートナー国との関係の深化を急ぐべきだ」と訴えた。
具体的には、重量級魚雷や長射程空対地巡航ミサイル、長距離対艦ミサイル、対艦型トマホーク巡航ミサイル、精密打撃ミサイル、迎撃ミサイルSM3および6の迅速な生産を求めた。
さらに、低コストの極超音速兵器や無人機、先進的な機雷の増産も急務だとし、「現在の生産速度は運用上の消費や脅威環境と整合していない」と指摘した。
インド太平洋戦略の全体像については、「中国が軍事的侵略によって目的を達成するのを阻止することが抑止であり、抑止こそ最重要任務だ」と改めて強調した。
必要な戦力について問われると、「揚陸艦が足りない。駆逐艦も不足している。攻撃型潜水艦は明らかに足りず、現状は望ましい方向に向かっていない」と述べた。
加えて、戦闘補給艦や、中型の無人水上艦といった打撃・監視・対潜任務を担う戦力の増強も必要だとした。
さらに、トランプ政権がエヌビディア製H200半導体の対中輸出規制を緩和したことについても懸念を表明した。これらは人工知能(AI)を通じて中国の兵器能力向上に利用される可能性があると指摘されている。
中国軍は米国の軍用AIの進展を短期間で模倣し、「獲得したあらゆる知的財産を活用している。中国がAIでより優れた司令機能を持つようになることを助長するいかなる措置にも強い懸念を抱く」と語った。
一方、同席した在韓米軍のザビエル・ブランソン司令官(陸軍大将)は、高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)が韓国から中東に移転された事実はないと証言した。
ワシントン・ポスト紙は3月、THAADの一部が中東に送られたと報じていた。
THAADは北朝鮮から発射される中・短距離ミサイルを迎撃する能力を持つ。
この報道についてブランソン氏は「THAADは移動していない。引き続き朝鮮半島に配備されている」と述べた。
また、「現在は弾薬を前方に移動させており、即応態勢にある」と説明した。
陸軍は昨年6月のイラン核施設攻撃に先立ち、韓国からレーダーを中東に移動させていた。
「一部はまだ戻っていないが、THAAD本体は半島に残っている」とし、今後も維持される見通しを示した。
さらに、THAADの一部装備を韓国内で移動させたことが誤報の原因になったと説明した。
「作戦上の必要から配置転換した結果、情報空間で混乱が生じた」と述べ、在韓米軍の主要拠点の一つである烏山空軍基地への展開準備の一環だったと明らかにした。